19話守る強さ
鷹の霊異を倒してから廻理達は、その後も何体かの霊異を倒した。
「もうそろそろ夜明けね。休む場所を見つけましょう」
と真輪が言う。
朝になれば霊異が出てくることはない。霊異は太陽が苦手なため日中は動けないのだ。試験を受ける霊断士や巫女達は日中に休息をとる必要がある。
「そうだな。良い場所を探そうか」
と言い武器をしまい移動を始める。時々、他の受験者を見かけるが、それぞれ頑張っているように思えた。
廻理達は、街の中にある普通のアパートのような場所の一室に入る。
「さて、夜までのんびりしましょうか…疲れたわぁ」
と真輪が伸びをする。
「たしかに夜通しだと疲れるよね」
と廻理も伸びをする。
「廻理、あなたはどこか怪我をしたかしら?していたら治療するから言ってちょうだい」
と真輪が言う。
「いや、特に怪我はしてないかな…うん大丈夫だ」
自分の身体を触って確かめるが特に怪我や違和感もなかった。
「あなた、かなり強いわよね?自覚してるかしら?」
と真輪が行ってくる。
「え?そんなことないでしょ。みんな強いんじゃないの?」
と聞いてみる。ほかの受験者の戦いとか見てないからわからないのだ。
「受験者だったら多少は怪我をするものよ?ノーダメージってほぼ私いらないじゃない」
と言う。
「いやいや、真輪がいないとトドメをさせないだろう…それに守らないといけない人がいるってのは自分にかなりの力をくれるんだ。怪我をすることもあるし、真輪の存在はとても大事だよ」
と素直な感想を伝える。
「そう言ってくれると嬉しいわね」
と言い、目を細める。喜んでいるようだ。
「さて、それじゃあ休みましょうか…」
と言いながら真輪が巫女の服を脱ぎ出す。
「え!ちょっと待ってくれよ…俺が、男がいるんですけどー」
廻理が慌てて目を塞ぐ。
「別に、見られても問題ないわよ。全裸になるわけじゃないんだから、水着と同じよ。なんなら目に焼き付けとくかしら?」
と真輪が言う。
何てクールなんだ。クールなのか?
廻理は、よく分からなくなってきた。
「私は、一旦寝るから廻理も寝たら?毛布もあることだし」
と言い横になっていた。
「そうだな…休んでおかないとな…」
と廻理も毛布を取りながら横になるのだった。寝付けないかと思ったが、案外すぐに眠れるのだった。
廻理が目を覚ますと時間は15時を過ぎた頃だった。
「ふぁ〜ああああ」
と欠伸をしていると真輪の声が入ってくる。
「随分と大きな欠伸ね。それにしてもお腹空いたし、ご飯を取りに行きましょう」
「そうだね…行こうか」
確かにお腹が空いた。レンも起き上がり支度を始める。寝起きは動きが良くない…
外では、真輪は巫女の服をしっかりと着ている。さすがに下着で出てきたらやばい奴です。
「一応、武器は持っておかないとな…」
と廻理は、背中の刀を見る。
「ええ、その方が良いわよ。試験で多くの活躍をしたペアが、調子乗るなよ的な感じで大人数に襲われるなんてことが過去にあったみたいよ?」
と説明してくれる。それにしても物騒だ。
「それは、酷くないか?人として、霊断士にも相応しくないよな…」
そんなことが起こるのかよと思っていると、食事が置かれた場所に到着する。
試験前に食料が置かれている場所については説明されていた。それぞれ受験者の名前が書かれており、自分のを発見する。
「携帯食料って感じだな…」
一緒に水も置いてある。
「味気はそこまでないわね…」
と真輪が呟く。廻理も同感だった。
他にも受験者がいて、食料を取りに来ていた。
「あの…君って、霊異をあっさり倒してた子だよね?すごく…強いんだね…憧れるよ」
と声をかけてきた子がいた。
「そんな大したことないよ。君はどうなんだい?」
と聞いてみる。
「僕…かい?ああ、本当に中級でも弱い奴を何とか1体倒しただけだよ…」
と自信なさげに言っている。何だか気の弱い子のようだ。
「そんなことはないさ、君は今生き残っている。大事なのはそこなんだ。だから自信を持ってくれ」
と肩を叩きながら言う。
「そうだよね…僕なんかと組んでくれたんだ。死なせるわけにはいかないよね…やってみるよ!」
と少しは気持ちが前向きになったようだ。
と、話していると集団の声が耳に入ってくる。
「お前らの食料をよこしやがれ!」
「霊異を何体か倒したからって調子に乗ってんじゃねぇぞ」
などと聞こえる。
「おいおい、真輪。さっきの話の本当に起きてるじゃんか…」
「本当に起きるとは思わなかったわ。それにしても不味いわね…」
「君たち…早くここを離れようよ。巻き込まれるよ?」
と弱気だ。
「いや、これは見過ごせない…止める。真輪は、ここら辺で待っとくか?」
真輪に危険が及ぶのは許せない。
「いえ、私も行くわ。それに廻理は、私を守ってるいる時が本当に強いんでしょ?」
と微笑んで言う。
「ああ、ちゃんとお前のことを守り抜いく」
と言い、2人で歩きながら集団に近づくのだった。




