表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/50

可哀想な女編-6

「は?」

「あの事件、解決したって報道された作家に妻A子さんって私のことね」

「ああ、あの…」


 キリコは浅山ミイの事も思い出したようだ。ますます文花に対して嫌そうな顔を隠さない。


「私の夫、浅山ミイのような顔が好みなのよねぇ」

「それで真似るんですか? よく死んだ人間のメイクの真似したいなんて思いますね」


 キリコ呆れながらも早速メイクをし始めた。まず化粧水や乳液をぬり、肌を整えてから下地を塗っていく。


「私、浅山ミイのメイクの完コピやってみたいのよね」

「ミイさんはこのメーカーのファンデーション使ってましたよ」


 ミイと同じファンデーションをキリコに丁寧に塗られていく。下地だけでもけっこう手間がかかっている。ミイがメイクに時間と手間をかけていた事がわかる。あの極悪な本性を隠せて一見知的風美人に見せられるのだから安いものだろうと思った。実際夫だけでなく、常盤のミイに良い印象を持っていた。


 キリコにメイクをほどこされ、鏡の中の文花はどんどん浅山ミイに近づいて行った。眉毛をそっくりにするだけでも、かなり似てしまって正直怖くなるほどだった。


「あら、嫌だ。死んだ人間が蘇ったみたい」

「だから、死んだ人間のメイクなんて悪趣味だって言ったんですよ」


 最後にキリコが白粉をたたき、浅山ミイの完コピメイクが完成した。確かに顔の作りが違うので双子レベルまでは似ていないが、雰囲気はあっさりメイクで真似できてしまった。キリコにヘアセットもしてもらうとますます似てしまって不気味だ。


 隣の写真スタジオでキリコに写真も撮ってもらった。キリコはカメラも扱えるようだ。すぐにパソコンで写真のデータを見てみた。写真で見ても浅山ミイによく似ていた。


「これで私の夫に喜ばれるかしらね?」

「どうでしょうね。猿真似にしか見えませんけど」


 キリコは本当に腹たっているようだった。文花はさらに質問を重ねた。


「猿真似ばっかりしている朝比奈さんもさぞ憎たらしいでしょうね?」

「そうですよ。全くあの女は猿真似するだけでなく…」


 何か言いかけてキリコが口をつぐんだ。思った事が顔に出やすいタイプなのかもしれない。明らかにしまった!という表情を隠せていないい。


「あなたの学校にあるマリア像拝むと願いが叶うって本当?」

「さあ。噂では聞いた事ありますけど、そんな事ないでしょ。非科学的ですよ。私はあんなものは信じませんね。さあ、もうメイクも写真も終わったし、帰ってくれません?」


 文花はキリコに無理矢理追い出されるようにメイクスタジオを出た。


 すぐわかった事をメモする。


 ・朝比奈とキリコは不仲。友達ではなかったようだ。

 ・なぜ仲が良いフリをしてた?キリコは何か知っているようだが口を紡ぐ。


 ここで文花はある憶測が頭に浮かんだ。マリア像が願いを叶えるなどという非科学的な事ではない。


 もしかして脅し?


 朝比奈が伊夜やキリコを脅していたとしたら、友達にフリをする理由もわかる。その可能性は大いに有りそうだ。ちょっと前に向井もそんな事を口にしていたし、そう考えると辻褄が合ってしまう。ただ、何で脅しをしていたかはわからない。それに伊夜が元ヤクザと結婚した事も謎だ。もし朝比奈に脅されていたと仮定すると、ヤクザに何か守って貰ったり取引きしていた?


 その可能性も大いに有り得そうだった。


 しかし、いくら憶測を巡らせても証拠は何一つない。このままでは憶測というより妄想である。何か手がかりを見つけなくては。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