45 乙女心と暗躍活動
こんな遅くに更新すみません。夜仕様の内容です。少しハイペース投稿だったので、明日はゆっくり休むかもしれません。
兎に角、懸念材料は多かった。
ガゼロの攻略は一歩間違えばフラグが立つし、そのフラグを折るのもリスクがある。ロゼスが言っていた事を考慮すると、先行きが不安。でも、ユラのように、攻略の道が閉ざされたように感じる事にはなって欲しくない。
今の状況は終着点が見えないし、私が望む終幕になる気がしないわ。攻略は穴だらけ。大戦争回避が出来なかったら、打つ手が……。
思案に耽っていると、ロゼスの手が伸びてきた。
「……あの、ロゼス?」
私の太ももをなぞって反応を見てくる。じっと見つめるから私も目が離せない。ロゼスはその手を引っ込める事もしないで理由を説明した。
「2人でこうして身体を密着させている中、リコリスが黙ってしまうとそれは暗黙の了解って事に――――」
「なりません」
笑顔で即答する。
――――私が真剣に悩んでいる時に、ロゼスったら良い度胸だわ。
ロゼスに変なスイッチが入ってしまったのだと思い、どうしたものかと策を巡らす。
そういえば、ロゼスは最近ますます積極的になった。傍にいると精神が安定すると言っていたけれど、逆に安定し過ぎて悪い癖が出ている気もする。体温を求めるように肌を触り、パーソナルスペースなど関係なしに距離を詰めてくる。
不快感を感じさせない“程良い感じ”にそれをするので、余計に困る。だって……。
「ひゃっ」
首筋を吸われて変な声が出る。
――――不意打ち、ううん、隙だらけだったのは私だわ。
「盗み聞ぎしたお仕置きだよ?」
ロゼスは意地悪く言う。そんな事にさえドキドキして顔が火照るように熱くなる私は、抵抗しても説得力はないだろう。今の私の顔は、はしたなく欲情をぶちまけた顔をしているに違いない。
ロゼスは段階をすっ飛ばす事や、自分の欲望をただぶつける事はしなかった。私が以前嫌だと思っていた事を覚えているのだろう。少しずつ近付いてきては私の反応を確かめている。
その気遣いが嬉しいと感じる一方で、本当は、普段は優しいロゼスがたまに見せる意地悪な所がたまらなく好きだったりする。惹かれて、興奮させられている自分がいるのも事実で……。
ゆっくり顔を上げてロゼスを見つめた。ロゼスは高まる感情を必死に抑えているように見える。色欲をそそるようなロゼスの顔は、何とも艶っぽく綺麗だった。
――――触れたい。キスしたい。繋がりたい。全部混ざってしまえばいいのに……。
心臓の鼓動が大きな音を立てて、跳ねるように速くなる。理性は簡単に吹き飛び、何も考えられなくなった。繋いでいた手を解いてロゼスの頬を優しく触ると、愛おしい想いが止めどなく溢れ出てきた。
――――大好き。
「好きだよ……」
それから私たちは貪るように優しい口付けを何度も交わした。キスだけで蕩けて、腰が砕けて感じてしまう。声が口から零れる。そんな私の反応を楽しむようにロゼスはまた口を塞いだ。飽きる程キスをしても、まだ足りないくらいだった。遂には姿勢を維持できなくなり、ロゼスに膝に倒れ込む。
――――なにこれ、すっごく恥ずかしいわ。私ってこんな……。
キスだけで感じてしまった事が、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。私は両手で顔を隠したけれど、ロゼスは仮面を剝ぎ取るように私の手を掴み、顔を覗き込む。ロゼスは意地悪な笑みを浮かべて、私の頭を優しく撫でた。
「やり過ぎたみたいだね、ごめん」
その言葉に反省の意味などない事はすぐに分かる。「今度する時は、その先までする?」と揶揄って、私の耳まで染めたのだから。
キスの余韻が残る中、私が姿勢を正せるようになるまでロゼスはずっと膝枕をしてくれた。漸く起き上がれるようになると、私はロゼスにお礼を伝えた。
