その3 納豆人間、大覚醒
「じゃあ一口…」
僕は顔を赤らめながらキムチ納豆を食べることにした。
ぱくっ!とりあえず豆を一粒、口に入れてみる。
「!!??」
匂いが気にならない?それにキムチの辛さが良い感じでマイルドになっていて…美味しい!
それではもう一口…。
今度はみじん切りにした白菜漬けの部分。キムチだけなら辛すぎて食べられないが、納豆入りなら行けるかも!
「…ふうん」
僕は狐に化かされたような気分でキムチ納豆の虜になっていた。
「…ごちそうさま。なんか思ってたのとは違くて、美味しかったです」
「フン、当然だ。世界広しといえど納豆程美味しい食べ物は無いだろう」
「でもこんな事でデズモンドに勝とうなんて甘すぎやしませんかね?」
ふじわらしのぶさんはトーストにした角食パンの上にまた納豆を乗せている。
そしてケチャップ、薄切りにした玉ねぎ、ピーマン、ピザ用チーズを乗せてホットサンドメーカーに入れた。
数分後、納豆入りパニーニが完成。
「お前は自力で己の壁を越えたのだ。とりあえず食ってみろ」
「いただきます…」
僕は空腹という理由もあったのだが、それ以上に納豆という食べ物に惹かれてかぶりつく。
うん。当然だけど納豆の匂いがぷんぷんする。でも入っていないパニーニに比べてボリュームが、いやそれ以前に食材同士のつながりが凄い。
ぐにゃああ。
食べた時に糸が伸びてるけどチーズだから仕方ないよね?
僕はあっという間に納豆パニーニを平らげてしまった。
「隠し味にはアンチョビーを使った。美味いだろう?」
「いいんじゃないですか。あくまで個人の感想ですが」
僕とふじわらしのぶさんの間に納豆の糸のような絆が出来ていたような気がする。
「キジョ―よ、もうわかったと思うが納豆が最強だ。お前がデスピサロに勝つ為には納豆を食べて強くなるしかない」
ふじわらしのぶさんは僕に向って手を伸ばす。
僕は迷わずふじわらしのぶさんの手を取った。
「わかりました。納豆の美味しさはもう少し食べないとわからないけど、これからは貴方の指導に従いますよ。納豆マスター」
こうして僕はふじわらしのぶさんに弟子入りすることになった。
その後、僕はふじわらしのぶさんと一緒に荒野のさらに奥にあるジャングルで納豆マスターとしての修行をする事になった。
待ってろ、デズモンド。「お前の彼女、性格悪いからちょっと無理!」って絶対に言ってやるからな!
かくして僕は三か月間、ふじわらしのぶさんの下で納豆をひたすら混ぜるトレーニングを続けた。
「もっとだ!キジョ―、もっと箸を激しく動かすんだ!」
「イエッサー!」
来る日も来る日も、納豆を混ぜ混ぜして、カラシ、醤油を垂らす。
僕の過酷な修行は続いた。
「キジョ―、納豆を召喚しろ。今のお前なら出来る…ッ!」
その日、修行の第一段階の仕上げとして僕は納豆のどこでも召喚の術を生まれて初めて使う事になった。
「行くぜ!虫粒の…ッッ!!炭火焼納豆ッッ!!」
僕は天に両手をかざし、今一番食べたい納豆の名を呼ぶ!
ドドドドドドッ!
空間が割れて黄金の光が差し込んだかと思うと「藁包みの高級納豆(大粒)」が出現した。
「げえっ!俺とした事が封開けるだけで頭痛起こしそうなお土産納豆を召喚しちまった!」
「だから最初は”おかめ納豆”にしておけと言ったんだ。リーズナブルじゃない納豆など納豆ではないのだ」
そう言ってマスターは俺の召喚した納豆を冷蔵庫に入れている。
俺とマスターはおかめ納豆を食べることにした。
「ふんふんふーん♪」
俺は鼻歌混じりにパックの蓋を開ける。
マスターは納豆に付属のタレ、花かつおと一味唐辛子をかけて食べていた。
「マスター。そんなセレクトじゃ納豆が可愛そうですよ。マヨでもどうですか?」
しのぶはバックステップをして弟子のマヨ攻撃を回避する。
「貴様、俺の納豆に何をかけるつもりだ」
「何ってマヨっすよ。みんな大好きマヨネーズ。納豆っていったらマヨっしょ?」
キジョ―はすっかり邪道食いに染まっていた。




