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殺人事件編-2

「何で藍沢さんが、この事件の担当なのよ…」


 文花はセミナー会場のすぐ下にある別の会議室で、藍沢に事情を聞かれていた。


 今回の事件も藍沢が担当らしく、妙な偶然がちょっと気持ち悪い。


「こっちも別に文花さんの顔なんて見たくないですよ。坂井智香の事件なんて、ハッキリ言ってあんたが種を撒いたようなものだ」


 憮然と藍沢は言い放った。


 坂井智香の事件の全貌が明らかにになると藍沢は、明らかに文花に敵意を現すようになった。あの愛人ノートがなかったら、坂井智香は死ななかっただろうと藍沢は言っていたが、文花は反省するつもりはなかった。人を脅すために愛人ノートを悪用した坂井智香が悪いと思う。まあ、その一件のお陰で愛人調査は控えるよう注意され、文花も渋々守っていた。夫からも愛人調査を控えるよう言われている。


「全く奥さがいるところは事件がつきまとう。本当に呪いの儀式とかやってませんよね?」

「やってませんって。それに事情はさっき話した通りよ。私はセミナー会場にずっといたし、完璧なアリバイがあるわ」


 文花は事情を全て話した。セミナーに参加した理由も渋々告白すると、怒られるというより呆れられた。


「もういい加減旦那さんの周りにいる女を調べるにはやめなさい」

「そうは言ってもねぇ。あの朝比奈って女が挑発してきたんですもの。っていうか朝比奈が犯人ね。間違いないわ」

「その根拠は?」


 藍沢はふふっと鼻で笑っていた。明らかに小馬鹿にしていた。


「うーん、夫にちょっかい出す女なんてろくでもないし」

「単なる私怨だろ」


 藍沢の冷静なツッコミを受けても文花はスルーした。


 あの状況では、元ヤクザの夫・直志が伊夜を刺した犯人だろう。でみ夫によく似た男が絶叫している姿を見てどうしても犯人だとは思えない。もっとも何か関わっている事や前科があるのも事実だが、どうも犯人には思えなかった。むしろあの気持ち悪い女・朝比奈佳世が関わっている気がする。


 根拠はなく、動機も不明だが、既婚者にちょっかいを出す倫理観の無さや盗作ギリギリな事をしていると思うと、犯罪をしていても全くおかしくはない。藍沢の言う通り私怨だ。思い込みでしか無いが、朝比奈が犯人だと思う。


 そこへ藍沢に電話がかかってきた。


 渋い顔をして誰かと話していた。いつもに増して鋭い目で電話に出ていた。


「そうか。伊夜は亡くなったか…。ああ、わかった」


 どうやら伊夜は病院に運ばれたが、亡くなったようだ。夫と合コンをした女ではあるし、怪しい女だが死んだと聞くと良い気分はしない。むしろ、不当に殺されたと思い同情心しか持てなかった。


 藍沢は電話を切った後、奥さんなんかに構っている暇は無いと忙しそうにどこかへ行ってしまった。


 会議室に一人残された文花は、ノートを広げて書き込んだ。


 ・佐倉伊夜が殺された。犯人は絶対朝比奈!犯行の証拠を探さなければ。


 はっきり言って勝手な決めつけだが、文花は強い確信があった。何も根拠は無いが、文花のカンは朝比奈が犯人だと訴えていた。


 それにこの事件を浅山ミイや坂井智香の時と同様に解決したらどうだろう?


 再び話題になって夫の本が売れるかもしれない。


 坂井智香の時は、猫子先生の『愛人呪詛ノート』が一番夫の本の売り上げに貢献したわけだが、夫のミステリを書く上で何かネタになるかもしれない。早速坂井智香の事件をネタに一本書いている。滝沢が巻き込まれた事件もネタにしているようだが、それは夫も文花も直接関わっていないので、所詮又聞きである。


 やっぱり妻の私が事件を追うべき。


 文花はそんな決意を胸に宿した。


 夫が恋愛小説を書くのをやめて、ミステリに専念させる為には何でもやろうではないか。


 文花はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら、事件に巻き込まれた事をかえって幸運だと思い始めていた。

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