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少女小説家編-7

 その後、朝比奈はSNSで匂わせ投稿を嫌がらせの様に続けた。


 もちろん、仕事のSNSアカウントではなく、裏アカだったが。


 なかなか朝比奈の裏アカは探せなかったが、向井とも協力し、1日かけてようやく探し当てた。


 驚いた事に少女小説ファンを装ったアカウントで、坂井智香とも繋がっていた。


 妙な偶然に気分が悪くなるが、朝比奈の投稿内容も酷いものだった。伊夜について崇拝し、伊夜様、伊夜様と呟いている投稿も気持ち悪かったが、中途半端にフェミニズム思想に染まり(これも伊夜の影響だそうだ)、女性の権利がーと口うるさく訴えたち思ったら、ネチネチと人の夫が欲しいと匂わせ投稿が多かった。


 しかもその理由も、伊夜の旦那・直志と夫が似てるからとハッキリと書いてある。どうやら伊夜と完全コピーのような人生を歩みたいようだ。伊夜が本を出せば少女小説作家になる。伊夜がセミナーを開けば、創作講座を開く。そんなノリで伊夜が結婚したから、似たような男と結婚したいのだという。


 完全コピーをしたい割には、伊夜のストイックな体型維持には興味がないようだ。伊夜は運動や美容も頑張っているSNS投稿が多かったが、朝比奈はそういう所は全く真似ていない。結局は自分に甘いようで、楽に真似出来る所ばかりコピーしているようだった。


 文花への挑発めいた投稿も散見された。専業主婦は情け無いだの、稼ぎがないから浮気されるだの、『愛人探偵』に表紙の写真と共に、そんなコメントをつけている。ハッキリ言わず、匂わせる挑発の嫌らしさに文花は気分が悪くなる。まだ頭の悪さを感じられる浅山ミイや坂井智香の投稿が可愛く見えるほどだ。


 また、今の仕事には生かしていないようだが、朝比奈は通関士の資格を持っていると自慢していた。なんでも国家資格があるから、少女小説のキャリアがダメになってもすぐ転職できるとマウントをとっていた。同時に専業主婦の嫌味も忘れない。作家だけあって語彙も豊富なようだ。さまざまな言葉を使いながら文花に匂わせの挑発を繰り返していた。


「うぇ、この朝比奈って女マジで気持ち悪いな」

「そうねぇ。まだ夫と不倫関係になっていないのが、救いだわね」


 一緒に朝比奈の裏アカを探してくれた向井は顔をしかめていた。女の嫌な面を目の当たりしたようで、吐く寸前の様な本気で気持ち悪がっている様な表情だった。文花も気味が悪い女だと思い、裏アカを見るだけでも不快感が増して行く。


「この女ヤバいな。尾行続けた方がいいぞ。それにこんなキモい女だし、何かトラブル抱えてるんじゃないか。その伊夜って女とは、どうなってるんだ?」

「それが意外にも伊夜のSNSでは、朝比奈についてスルーしてる。まあ、賢い判断ね」


 自分が伊夜の立場だとしたら、こんな冷静でいられるだろうか。朝比奈は伊夜を崇拝しての行為だろうが、真似される方は気持ち悪くないのだろうか。自分だったら速攻縁を切ると文花は思う。


「アレだ、朝比奈が伊夜の弱みを握って脅してる可能性もあるんじゃないか?」


 向井は自分の推理を自慢気に述べていた。


「それはどうだろう? でも伊夜は伊夜で謎の女よね。そもそも何で元ヤクザと結婚しているの? そこからしておかしな話よ」

「それは俺も気になったよ。本では共通の知り合いを通して知り合ったってあるけどさぁ。嘘くさいな」


 向井と話していてますます疑問が深まっていく。


「これはやっぱり何かあるぞ」

「何かって?」

「殺人事件とか?」

「よしてよ。もう殺人事件は懲り懲りなんですけど」


 文花は口を尖らせて文句を言った。しかし、嫌な予感は無い事もない。今のところ、夫が不倫している様子は無いが、朝比奈と伊夜の事を考えると心の奥がザワザワと波だった。向井が何かあると言うのもわかる気がした。

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