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異端なる白銀の後継者  作者: れとると
——《追想の地》編——
37/43

無情

 21時09分風が弱まり、雨のみが勢力を増していく、琵琶湖の水位が少しばかり上がり道路が2センチ浸水している道路を走るバスが1台。


 バス内にボツボツと雨音が響く車内には戦う事を決め武器を装備した陰陽道隊員24名、そしてバスを運転していたのは小野目おのめであった。


小野目おのめ連隊長はバスも運転できるんですね……」


 張り詰めた空気の中緊張を和らげようと1人の隊員が小野目おのめに話しかける。


「そうね……」


 小野目おのめの回答はあまりにも素っ気ないものであった、今から死地に向かおうとしている最中に希望を持たせる事、不安を誘う言葉どちらの言葉も的確では無いと分かっていたからであった。

 だが小野目おのめ自体これが正しい事だとそう思っているだけで今この現状何が正解なのか誰にも答えを見つけることは出来ないだろう。


 だが無情にもこの歯痒さが残る隊員達の目的地滋賀第1支部が直ぐそこへと迫っていた。


「後8分ばかりで到着します、狙撃手がいるかどうか分からない状況ですので、このバスのまま支部に突入します。

 直ぐ戦闘になる可能性もあります、覚悟を決め準備しておいて下さい」


 隊員達は窓から狙撃されない為にしゃがみ込み座席の足に身体を固定する。


 すると、『この状況で、言いづらいですが……、大事なことなので』


 志木しきが操る式神兵がバス先頭に立ち隊員に向かい支部内の状況を説明する。


 内容は一変の望みもささないほどの最悪の状況、支部内に放った式神兵は全滅……それに敵が何人居て、どの様な攻撃で式神兵を破壊したのかさえ分かっていない状態であった。

 さらなる恐怖が隊員達を包み込む。


 すると最後尾の席でしゃがんでいた男性隊員が1人バッっと立ち上がり、バスの真ん中を入り口に向かい早歩きで向かって来る。

小野目おのめ連隊長、すみません……バス止めて下さい、私を下ろして下さい……まだ死にたく無いんです」


 小野目おのめこうなる事は予想は出来ていた。

 だが男性隊員の決断は遅く、小野目おのめはバスのアクセルを強く踏み続けていた。

「……もう、支部直前よ申し訳ないとは思うけど今バスを止める事はリスクが高いそれに、狙撃手がいたとしたらバスを出た貴方は格好の的になるわよ」


「なっ……ならこのバスを盾に最後尾の窓から逃げさせていただきます……もう私は命令でも逃げさせていただきます」


 そう伝え、男性隊員は後ろを向き最後尾の窓めがけ走り出す。

 男性隊員が窓に勢いよく飛び込もうとした瞬間だった。

 小野目おのめ、だけではなく全隊員の耳にザンッという斬新音が聞こえただけではなく一瞬だったのだがバス真ん中を誰かが通り過ぎた様に感じていた。


「……今のは」


 するとバス、式神兵……それと立ち上がった男性隊員の身体が真ん中から裂けるように分裂していく。

 男性隊員の大量の血が飛び散る中、小野目おのめには聞こえていた……エンジンに血液が付着した瞬間バチッバチッとショートしたらしき音。


「全隊員! バスから離……」


 ドォォォオン!! 分裂したバスは勢いそのまま支部へと突っ込み、損傷したエンジンから出火し大爆発を起こす。



楠那くすなさん、酷いやり方だな」


「やっと来ましたか……御殿場ごてんば殿、遅いので私1人で隊員を殺し、まして資料まで見つけてしまいましたよ」


 薄いファイルケースを取り出し、御殿場ごてんばに見せつける。


「さぁ合流地点に向かいますよ」

 そういうと楠那くすなの背中から、カラスのように真っ黒な翼が生えてくる。


「はぁ……着いた早々また移動かぁ、俺も烏天狗の細胞取込めば良かったと今痛感している」


 楠那くすな御殿場ごてんばが支部をあとにし、移動しようとした時ドンッと1発の銃声が鳴る。


「待て……まだ貴方達を行かせる訳には……はぁはあ……」


「あらあら、あの爆発でまだ生きてるなんて頑丈な女ですね」


 燃え上がるバスから這い上がりボロボロの身体で楠那くすな達に向け、小野目おのめが拳銃を向け発砲していたのだが、暗く雨が強く降っている状況で弾丸は楠那くすな達にかすりもしていなかった。


 それでも尚、小野目おのめは逃げようとはせず未だ拳銃を向ける、不思議と冷静な様にも思える程であった。


「あんな身体で無駄な事を良くやれますね」


「フゥー……」

 ドンッ!


 放たれた弾丸は楠那くすなの太腿を貫く。

「んなっ!!」

 楠那くすなはよろけながら膝を付く、太腿からは滲む様に服に血が広がっていた。


「残念……頭を狙ったつもりでしたが、まぁ今の発砲は無駄にはならなかったみたいね」


 っと小野目は標準を修正し、再び引き金を引く直前だった。


楠田くすなさん少し甘く見過ぎですよ、相手ては8年前陰陽道高校を飛び級で卒業した天才……、小野目おのめ 皐月さつきですよ」


 御殿場ごてんば小野目おのめに向け右腕を上げ手を開くと。


「……かっ身体が動かない」


 小野目おのめ身体は糸の様な物で身体を締め付けられており自分の意思で指一本動かす事すら不可能であった。


 御殿場ごてんばは右手中指を曲げると、まるで道化マリオネットの様に小野目おのめが拳銃を持つ右手を操り銃口は今、小野目おのめの頭部に向けられていた。


御殿場ごてんば殿、私なんかより貴方の方が酷いやり方じゃ無いですか」


「確かに言い返す言葉見つからねぇ」


「ヒッヒッ私の烏天狗細胞より、やはり御殿場ごてんば殿は大蜘蛛細胞の方が合っていますよ」


「まぁそういう事にしておきます」

 そして御殿場ごてんばは小指を曲げると、小野目おのめの引き金に置く人差し指が動かされる。



「くっ……こんなところで死んでたまるか」

 小野目おのめは抵抗しようとしていたのだが……。


 ドンッ! ——


 1発の銃声が鳴る……。




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