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37 爛諭の恩返し②

――――あ、いい笑顔。こんな顔も出来るのね。


その笑顔を見て、不覚にも爛諭の事を知りたいと思ってしまった。塗り薬の持ち主探しはまた後でも良いと思える程、その笑顔は衝撃的だった。



「ら、爛諭。少し時間を貰えるかしら?」


色々な話がしてみたくなって、気付いたら誘っていた。


今の爛論は私に気を許している気がするわ。もしかしたら信頼関係を結び、絆を強める絶好の機会チャンスなのかも。


爛諭は意外にも提案を承諾してくれた。空き教室へ移動した後、爛諭は魔法でしっかりと扉を施錠し、防音壁で音が漏れないようにした。


「やっと周りを気にせずに話せるわね」


「そうですね」


聞かれたくない話も、普通の声で話せるようになった。


「爛諭は、ガゼロと付き合いが長いの?」


そんな質問から始まり、徐々に掘り下げた質問をしていく。


爛諭は嫌がる素振りも見せずに、私の質問全てに答えてくれた。出会った頃のような作り笑顔もしなかった。真面目に、時々冗談を交えて話をしてくれた。


――――こんな一面もあったのね。


そんな風に思った。


幾つかの質問に答えた後、爛論はこんな事を言った。


それは、物語の進行に影響を及ぼす程の大事な事で、キャラクター個人の出来事イベントの鍵になりそうな事だ。


「ぺツィート王国とユリネス大公国は協力関係にありますが、私とガゼロはそれ以前から友達でした。私たちは度々城を抜け出して、国境付近でよく遊びました。そんな2人が今は政治も国も絡んだ協力関係にいる……。実を言うと、私は父にこう言われているのですよ。ガゼロの信頼を勝ち取り、ガゼロの首をれと……」


話の雲行きが急に悪くなり、思わず爛論を凝視した。


爛諭の信頼関係を築くための“取っ掛かり”が出来たのは、つい先程の事だわ。それなのにこんな重要な事を話すなんて、どうしてかしら……。


爛諭の表情は至って変わりなく、ただ私の方が心配になるばかりだった。


意図が読めない。早過ぎる展開に頭が混乱しそうだわ。


「爛諭は、どう考えているの?」


そう聞くのが精一杯だったけれど、爛諭は丁寧に返してくれた。


「……私の父は、ガゼロの兄と手を組んでいます。今回船員に手を回し、ガゼロに花粉を付け眠らせたのは、ガゼロの兄、ジキの差し金です。父は計画が失敗した時のために、男たちの身体に毒を注入し、駒として学園に送り込んだ。そして、時間差で襲わせるようにしたのだと思います。この毒は遅効性ですからね」


そう言って笑う爛論の横顔が少し寂しそうで。


ぺツィート王国もユリネス大公国も私にはあまり馴染みのない国だけれど、そういう背景を聞いてしまうと、戦争の火種になりそうなものは意外とそこら辺に転がっているのだと思った。


「この杜撰な計画は、ジキと父が立てたものでしょう。ただ一つ気になる事は、ジキと父に毒を作って渡した人物がいるという事です。私が言うのもなんですが、ジキと父は頭がおめでたい人なのですよ。こんな猛毒、彼らには作れません。そこをガゼロと一緒に突き止めようかと思います」


「その言葉を聞いて安心したわ。爛諭はガゼロを大切に想っているのね」


爛諭はしっかりと頷いた。


「もちろんです。そもそもガゼロは、私の事情を知った上で一緒にいてくれるのですよ。ガゼロは私に何時でも首を狩れば良いと言いました。そんなガゼロだからこそ、私は彼のために死力を尽くしたい。父にもジキにも、誰にも奪わせてなるものか。他の誰かに命を摘み取られるくらいなら、その時は私が――――」