「僕がリコリスをそんな風にしたのだから、気にしないで」とロゼスはケロッと答える。それから、ロゼスは「そろそろ行こうかな」と言って立ち上がった。
「おやすみなさい。また明日……」
「うん、おやすみ。ねぇ、リコリス……。今日の暗躍活動に、僕も顔を出そうかな?」
急に思い立ったようにロゼスは言った。
「急に……どうして? 明日は私と暗躍活動する日なのだから、今日は休んだ方が……」
「大丈夫。明日もしっかりやるよ。それに、リコリスのためにもガゼロとは距離を縮めた方が良いからね。それじゃあ行ってくる……」
ロゼスの決意は固く、私の名残惜しい視線に気にも留めないで、あっさりと私の部屋を出て行った。あまりの潔さにその後姿を見送るしかない。
誰もいなくなった部屋で、私は先程の行為を思い出していた。
「……それにしても、私ってあまりにも大胆だったのね。自分でも信じられないわ。誰かを好きになるって、こんなにも馬鹿になる事なのかしら……?」
自分が自分ではなくなるような感覚に流されて溺れそうになった。優しくされるのも、時々意地悪されて刺激的な事をされるのも、全部嬉しいと思ってしまった。劣情が身体を支配して、今すぐ結ばれたいだなんて……。
「真面目で優等生だった反動……?」
そんな風に冷静に考察してみても、またあの余韻を求めている。
「――――きっと至極簡単な話よ。大戦争を止めて、平和な世界になればロゼスとずっと一緒にいられるのだから」
そう自分を奮い立たせ、私は制服を脱ぎ捨てた。善は急げ。早急に暗躍活動の準備をする。
私たちはお茶の時間という名の戦略会議が始まったその日から、4人で暗躍活動をする事に決めた。暗躍活動の目的は不穏分子を一早く探し、その芽が大きくならない内にそっと摘み取る事だ。当番制でペアで動く事が決まりだった。
大戦争の火種を摘むための暗躍活動を始めてから、学園内ではこんな噂が立つ。
「悪事は暴かれ、裁かれる」や「千年の節目に起こると言われる大戦争も、起こらない可能性が高い」などと囁かれるようになった。
お茶の時間の成果の一端だろう。ロゼスとガゼロと爛諭が会話を弾ませながら一緒に行動している事が、生徒たちの価値観や考えを変えるきっかけになっている。
ペテロ帝国とぺツィート王国は、どの歴史を振り返ってみても仲が悪い。
その敵対する国同士のロゼスとガゼロが上辺だけでも仲良さそうに歩いているだけで、生徒たちに疑問の種を蒔く事が出来た。それがぺツィート王国の頭脳でもあるユリネス大公国の次期大公候補、爛諭の公認であれば尚更だった。
環境に、大人に、噂に、国に、支配者一族に――――それら全てに植え付けられた固定観念が、本当に正しいのだろうかという疑問の芽が出た時。生徒たちは、自国と他国の歴史や違いを学びたいという気持ちを沸き上がらせ、歴史学の授業に足を運んだ。
凄惨な歴史があっても、もしかしたら仲良くできるかもしれないという希望を持って。
履修の選択表希望より多い生徒が歴史学の授業に集まり、暗躍活動を始めた日から少しずつ人数を増やしていく。リネロ先生も、それにはとても驚いていた。先生と2人だけの授業はなくなってしまったけれど、他の生徒の貴重な意見や考えに新しい刺激を貰えた事は私の糧だ。
学園内は確実に良い方向に向かっている。私たちなりの啓蒙活動は良いうねりとなって、学園を変えつつあった。
そんな功績もある暗躍活動の今日の当番は、ガゼロと爛諭だ。先程ロゼスも暗躍に加わると言っていたから、私もその後を追う事にした。
――――理由は至って単純。今まで通りの私のやり方、真面目にコツコツが最短ルートな気がする。休んでいる暇はないわ。まだ諦めるには早いし、失敗も取り戻せるかもしれない。
制服を脱ぎ捨て、暗躍の準備に取りかかる。窓を開けると、夜の冷たい風の中へとその身を落としていった。
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