14話試験に向けて
「言っておくが、支人は戦闘が出来ると言うわけではないからな。あくまで咲季は、廻理の高校生活のサポートになることを忘れないようにな」
と師匠に言われる。
「ええ、まあ出来るだけ迷惑はかけないように頑張ります」
「叶絵がいなかったら私がご飯を作ってあげるからね!良かったらいつでも呼んでよ」
と咲季が言う。一人暮らしで不安だった食事の準備がまさか無くなるとは思わなかった。
喜んでいる廻理に叶絵が耳打ちをしてきて衝撃の言葉を聞く。
(咲季の料理は凄く不味いぞ…)
(えっ?嘘ですよね…いつもの冗談でしょ)
と聞き返すが首を横に振る。不味くないはずだと廻理は、やはり神に祈るのだった。
師匠が先生を近くまで送っていくということなので廻理は、のんびりテレビでも見ながら待つことにした。
「明日からは、学校の説明とかだったよな…当分は授業もないし楽そうだな」
と呟く。師匠との修行をやりつつ日中の学校は、眠気との戦いになりそうできつい。
この後も修行になるため準備を済ませておく。
師匠が帰ってきてすぐに出発となる。
「ほぉ、準備万端か。やる気があるな、すぐに出発しよう」
廻理と師匠である叶絵は、公園に出てきていた。
「とりあえず、ウォーミングアップだ。走るぞ」
と言い走り出す。あまりにも早い時間に組手なんかを始めると目立ってしまうため怪しまれないランニングを行う。
「そういえば、今のうちに霊断士の試験について話しておこう。ランニングしながら聞いてくれ」
「ああ、そういえば詳しいことはまだ知らないですね…」
どのような試験が行われるのか気になってはいた。
「内容としては、その場で巫女とペアを組んでもらって霊異を倒してもらうものだ。期間としては、1週間夜の間だけ活動してもらう。そしてその間に最低限で良いから霊異を倒し生き残ることが出来れば認められる。だが死者が出ることもあるから覚悟しておくようにな」
ということだ。
「その場でペアを組むんですか…なるほど。出会ってすぐに命を預けることになるのか」
「巫女も霊断士と同じように、見習いとして修行を積んでいる。そして試験で初めて連携を取るんだ」
「なんか、不安なんですけど…うまくやれるかな」
と不安に思っていると励まされる。
「なに、試験に出てくる霊異は中級だ。廻理なら余裕で勝てるようになると思うぞ?後は組む巫女次第だが」
と言う。霊断士の役割である自分は大丈夫なようだ。
「それで試験自体はいつあるんですか?」
心の準備をしておきたい気持ちがある。
「ああ、それなら6月だな、あと2ヶ月後にあるぞ。それまでに出来るだけ霊気を仕上げていくぞ」
と言う。
「あと2ヶ月ですか…なんか緊張します」
「フフ、それまでに自分に自信をつけれるように頑張れ!」
ランニングを終了し、師匠と向かう会う。
「まずは、普通に組手をする。そして次に武器を使っての練習だ。出来るだけ夜の遅い時間にやらなければならないから頑張れよ」
と言い拳を構える。
「わかりました。死にものぐるいで2ヶ月間やってみます」
と言い廻理も構える。
両腕、両足に霊気を集中し出来るだけ全身を回すようなイメージを持つ。まだ全身で霊気を纏うことは出来ないが身体能力はかなりあると思う。
「よし、来い!」
と言った師匠に向かって廻理は、自分から仕掛けていく。
「はぁぁぁぁぁ!」
身体能力は、霊気でかなり底上げされているため現実ではあり得ないような動きが可能だ。
「少しずつだが確実に強くなってるな…だが、まだまだだ!」
と言い師匠に足を蹴られる。
「くっ、まだまだ…」
諦めずに師匠に攻撃を放つと一発だけ掠らせることが出来た。
「ほぉ、やるな廻理。さあ上げていくぞ!」
師匠はまだ全然本気を出していない。これは将来的に追いつくことが出来るのだろうかと思う。
「さて、素手でやるのはここまでだ。ここからは武器の使い方をやるぞ」
ついに武器の修行に移る。石を弾き返す遊び以来だなと思う。
「荷物を取ってくるから少し待っていてくれ」
と言い師匠が去っていく。
「うーん、少しでも鍛えとくか」
と言い廻理は、腕立てを始めるのだった。
戻ってきた師匠は、大きめのカバンから木刀を取り出す。
「廻理は、使う武器は刀で良いか?何か使いたい武器があるなら用意するが…」
と言う。
「武器とか使った経験ないので刀で良いですよ」
と言い木刀を受け取る。
「わかった。試験の時用にも刀を用意しておこう。刀に関しても指導くらいは出来ると思うから、難しいかもしれないがやっていくぞ。まずは素振りだ!綺麗な型で振ることが求められる」
廻理は、何度も木刀を振り続けることになる。
「1、2、3、4、5、6、7、8、9…」
と無心で武器を振るう。綺麗な形というのがなかなか集中力が必要だった。
「当分は、これを繰り返すことになりそうだな…綺麗な型で振れるようになったら技を教えていこう」
まだまだ先は長そうに感じる廻理だった。




