13話新しい味方
廻理は、高校の入学式に出ていた。ついに入学式の日となったのだ。
校長先生の話は安定して聞き流す。
入学式が終わり、各教室に戻ることになった。
「えーと俺のクラスは2組だから…」
と呟きつつ向かう。
1年生は、全部で6クラス存在する。1クラス大体25人ほどだ。
教室の入り口に席順が書いてあり、廻理の席は奥の1番後ろだ。
「よし、ナイス席順」
と小さくガッツポーズして入る。
島からの進学となると知り合いは皆無なので、明らかなボッチとなってしまう。早く友達を作らないとな…と心に誓う。
「はい、それじゃあホームルーム始めますよ!皆さん席についてください」
と明るい感じの髪が肩くらいの長さの女性が呼びかける。みんな、すぐに席につく。あの人がこのクラスの担任のようだ。
「皆さん、入学式お疲れ様です!そしてご入学おめでとうございます。さっきも紹介がありましたが、このクラスの担任の阿早山咲季です」
と自己紹介する。入学式でも紹介があったようだが、廻理は聞いてなかったみたいで初耳だ。
「それじゃ、これから今後の流れを説明しますね」
と言いこれから授業が始まるまでの数日間の流れが説明される。さすがにきちんと聞いた。
「それでは、これで説明を終わりますね。廊下で保護者も待っていますので、気をつけて帰ってください」
と話が終わる。
教室を出て生徒達は、まだクラスに馴染んでないからかすぐに親の所に向かっていった。
親がいない廻理にとっては、なかなか羨ましいと感じる瞬間だった。
のんびりと帰る準備をしながら、ほかの人が帰るまでの時間を潰す。
「あなたが夜疎川君かしら?もう帰っても大丈夫よ」
と担任が声をかけてくる。
「ああ、すみません。すぐに出ますね」
と言い荷物を背負う。
「ええ、あなたのお母さんも待ってますし」
「はぁ?」
今、お母さんと言ったのだろうか…廻理は、意味がわからなかった。なぜなら自分の親はもうこの世にいないのだから。
「いや、自分に親はいないんですけど…」
と言うと咲季は外を指差す。
「あ………」
廊下には確かに人がいた。廻理に向かって手を振っている。その人物は、師匠だった。
「師匠!どうしてここに」
廻理はすぐさま廊下に飛び出す。
「おいおい、こんな場所で師匠なんて言うもんじゃないぞ」
「あ、しまった…」
と思いながら担任である咲季の方を見る。明らかに変な人達と思われると感じた。だが咲季の反応は違うものだった。
「ふふ、相変わらずね叶絵。弟子は困らせるものじゃないわよ」
と微笑む。
「それは君もだろうに、咲季。私は、母親ではないぞ」
と返している。何やら2人は知り合いのようだ。
「ふふ、あなたの夜疎川君を見る目が母親みたいだったから。うっかりね」
と舌を出す。
「まぁ良い、廻理。彼女は、我々霊断士の関係者のようなものだ。事情を知ってる彼女が担任なら少しは安心出来るだろう?」
なかなか嬉しいことだ。確かに、担任なら何かあってもフォローしてもらえそうだ。
「それは、安心ですね。助かります」
「これからよろしくね。夜疎川廻理君」
と言い手を出してくる。
それに応じて廻理も手を出し、握手するのだった。
まさか、最初に仲良くなるのが担任とは予想外であった。
「入学の看板もあるし、記念に写真でも撮らないか?廻理」
と帰ろうとしている時に師匠が言う。思い出になるなとも思う。
「そうですね。思い出に撮るのも良いかもですね!」
と言い近くを通った先生に頼んで写真を撮ってもらった。廻理にとってずっと大切な思い出になるであろう写真だった。
「さて、それじゃあ廻理の高校入学を祝って乾杯!」
師匠が乾杯の音頭をとる。
「おめでとう〜」
と咲季が言う。
「いやいや、どうして先生がここにいるんですか?普通に教師として不味いでしょ!」
と廻理が突っ込む。
「そんなに小さいことを気にするな廻理。さあご飯を食べるといい。お前のためにたくさん作ったぞ!」
と言う。確かにご飯は美味しそうだ。
「それは、モグモグ、そうですけど…」
と食べながら言う。
「咲季は、我々霊断士の関係者だと言っただろう。そのことについて説明しなければならないから今日呼んだんだ。どうせ、独り身で寂しいだろうしな」
と師匠は、先生に対しても凄い対応だ。
「ムッ!独り身はあなたもでしょう。まあ今は、それは置いといて説明もしていきましょう」
と言う。
「じゃあ先生も霊断士なんですか?それとも巫女?」
関係者といえばそう言うことだろう。
「いや、咲季はどちらでもない。まだ説明してなかったが彼女は、支人と呼ばれる者だ」
「支人?それって支える人ってこと」
「ええ、その通りです。私は、霊断士に向いてなかったので…支人をやってるんです。一般社会に紛れ込み霊断士を影からサポートしてるんです。夜疎川君が霊断士になれたなら私が色々とお世話をしたりもします」
と説明してくれる。
「そういうことだ、私もずっと廻理に構っていることが出来ないからな…霊断士になったら彼女を頼ると良い」
「なるほど、わかりました!学校でも対応とかは気をつけますね」
ボロが出ないように気をつけないといけない。あまりに先生と親しくても変な目で見られるかもしれない。
「ええ、困ったことがあったらすぐに相談してね。進路の相談って言えばどうとでもなるから」
と話を進めていく。
廻理に新たな助っ人が出来るのだった。




