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お嬢様学園編-4

 食堂から寮長室に帰った文花は、再び島崎と二人で資料を読み漁る。


「ところで島崎さん、渡部安優香はどんな評判?私、さっき食堂で安優香を見たんだけど、朝比奈とはタイプが違うわよね」

「そうねぇ。安優香先生は、意外と生徒にも好かれてるの。なぜか手につけられなかったヤンキーも、彼女の言う事は聞いてたわね」


 意外だ。


 あのビクビクした見た目では、てっきり生徒に舐められていると思い込んでいた。しかもヤンキーを手懐けているとは、意外と肝が座っているのだろうか。ただ、文花の印象では、そう言った強そうな女には見えなかった。


「他は? 安優香で変わった様子はない?」

「そういえば、安優香先生は毎日マリア像に拝んでるわね。それもかなり熱心に。何か悩みでもあるって聞いたら、マリア様が守ってくれてるとか言ってた。どういう事かしらね?」


 その後、二人で資料を読み続けたが、朝比奈が脅して居た事の手がかりなどは掴めなかった。


 結局、今日は手がかりが無いということで、文花は帰宅する事になった。


 学園からでて、駅の近くの商店街に向かった。学園の生徒達が、パン屋お菓子を買っている姿見が目についた。


 浅山ミイの完コピメイクをして夫をひどく怖がらせてしまったし、何か夫にお詫びの手土産でも持って帰ろうと思った。


 商店街のパティスリーに入る。この商店街では比較的オシャレな店構えで、学園の女生徒達だけでなく主婦らしき女性達も入店して賑わっていた。


 ショーケースにある生菓子は、さすがに夫の身体の事を思うと買えない。色とりどりのフルーツタルトや重厚なチョコレートケーキには惹かれるが、棚の方にある小さな焼き菓子を選ぼうと思った。


 焼き菓子のコーナーは、主婦達や学園の生徒たちでいっぱいだ。マドレーヌかクッキーのようなものを探しているが、なかなか人が多く選びにくい。


 ふと、一人の学園の生徒が目についた。派手な茶髪でギャルっぽい女生徒だ。眉毛も糸のように細く、アイシャドウで瞼がテカテカ光っている。


 不審な動きをしている。焼き菓子を選んでいるように見えるが、手の動きがおかしい。客が近づくと手をさっと引っ込めていた。


 文花はコンビニでバイトをした時、万引き犯をよく捕まえていたが、その動きとよく似ている。


 店員は接客に忙しく気づいていないようだが、文花は鋭い視線でギャル風の女生徒の動きを見守った。


「あ!」


 一瞬の出来事だった。


 ギャルはさっとマドレーヌを掴むと、カバンに滑り込むように入れてしまった。


 店員も他の客は気づいていない。


 しかし、文花の小さな声に気づいたギャルは、一目散に扉の方に行き逃げていく。


「ちょっと、待ちなさい!」


 文花はギャルに背中を追った。


 意外にも逃げ足も早い。若いだけあって俊足だ。しかし負けるわけにはいかない。コンビニで働いていた時はこんな風に走って万引き犯を捕まえていたので、たぶんパティスリーの店員よりは走り慣れている。ここで逃すわけにはいかない。


 歯を食いしばって力をかけて走り続けた。今日も浅山ミイ風のパンツスーツを着ていたが、スカートでなくてよかったと思う。ギャルの方は、ワンピースでそこまで早く走れないようだ。


 ぜいぜいと息切れて座り込んでいた。


 いつのまにか学園の方に戻ったようだ。文花も走って息が切れたが、好都合だ。この前店に突き出すか学校に突き出す事も考えたが、何かピンときた。


 朝比奈は、万引きを脅しのネタに使ってた可能性はないだろうか?そういえばヒソプ学園の裏掲示板では、万引き犯達に交流の場所があったではないか。可能性としては十分にありうる。


 文花はギャルの腕を無理矢理掴んだ。


「何すんだよ!」

「ちょっと、あなた。少し事情を聞きたいんだけど良いかしらね?」


 文花はニヤリと笑い、ギャルに腕をしっかりと掴んで島崎のいる寮長室に連れていった。

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