終局
「フゥー……フゥー……ウゥァアア」
天音は遊馬を斬り捨て、呼吸が乱れ整える隙もなく上条へ縦一閃……刀を振るう。
この時この戦いを観ていた大半が天音の勝利を確信していた。
するとパンッパンパンパンっと4発の銃撃音が鳴る。
上条は痺れた身体に鞭を入れライフルを右側に向け発砲していた。
「……なんとか上手くいきましたね」
天音が振り落とした刀は動けない筈の上条にはかすりもしていなかった。
上条はライフルを発砲する際は地面に固定するか、立って撃つ場合は脇を締めライフルと身体を固定させ足指を握り込み踏ん張りを効かせ発砲する、何故か?……それは発砲後の銃の反動から身体を固定する為であった。
上条は発砲の反動により左側に吹っ飛ばされた状態になり天音の剣撃を避ける事が出来たのである。
「せっかく救ってもらったんです、少しは足掻いてみますよ」
パンッパンッ——
「天音っちー!天音っちーー!」
地行は脚の痛みが引き立ち上がり硝煙の中、天音の姿を捜す。
「返事が無い……もしかしてもう、やられちゃったかなぁ……」
すると奥の方から一瞬懐中電灯で照らされたかの様に光り、そこに地行は反応し動きを止める。
その瞬間パンッと音と共に銃弾が地行の額に撃ち込まれる。
「どぅわぁ!」
——「なんとか当たった様ですね……」
「そうですね……それに気絶もしてると思いますよ」
「あら、貴方正気を取り戻しましたか……」
上条、天音は向かい合う様に壁に背を付けしゃがみ込んでいた。
「さぁどうしますか、決着付けますか? 私は銃、貴方は刀、それに私達は動ける程の気力は残っていない……貴方は不利ですが」
「勿論、やりますよ」
「そうですか……」っと上条はライフルを震える身体で構え標準を定め構える。
「とは言ったものの、私の気力では1発が限界でしょうが」
天音はその言葉を聞きクスッと笑う。
「ならちょうどいいですね、私も1発しか撃てないので」っと天音も震える身体で掌サイズの小銃を構える。
「剣士なのに銃を使うのは卑怯だと言ってもいいですよ、私も余り使いたくは無かったのですが……」
すると上条もフフッと笑い。
「そんな事無いですよ、訓練とはいえこれは戦いです、相手を騙し1つでも隠し玉を持つ事は当然な事ですよ」
「そうですか、有難う御座います……ではこれで遠慮なく撃つ事が出来ます」
上条、天音はほぼ同時に引き金を引く。
『パンッ!』『パウッ!』
開始時間22分経過——
その頃瓦礫で遮られている反対側の宇多はというと。
「はぁ……はぁ……先程の向こう側での爆発、イリヤさん、宗方 遊馬は無事でしょうか……、けどその衝撃のおかげで兄さんから逃げる事が出来たわけですが……」
宇多の身体には複数の打撃痕があり、かなりの体力を消耗していた。
「うーたー、何処に隠れてるー……まぁ返事する訳無いよな、全く……あの爆発の衝撃が無ければ宇多にトドメをさせた筈だったんだけどなー、でもあの状態だと魔力もまともに使え無いだろうし……」
宇多は声を潜め瓦礫の影に隠れるのだが。
左側からそっと宇海の声で。
「宇多何やってんの?」
宇多は、はっと左側を向くと宇海ニヤついた様な顔でこちらを覗き込んでいた。
宇海は左手を伸ばし宇多の首を絞める。
「宇多俺が探索呪術を装備している事予想出来なかったか?
こういう時に思考が乱れるだからお前は弱いんだ」
「ウゥッ……」
宇多は気が遠くなっていく事に恐怖しながらも、必死に抵抗しようと右手を前に出し、野球ボール並の大きさの火球を宇海目掛け放つ。
「ハハッもうこの程度の魔力しかないんだな、哀しいな……こんなので俺を倒せると思うか?」
宇海は右手でとっさに火球を叩くとボォンっという爆発音を出し宇海の右腕を巻き込み爆発する。
「——クッ」
その爆発は宇海にそこまでのダメージを負わせる事はままならなかったのだが、一瞬だけ宇多の首を絞める力が弱まり、宇海から離れる事が出来たのであった。
「宇多無駄に足掻くのは惨めなものだな」
宇海は逃げる宇多に追いつき床にうつ伏せに叩きつけ押し付ける。
「これで終わりだな」
「ま……だ、まだ……」
「諦めなよ、お前の気力も体力も僅かそれに後制限時間5分程度だろ、探索呪術で確認した所この近くまで来ている仲間もいないこれで詰みなんだよ」
(やっぱり……私は兄さんから勝てる、いや逃げる事は出来ないんだ……)
宇多は負けを悟ったかの様に眼からは涙が溢れ落ちていた。
「はい、じゃあこれでお終いかな」
宇海は刀を両手で持ち刃を下に向け振り落とす……。
「打撃衝撃破符起動!」
パァン!っと音と共に宇海の左頬を殴り飛ばす。
宇海は壁に叩きつけられる。
「お前、何でここに……近くには誰もいなかった筈」
「お前凄いな、今のまともに食らって立ち上がるなんて」
そこに駆けつけたのは、伏見 明であった。
「明……」
「ごめん宇多遅くなった」
すると宇海は眉間にシワを寄せ叫び出す様に伏見に問いかけた。
「お前! どうやって……ここまで!」
「えーっとあのーお前のチームの飛雲だったかな、ちょっとSDTから符を交換したって訳、ご丁寧に符の名前、能力もしっかり教えてくれたよ、何だと思う?」
「探索無効呪術……か」
「その通り……まぁその事はもういいだろ、さぁここからは僕が相手をしてやるよ」
その言葉で宇海は理性を失ったかの様に
「相手をしてやる? それは俺が決める事だ!」っと叫び出し、宇多に向け駆け近付き、刀を振り下ろす。
伏見は脚を軸に180度回転し、左脚を踏み込み宇海の腹部にアッパーブローを打ち込む。
「くっそ……やろう!」
制限時間残り1分
ガキン、ガキンっと宇海の刃と伏見小手がぶつかる金属音が響き渡る。
右ストレート、左フック、上段回し蹴り。
「ぐぁはぁ! くそ!!」
左肩、腹部、左腿、右脛に重い斬撃。
「——ッ、まだ……まだ!」
制限時間残り30秒
「打撃振動符発動!」
2人は向かい合い同時に走り込み、同じタイミングで刀を振るい、拳を振るう。
だがほんの少し宇海の刃が早く、宇海は勝利を確信した。
制限時間残り15秒
すると刀の先、伏見との間にピンポン玉ぐらいの火球……刀と交わり、ボン! っと小さい爆発を起こすと宇海の刀を弾き飛ばし、宇海は体制を崩す。
「なっ……」
「私もいる事忘れないで下さい……明!」
「クッッッソ!!」
パァァァン!!
伏見は今出せるありったけの力で宇海の左頬をぶん殴る。
ドォン!! っと宇海は壁に叩きつけられ、気を失っていた。
制限時間残り0秒……訓練試合終了。
生存者
関東高……伏見、土御門
近畿高……柏、天音
この試合僕達は引き分けに終わった……。




