その1 BOY MEET 納豆
パーティーを追放された。
理由は「俺の彼女に手を出したからだ」とリーダーの勇者デズモンドに言われた。
僕の名前はキジョ―、低レベルの戦士。デズモンドと同じ転生者だが、力の差は天と地ほどもある。
前世の”ブラック企業の社畜で過労死した”という記憶だけは残っている。現世ではモブ脱却くらい出来れば…と思っていた矢先にこれである。トホホホ。
僕は全装備を没収された挙句、街の外に出された。行く宛ても無いままに荒野を彷徨う僕。
スライムくらいなら素手でも倒せそうだが、人食いアリのような巨大モンスターと遭遇すれば餌になってしまうだろう。
ギチギチギチ、怪しい音が。
ポタ…。ポタ…。ポタ…。水滴の音?
…じゅううううう。まるで示し合わせたかのような蟻酸が土を溶かす音が聞こえた。
僕はゆっくりと振り返る。そこには”初心者殺し”の異名を持つ人食いアリが立っていた。
「うわああああ!お助けえええええ!」
僕は尻尾を巻いて逃げ出す。いや尻尾は生えてないけど。
しかし人食いアリはスピードもかなりのものですぐに先回りされてしまった。
「誰か助けてえええええ!」
僕はありったけの力を込めて助けを求める。
だけど誰も来ない。だよね?それが現実ってモンさ。
「お前の小さな物差しで世の中を計るな」
僕の目の前に白いブリーフ一丁の汚いデブが立っていた。
手には山盛りのご飯が入ったどんぶりを乗せている。
「納豆!!」
男がそう言うと天から雷光と共に”ねばねば~”っと納豆が落ちてきた。男は白飯の上に納豆をONする。
「ネギが欲しいところだが致し方あるまい。小僧、よく見ておけ。納豆を食えば…無敵だ!」
男は箸を構え、全力で納豆ご飯を駆け込む。
ががががががっ!
「うわあああ!汚えええ!」
僕は納豆が嫌いなタイプだが、今のコレを見てもっと嫌いになってしまった。
「キシャアアアア!!」
アリさんもご立腹のようで声をあげて威嚇している。
がつがつがつがつっ。その間におじさんは納豆を完食。ドンブリと箸についたネバネバをしっかり落としてからパンツの中にどんぶりをしまった。
いや汚いよ!!
「これが納豆の力だ。納豆極楽昇天拳、かああああッ!!」
ドガッ!
おじさんはかなり低い位置に構えてから左アッパーを打つ。
アリの顎に拳が入った直後、大型トラックほどの巨体が舞い上がり空中で爆発した。
僕の理性は目の前で起こった出来事を受け入れられず言葉を紡ぐ事さえ出来ない。
一方、突然現れたおじさんは僕の肩を軽く叩く。
「これが納豆の力だ、坊主。納豆を食えばみんなこれくらい当然だ」
汚いおじさんは笑う。
「嘘つけえええええええ!!」
僕は大声で正論を訴えた。




