お嬢様学園編-5
「あなた、万引きは初めてでないわね。手慣れてるもの」
「吹石さん、万引きは犯罪よ。わかっているの?」」
無表情に文花や黒づくめの寮長である島崎に問い詰められても、吹石は黙りこくっていた。
あのギャルは吹石という名前だった。二年C組の生徒だが、成績は最下位のギャルで、学園もたびたび遅刻と無断欠席を繰り返すような女生徒だという。
文花は島崎に頼み、とりあえずこの事は教師達には言わずに、事情を聞く事にした。何かこの事も事件に関係あるかもしれないと言うと、島崎は了承した。島崎もよっぽど朝比奈が嫌いらしく、かなり文花に協力的だった。
「2年C組の担任って誰?」
文花が聞くと、吹石は表情が少しやわらいだ。
「安優香先生だよ。安優香先生に言えばいいよ。先生はきっと守ってくれるよ。こんなおばさんの証言は誰が聞くかな。あはは」
吹石は挑発する様にケラケラと手を叩いて笑った。
文花と島崎は顔を見合わせる。
安優香が万引きした生徒を守るってどういう事?
文花の頭の中に一つの仮説が浮かんだ。
「もしかして、安優香先生も万引きやってる?」
この仮説を口にすると、吹石は顔を青くして押し黙った。島崎はなるほどという顔で納得している。この説だと辻褄が合う。
おそらく安優香は聖ヒソプ学園に通っている時から万引きの常習犯。それを見つけた朝比奈が脅して、カンニングや作文コンクールの代筆を要求。
今の安優香は万引きした生徒とも秘密をこうやって共有し、生徒達を手懐けている。そう思うと辻褄は合う。おそらく安優香自身も生徒を脅していた可能性もある。脅し方は朝比奈を参考にしたのだろう。
この説だと朝比奈と安優香が突然仲良くなった理由がわかる。肝心の伊夜はどんな理由で朝比奈に脅されていたのかはわからないが、だいたい想像はつく。ヤクザと結婚したのも朝比奈の脅しと関係あるかもしれない。朝比奈の脅しからヤクザが守ってくれて伊夜が惚れた可能性も大いにある。
「本当の事言ってくれない?」
「でも…」
吹石は口籠もり、少し泣きそうな顔をしていた。
「吹石さん、本当に安優香先生も万引き犯だったら大変な事ですよ。さあ、吐きなさい!」
さすが寮長先生だ。
かなりの迫力で吹石を問い詰めると、あっさりと吐いた。
文花に憶測通りだった。
吹石の万引きを安優香が見つけたが、彼女は黙っていた。あろう事か一緒になって化粧品やお菓子を大量に万引きした事もあると吐いた。
「やっぱりねぇ」
文花は新しく知った情報を自分のノートに書き込んだ。これであのピクピク怯えていた安優香が何故かヤンキー達にも慕われている理由に合点がいった。
「安優香先生がもう万引きのプロですよ。あれは絶対にバレない。高校の時からやってたみたいで職人技です! すんげぇプロです!」
ちょっと尊敬したように吹石は安優香に事を話していた。
「冗談じゃありませんよ、全く。この事は全部学年主任に報告しますからね。安優香先生の事も」
島崎は疲れ切った顔でつぶやいた。




