お嬢様学園編-3
資料を読みふけている内にすっかりと昼になってしまい、文花は学園内にあり食堂へ向かった。島崎は寮長室で菓子パンやジュースで昼を済ませるようだが、文花は栄養面が気になり食堂へ向かった。
さすがに学校の食堂だけあって栄養面は問題ないようだ。野菜多いのちゃんぽんを注文し、席についた。テスト期間のせいか、あまり生徒は食堂にいなかった。職員らしき中年の男女が食事しているのが目立つ。
「え、あっ!」
ちゃんぽんを啜っていると、一人の女が文花を見て顔面蒼白になっていた。
「どちら様?」
知っているが、一応聞いた。渡部安優香だった。あの卒業アルバムの写真とあまり変わっていない。メガネをかけ、黒髪を気っっちり分けて束ねている。スーツを着ていたが、あまり大人びて見えず就活中の大学生にようでもある。
「なんで、ここに居るんですか?田辺先生の奥さんですよね」
「とりあえず座ったら? カレー、冷めちゃうわよ」
安優香は仕方がないように文花の隣の席に座った。
安優香は文花の顔を知っているようだ。朝比奈か、キリコから話が伝わっているのかも知れない。朝比奈は文花のメイクを完コピしていたし、どこかで盗撮でもして顔写真を撮っていたのだろう。
「カレー、食べないの?」
安優香は顔を暗くし、注文したカレーに口をつけていなかった。少し怯えたような目を文花に見せている。この女は小柄なので、余計にびくびくしているのが伝わってくる。ぽっちゃりと太々しい体型の朝比奈とは正反対である。
「だったらこれ食べる? シュトーレンなんだけど」
文花はカバンの中からラッピングしたシュトーレンを取り出して安優香にあげた。安優香は小さな声で礼を言い、一応シュトーレンを受け取った。
地味だが大人しい雰囲気の女だ。この学校で女教師をしているのも頷ける。
ただ、あの気持ちの悪い朝比奈とは雰囲気がまるで違う。熊に見つかったリスみたいな弱々しい女だ。自己中心的で自分の事しか考えて居ないような朝比奈とは気が合わないと思う。
それに優等生と成績に1や2が並ぶ劣等生と気が合うとも思えない。やっぱりおかしい。自分の憶測のほうが合っているような気がしてしまう。
「国語の先生なんですってね。作文を書くの好きなの?」
直接的に「朝比奈に脅された?」と聞いても答えないだろう。作文の話題から聞いてみる事にした。
「いえ、まあ。昔からよく作文コンクールには入ってましたけど」
「お友達に朝比奈さんは少女小説家なのねぇ。何かアドバイスしてあげたらいいんじゃない。盗作スレスレの二番煎じですよって」
「そんな…。あなた、なんですか?」
弱々しい表情だったが、反論してきた。怒っているようだ。ここで怒る意味がわからない。
「もしかしてあなた、朝比奈さんのゴーストライターやってたりして」
何気ない憶測だった。朝比奈が今も安優香を脅していたら、あり得ない事ではない。いくら少女小説といえどもあんな頭が悪そうな朝比奈に書けるか疑問だったし、脅して安優香に書かせていたとしても不思議ではない。既存作品と盗作スレスレなのは、安優香なりの密かな抗議なのかもしれないとも思った。
「何を根拠に…。私と朝比奈さんは友達なんですよ。そんな事しません」
「ねえ、本当に友達?」
やっぱりおかしい。そんな事をわざわざ強調しているのも、何か隠しているように見えた。
「キリコや伊夜とも本当に友達?」
「いえ、あの子達は…」
安優香は何か言いかけたが、ハッとして口をつぐんだ。
「キリコの所に行ったわ。あの人、メイクだけは上手いわね。私も死んだ夫の愛人と同じメイクをしてもらったの。ふふ」
ちょっと不気味な薄ら笑いを浮かべると、安優香はさらに顔を曇らせていく。
「悪趣味ですよ…」
そう吐き捨てて、手付かずのカレーが乗ったトレーを食堂に返却口に返しさっさとどこかへ行ってしまった。ちゃっかりシュトーレンだけはポケットに入れたようだ。
文花は安優香何か事件と関わっているだろうと思った。
朝比奈達には硬いアリバイもある。しかし、どう考えても朝比奈が犯人だと思う。
その為には、朝比奈が脅していた証拠を見つけなければ。でもどうやって?




