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霊異の解放者  作者: Ritoha
32/35

32話今この瞬間を…

本日、スマホのようなユニークスキルで異世界を生きる

(https://ncode.syosetu.com/n2247fs/)

も更新してます!


巫女の服を着た少女……名前は春神叶絵。


彼女が抱えているのは、同じく巫女の服を着た女性だった。


「治って!お願いだから治って!」


叶絵が必死に女性の傷を治そうとするが、それは叶わない。


「もう良いのよ、叶絵。それよりもお願いしたいことがあるの……」


「絵理さん……死なないで…」


叶絵の頬には涙が伝う。



「……お願い、絶対に復讐なんて考えないで。あいつには、夫も私も勝てなかった……」


女性の目からも涙が流れている。近くにある夫の亡骸に目を向けていた。


「私は、あいつを許したりしない。あの霊異を、それに裏切り者も…」


「お願いだから、戦わないで……あなたは幸せになって……そして大切なものを見つけてね」


彼女の命は後わずか、それは誰にでもわかることだった。


「幸せなんていらない。2人が居なくなったら私は……」


「きっと、あなたなら幸せを見つけられる……だがら、太陽の武型を……使ったら駄目だからね。あなたでは使いこなせない……」


女性は、叶絵の頬に手を当てて懇願する。


「私が足手まといにならなければ……私さえ…」


「叶絵、そんなこと…言ったらいけない…。あなたが無事で私はとても嬉しいんだから。さっきからお願いばかりでごめんね。……あの子のこともよろしくね」


徐々に絵理の目の焦点が合わなくなっていくのがわかる。


「待って、絵理さん!」


「ご……めん…ね、…叶絵。ごめ……ん…ね、か……」


最後まで言い終わることなく、絵理の瞳が閉じられる。


「あ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁ。絵理……さん、うわぁぁぁぁあぁぁあ!」


叶絵の瞳からはこれまでに出したことがない量の涙が出てくる。







「夢か……10年以上も前なのにな。どうやっても忘れることはできないな」


睡眠から目を覚ました叶絵は、自分の汗に驚く。うなされてしまっていたのだろう。


大切な人を失う瞬間とは、いつまで経っても忘れられないものだ。それは叶絵程の実力者であっても関係ない。


「未だに、あの霊異の居場所はわからない。だが、この前遭遇した裏切り者……奴が出てきたことは何かのきっかけになるはずだ」


素早く着替えを済ませた叶絵は、外に出る。眷属と呼ばれようとも鍛えるのは大切だ。




「あ、おはようございます!師匠」


朝のかなり早い時間だ。だが、弟子である廻理は、すでに起きて修行をしていた。


「早いな、廻理。君なら未だに布団の中、夢の中だと思っていた」


叶絵は、少し驚きつつ言う。


「なんでか、目が覚めたんですよね。それに、もう助けられるばかりは嫌だから」


弟子の真っ直ぐな視線は、かつて見た大切な人を思い出すようなものだった。


「ふふ、1人での修行もつまらないだろう?私も付き合ってやろう」


「ええー、師匠とかぁ……やるしかないか!お願いします!」


若干嫌そうな顔をしながらも廻理が答えてくる。


「早速いくぞ?気合を入れてかかれよ!」


と言い叶絵が廻理の方に向かう。



絵理さん、見てますか?


私はあなたの願いを破ってきた。だけど一つだけは言える。今、私は本当に大切なものを見つけた。今、この瞬間がとても大切だと思える。







相変わらず、師匠にはコテンパにされる。


なんでも師匠は、風の眷属とか言われる凄い人らしい。


「あなた、知らなかったの?」


と真輪に言われてしまった。


眷属の弟子というのは、とても誇らしいものだと思うが、やはり修行は、とても厳しい。


「動きが止まって見えるぞ!」


と言われ、師匠にパンチをもらう。


「グハァ!」


地面に大の字に倒れながら、俺もそんなセリフを言ってみたいわと思わずにはいられない。



「そういえば廻理、ここを経つ準備は出来ているのか?」


「まぁ元々荷物なんてないようなものだからいつでも大丈夫ですよ」


真輪に回復してもらい、立ち上がりながら廻理は師匠に答える。



学校もあるため、住んでいる場所に戻らなければならないのだ。


休みすぎると誤魔化しが大変になるため、出来るだけ避けたいものだ。


「真輪ともそろそろお別れかぁ」


と廻理が呟く。試験で組んでいただけで、後から巫女は派遣される。そのため、ここで真輪とはお別れになるのだ。


師匠が言うには、真輪の巫女の腕はかなり優れており、活躍間違いなしとのことだ。


「案外、すぐに会うこともあるかもしれないわ。その時は、よろしくね」


と真輪が言う。


お互いに死と隣り合わせの戦いをすることになる。今日会った者と明日無事に会えるかはわからないのだ。


だが廻理は、確信していた。きっと真輪とも無事に再会出来るだろうと。






試験が終わり、元の日常がやってくる。


学校で担任の咲季の話を聞き流しながら、後ろの席でボーッとする。大変だったし、これくらいは許してくれるだろう。


特に教室で変わった様子はない。廻理の席の後ろに机と椅子が一つ置かれたくらいだ。


前の席の悠も元気そうだった。休みでどうしてたんだ?と聞かれたので、事前に用意した言い訳を言ったら信じてくれた。悠の説得はかなり楽なものだ。



「皆さん、お気づきとは思いますが、後ろに机が置かれてますね。実は、今日からこのクラスに1人仲間が加わります!」


突然の転校生が来ると言う展開に廻理は、驚く。


前の席の悠は、大興奮だ。


「おいおい、廻理!転校生だってよ。どんな子だろうか?」


「さあね。男子か女子かもわからないからなんともね…」


と廻理が言ってると、教室に確実に知っている女子が入ってくる。服装は、廻理が知っている巫女の服ではなく、制服だ。


凛とした彼女を見て、教室が静まり返る。


「初めまして、朝道真輪と言います。両親の仕事の関係でこの街に引っ越してきました。これからよろしくお願いします!」


と言い廻理の方に視線を向ける。そして微笑んだ。



前の席では、悠がこっちを見たぞと喜んでいたが廻理は、スルーする。



とんでもなく早い再会だなと廻理は、笑ってしまうのだった。

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