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少女小説家編-3

 文花は、向井探偵事務所の自分のディスクのパソコンで伊夜を調べていた。


 向井はターゲットの尾行に出かけてしまい、実際自分の仕事も無かったので調べることにした。


 佐倉伊夜は、お嬢様だった。


 大手車メーカーの上役の娘で、中学からずっと私立のお嬢様学校。その上、そのお嬢様学校の事務職にコネで就職後、数年で元ヤクザの男と結婚。主婦の傍ら、パワーストーンと占いビジネスの起業で成功。本も出版し、セミナーも毎回大人気。オシャレな生活が垣間見れるSNSのフォロワーも多い。30歳だが、子供は居ないようだった。


 巻毛で化粧バッチリしているお陰で、30歳には見えない。下手すると10代にも見えるぐらい若々しい女だった。伊夜のブログを見ると、若返りの化粧品もよく宣伝されていた。確かに説得力はある。


「妙な女ね…」


 文花は調べながら呟いた。


 キラキラとしたお嬢様ではあるのは、一目瞭然だが、夫は元ヤクザ?


 その経歴だけ、白い布に溢れたインクの染みのようの浮いている。ここは元モデルや芸能人、青年実業家あたりが配偶者に相応しいのではないか?


 元ヤクザの名前は、佐倉直志というがセミナーや本の出版で稼いでいるようだった。職種は伊夜と似たようなものだが違和感は拭えない。


 ただ、この一点のお陰で履いて捨てるほどいるキラキラ女性起業家の中で印象に残るのは確かだった。文花も伊夜について記憶に刻まれる。


 戦略的にやっているのなら、かなりイメージ作りは成功していると言っていいだろう。頭は良いのかもしれない。以前事件に巻き込まれた際の被害者でもある婚活カウンセラーの浅山ミイのように炎上ビジネスもやっていないようだし、この手の起業家女子の割には堅実さが垣間見れる。


『ヤクザな夫の愛し方』を読む限り、夫婦生活だけでもかなりネタになっているようだったし、親しみやすさも与えている。憧れと共感の匙加減が上手く、背後に誰かプロデューサーのような存在がいてもおかしくない。


 ただもう一つの違和感として、女友達である朝比奈佳世の話題が全く伊夜のSNSで出てきていない点だった。


 牧野の話ではベッタリとした関係だったみたいなのに、SNSではそんな存在が無かったかのように書かれている。ブログでは、「女友達はいません(笑)」とまで書かれていた。


 文花はさらに検索をし続けて、伊夜の卒業したお嬢様学園・聖ヒソプ学園の裏掲示板にたどり着いた。


 裏掲示板を見ると、聖ヒソプ学園は、カトリックの校則が厳しいお嬢様学校であるにも関わらず、いじめや恋愛問題、万引きなどの問題があるようだった。まあ、伊夜が卒業してだいぶ立っているのでそれは関係ないだろう。


 OGが集まるスレッドに行き、伊夜の話題がないか目を皿のようにして探る。


 あまり伊夜のことは話題になっていないが、在校当時の噂が書かれていた。


 伊夜は、当時から派手で美人なお嬢様。誰に対しても優しく接していて、憧れのお嬢様としてファンクラブもあるほどだった。伊夜様と呼ばれ、髪型や服装、言葉遣いがよく真似されていたそうだ。


『でもAさんの真似っこっぷりは引いたよね』

『Aさんは伊夜様に似せて整形までしてたもんね〜』

『よっぽど伊夜様が好きだったんでしょ。ストーカーだよね、あれ。でもそれを許してる伊夜様、優しすぎる。王子様やん』


 Aさんとは、もしかして朝比奈佳世の事だろうか?


 だとしたら牧野の話と辻褄は合う。


 文花の顔は我知らず青くなってきた。


 伊夜に似せるほど整形する女だ。伊夜の旦那に似ている文花の夫。それを欲しがらないとは言い切れない。


 嫌な予感で手のひらが汗ばむ。


 文花は朝比奈のSNSに急いで向かった。

 少女小説家らしく、キラキラとした花やお菓子の写真で埋め尽くされた投稿ばかりだったが、最近の投稿は文花の肝を冷やすのに十分だった。


『愛人探偵』の写真とともに、こんなコメント添えられていた。


『田辺先生の作品好き、好き! 私も愛人探偵のヒロインになりたいと思いました♪ 先生と結婚したいです☆』


 何という事だ!


 まだ愛人ではないが、この女を調べなくては。

 文花は目を閉じて誓った。

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