その4 納豆戦士、その名はキジョ―・ユタロウ!!
納豆狂戦士となったキジョ―には師匠であるしのぶでさえ手を焼いている。
「まずピーナツバターに、(ぐにぐにぐに)、ブルーベリージャム、(ぐにぐにぐに)、チョコは当然としてそこにハチミツを…」
キジョ―は上機嫌で甘味を混ぜた納豆をトーストの上に乗せていた。そして満面の笑みでかぶりつく。
「納豆ぷらす甘味ってアンコとかがそれだから意外に抵抗ないっすね」
しのぶは自分の教えの果てにキジョ―がこうなってしまった事を自覚しているので何も言えない。
キジョ―は極甘スイーツ納豆トーストを食べてから修行場に向った。
「俺はどこをどう間違えたんだ…」
しのぶは四つん這いになって呻く。
その日の昼、自然を相手に納豆修行を終えたしのぶとキジョ―の前に麓の村の村長が現れた。
キジョ―も後で知った話だが、しのぶは昔”納豆勇者”として世界を救ったらしい。
「マスター、今日の昼ごはんは何すか?」
じゅーじゅーじゅー。しのぶはお好み焼きをひっくり返す。
お好み焼きからは香ばしいかつお節と納豆の香りがした。
「今日は納豆お好み焼き焼き丼だ」
「うっひょー!マジすか!?マヨかけてもいいですよね」
ふう…。しのぶは苦笑しながらどんぶりの上にお好み焼きを乗せる。
そしてその上に青のりと特製ふりかけをかけた。
「邪魔をするぞ、しのぶ」
麓の村の村長が突然、扉を開けて入って来る。
村長は納豆の匂いを嗅いだ途端に嫌な顔つきになった。
「また納豆か、しのぶよ。お前の連れてきた弟子にしてもそうだが、お前らはつくづく納豆に憑りつかれておるな…」
村長は鼻をつまみながら家の中央にある囲炉裏の前に座る。
そして鍋の中の納豆の味噌汁が入った鍋を見てさらに嫌そうな顔になっていた。
「おいおい、爺さん。そいつは人格攻撃ってヤツだぜ?俺たちは納豆に選ばれた聖戦士なんだ。納豆や俺たちのポリシーを否定するなら帰ってくれよ!」
この数週間で俺(キジョ―)のメンタルは納豆化していた。
並大抵の脅しにはかからない。
「黙れ、小僧。それよりしのぶよ、街に魔族が現われて大変な事になっているのじゃ…」
村長は村から連れてきた体格の良い男たちに気を使いながら話をしている。
俺もそうだったんだが街の連中は定期的に街にとって不要な人間を選別しては追放しているのだ。
麓の村の住人たちも例外無く追放組という事になる。村長の連れは追放組の第二世代というヤツで「今さら街がどうなろうと知った事か」とツンケンな態度を取っていた。
俺も正直、デズモンドや冒険者ギルドの連中がどうなろうと知った事ではない。
だがマスターは険しい顔つきをしている。
さんざん悩んだ末に何かを決意した様子だった。
「わかった。俺も街に行かないと便秘に効く薬が手に入らないからな。街の様子を見て来よう。行くぞ、キジョ―。お前の修行の成果を見せてもらう」
師匠はでかいおならをしながら立ち上がった。
俺は配置的に匂いが届かない場所に座っていたが、村長たちは直撃を受けている。
「ぐお…ッ!!」
「爺ちゃん、しっかりしろ!」
村長が倒れた。
まあ、あのおならでモンスター倒すからなうちの師匠は…。俺と師匠は三か月ぶりに街に向った。
街は酷い事になっていた。
建物は巨大な魔物によって破壊。住人たちは巨大な防壁のせいで逃げ出せないでいる。
列を作っているところに巨大な魔物、上半身が人間型で下半身が蜘蛛というスパイダージャイアントがやってきて殺戮の限りを尽くしていた。
今も化け物どもが口から吐いた糸で大勢の人々が掴まっている。




