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メンヘラ地雷女編-3

 常盤達と別れ、エレベーターで一階に降りると滝沢亜弓に会った。


 滝沢は夫の不倫相手に編集者だったが、なぜか突然不倫の謝罪もされた。意外と真摯に謝っていたので、文花も過去のことだと水に流し、滝沢が巻き込まれた殺人事件も解決するようにアドバイスもした。その事件をモデルに夫は新しくミステリを描く予定になっていた。


「こんにちは、文花さん」

「こんにちは」


 滝沢は不倫していた時と違って、表情もさっぱりとそていた。ひょんなことから亜傘栗子という作家とシェアハウスもしているようで、クリスマスはシェアハウスの住人と一緒にパーティーをすると笑っていた。その表情は全く邪気がなく、再び不倫をする恐れが無いだろうと文花は安心する。


「ところで、文花さんはクリスマスはどうするんですか? もし暇だったらうちのシェアハウス来ませんか? 栗子先生が文花さんに会いたいって言ってるんですよね」

「そうなの。それは嬉しいけど、夫がまた入院してしまってね」


 文花と滝沢は立ち話もなんなので、一階にあるロビーに座って話していた。こうして話していると夫の不倫相手と話している気分が嘘みたいだ。坂井智香の事件のせいで、夫の不倫相手であった杏子や七絵とも少しだけ親しくなってしまったが。


「田辺先生は大丈夫ですか。ああ、別に不倫したいとかではなく、人として心配しているんですが」

「病気は大した事がないんだけどね。何か嫌な予感がするのよ」

「嫌な予感?」

「女のカンね。夫が再び不倫をしそうな悪寒…」


 今のところ夫が不倫する様子はなかったが、嫌な予感があった。もちろん確かな証拠はなかったが、クリスマスが近づいて来て昔の嫌な記憶が蘇ってきているのかもしれない。


 新婚時代に祝ったクリスマスでは、夫は浮気をしないと言っていた。それなのに、あっさりと裏切られた。こんな事は一度ではない。ミイの事件が解決した後も再び坂井智香と不倫をし始めてしまった。


 何度も裏切られているので、また不倫をするのではないか常に疑っていた。本当は信頼すべき事だろうが、51人も愛人がいた事実が文花の夫への信頼を挫いてしまっている。


 滝沢は顔を曇らせて文花に話を聞いていた。文花を不倫で苦しめた事は事実であったので、今更何も言えなかった。


「まあ、さすがに田辺先生も殺人事件に巻き込まれて懲りたんじゃ無いですかね」


 精一杯励ますように滝沢に言われたが、文花の気持ちは全く晴れなかった。


「そういえば、文花さんはシュトーレンはもう作らないんですか?」


 そういえば以前あった時、滝沢にシュトーレンを作ってあげた事を思い出す。あの時は夫に食べさせる為の試作品をいくつか作っていて、味が良いかどうか滝沢の反応で確かめていたのだった。


「あのシュトーレン美味しかった?」

「ええ。粉砂糖がスッと溶けて。ナッツがぎっしりでおいしかったですよ。田辺先生も食べたら喜ぶんじゃないですか?」

「そうなんだけどねぇ…」


 文花はため息をつく。


 夫の主治医からは血糖値が高いとお菓子や白米や小麦粉料理、揚げ物などを控える様に言われていた。クリスマスだからとハメを外すなとも釘を刺されてもいた。そういった面でも今年も夫と一緒にクリスマスを祝えそうにはない様子を見せていた。


「だったら私にシュトーレン作ってくださいよ〜」

「あなた結構図々しいわね。そうね。どうせ今年も夫とクリスマスを過ごせそうにないし、あなたのところにお邪魔しようかしら」

「大歓迎ですよ。うちのシェアハウスのみんなも喜ぶと思いますよ」


 滝沢が少しワクワクしたような笑顔くぉ見せ、文花も少し笑顔を見せた。いつもの冷たい薄ら笑いでは無く、寂しげな笑顔だった。


 滝沢はその文花の表情に気づいて、心に重石が乗ったような気分になった。

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