幸せだったんだ。
また会えるよね?
赤く染まる世界
燃えている、人が、家が、大地が。
世界が燃えている。
幾多もの怨嗟の声が聞こえる、その度にこの体は少しずつ朽ちていく。
燃え盛る都市を軋む体で歩き続ける、行かなくちゃ。
「もう、いいの」
喉が焼きつき息がままならない、行かなくちゃ。
「もう、大丈夫
頑張らなくていいの」
自分の歩いた後に真っ赤な絨毯が広がる、行かなくちゃ。
「私は幸せでした、だからもういいよ」
抱えた鉄の塊がずっしりと重い、それでも今は崩れそうになる体を繋ぎ止めてくれる。
「なんで?どうして止まってくれないの?!」
激しい激痛が脳を揺らした、紅く染まる視界に飛んでゆく自分の腕が映る、痛い。
「いや!違うのなんでよ!!」
泣きそうな声が聞こえる方向に進み続ける、視界はもう何も映さない。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ」
世界が崩れていく、女の子の涙が大地に落ちるたびに世界はその形を保てなくなる。
「な、、く、な、、、、、、、よ。」
「もう、もう頑張らないでよ!もう苦しまなくていいの!」
分かってる、もう何をしても、どんなに後悔しても。
全ては終わった後。
それでもきっとこの心は進むのをやめない。
「もう全部終わったの!だから……せめて最後くらい苦しまないでよ!!!」
そっか…ずっと間違えてた、あの時もきっと今も。
それでもきっと、同じ選択をしたと思う。
「………っ」
押し殺された嗚咽が近くから聞こえる。
全身から生物的本能が警告を鳴らし続けている。
「あー!!っ!」
しゃくり上げ始めたその声の方へ笑いかける、顔の大半が焼け爛れてきっと醜い顔をしているだろう。
もう体の感覚はない、音も聞こえない。
「 」
「 」
世界が閉じていく、インクが染みていくように
闇に覆われていく緋かった世界は静かに
死んだ
これはそんな何処にでも有るありふれた話