爛諭の決意は常軌を逸するもので、とても真似できるようなものではなかった。


でも、その言葉も想いも信念も、とても綺麗だわ。


そんな事を思いながら、凛とした姿勢で佇む爛諭の横顔をじっと見ていた。



「少し話し過ぎましたね。でも、これで貴女も分ったでしょう? 私はガゼロにぺツィート王国の王として、戴冠していただきたいのです。私とガゼロの目的はそれぞれの現王を倒し、悪政を終わらせる事。そのためには、もうすぐ訪れる大戦争を止めなければいけません。これ以上、民を苦しませる訳にはいかない。貴女は戦争を止めようとしていると聞きました。ガゼロの目で判別しても、その事に嘘や偽りはなかったと。それに、暗躍する程の腕前もある。だから、私もガゼロも貴女に協力しましょう」


「良いの? 爛諭は絶対反対するかと思っていたわ」


「初対面の相手には、いつも私はそんな態度をとるのですよ。昨日の夜までは確かに心を許していませんでしたが、今は違います」


爛諭は私に手を伸ばした。


「私と契約を交わしてくれますか? 一度私と契約を結ぶと、私の博聞強記の称号の力がずっと覚えています。裏切らないように貴女を()()()()()監視していますから」


「おっかないわね。望むところよ」


その手を迷う事なく受け入れた。互いの手のひらを合わせ、契約を結ぶ。これは大きな一歩だった。


――――嬉しい。仲間が増えたわ。


契約印が刻まれた手のひらをぎゅっと握りしめた。


「ああ、一つ言い忘れていた事がありました。協力関係を結びましたが、もちろん貴女とガゼロの進むべき道が違えた時には、遠慮なく手のひらを返すことを努々(ゆめゆめ)お忘れなく」


「ふふ。大好きなのね、ガゼロの事」


脅しのような言葉も、蛇が這うような視線も、もう怖くない。


「……少し気になったのですが、男同士で好きとは言わないのでは?」


「え? そうなの? 私の知っている前世せかいでは、男同士だろうと女同士だろうと、恋愛や結婚の自由を許されている所があるのよ」


生憎、私の住んでいた所はそうではなかったけれど……。


「……博聞強記の王の称号を持っている私でも、そのような話を見聞きした事はありません。そんな世界が本当に? でも、そんな世界があるのなら、見てみたい気もします。ガゼロへの想いが恋愛感情かは分かりませんが、貴女に対しての思いならはっきり分かりますよ。友達以上でも以下でもない事は」


――――うん、それは嬉しい。でも、ガゼロに抱く感情も後々はっきりさせて欲しいわ。BL展開を期待しちゃうじゃない。あ、そもそもこのゲーム、BLルートなんてあったかしら?


その先を少し見たいと思ったのは秘密で。


「じゃあ、私たちの関係は友達という事ね」


「ええ、そうですね」


“友達”という耳障りの良い言葉で、私と爛諭の話は上手くまとまった。


一方爛諭は消化不良なのか、独り言を言い始めた。



――――まさか私が言った事を気にしているのかしら? ガゼロに抱く感情が恋愛感情なのか、迷ってるの?


もしかしたら、新しい扉が開くのかもしれない。乙女ゲームの攻略対象者が主人公そっちのけで男に走る可能性があるかもしれないなんて、考えただけで胸がときめく。


BLの事をあまり詳しくない私でさえ、不謹慎にもそう思ってしまうじゃない。


うん、流れのままに見守ろう。


爛諭のガゼロに対しての想いが愛情だろうと忠誠だろうと、情がある事には変わりないのだから。

読み終えて「頑張って」や「続きは?」と思った方は、ブックマークや広告下の☆☆☆☆☆☞★~★★★★★にして評価宜しくお願いします。正直な感想に飢えてます。『111回以上婚約破棄されましたが、まだ婚約者の座を死守しています』☞https://ncode.syosetu.com/n1599he/の方も読んで下さると嬉しいです。




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