開戦
前日6月14日22時05分
僕達は最後のミィーティングをしていた。当然僕と遊馬の部屋にて。
「なーちょっと質問いい?」
ミーティング中盤頃、遊馬が僕に疑問を思っていた事があるらしく、大きく手を挙げて、話を遮り質問する。
「明これはわざとか、勘違いしてるのか? 分からないけどなー、符をなんで防護符以外で2枚しか装備してないのかなーっと思いましてー」
ルールにある使用符3枚というのは防護符は数には入っていない。
防護符は装備義務されており、指示なく外す事は罪になる可能生もあり得る。
僕が符を2枚しか装備しない理由、それは僕の右手に着けている手袋の中に打撃振動波符という強力な符を装備している為である。
一応これを知っているのは天城校長だけなので隠せは出来るがそれは卑怯というものだ。
取り外す事も出来ない、説明するには色々と問題が出て来そうな為、チームメイトにも黙っていたのだが……さて、どう説明しようか。
「それは……えっと……」
言葉が出て来なかった、皆んなが納得出来る言い訳……。
その時見かねた宇多が立ち上がり、「こっち」と伏見の腕を掴み部屋の外へと連れ出す。
「皆さんはここにいて下さい、ここでは明何か言いづらそうなので、取り敢えず私にだけは話してもらいますよ」
そう言いガチャっと扉を開け廊下に出る。
「ふぅ、これで2人っきりとはいえ、共同通路なので小声でお願いしますね。
じゃあ率直に聞きます、今の事は鬼化に関係する事なのでしょうか?」
「うん、そう正解だよ……」
そして僕は宇多に天城校長が妖だという事はバレない様に話を変え、これまでの経緯を説明した。
「そうですか……まぁそれでもやり様はありますよ」
——時間は戻る
「試合開始」と城内に響く合図。
【最初地形図作成は明以外の4人でやります、明はその間1人で兄さん達のいる1階まで降りて下さい。
それで兄さん達に爆発をさせない様に場を掻き乱して下さいね】
【でも……城内は迷宮化している、地形図も無しにそんなに早く降りれる自信は無いけど】
開始同時に地形図を作成する4人から出来るだけ離れた所まで移動する。
「この辺りなら皆んなの邪魔にはならないだろう」
スーッハァーっと深い深呼吸の後強く握った右手拳を振りかぶり、腕はどんな物でも破壊する強靭な鋼であるとイメージしながら、今立っている廊下に拳を叩きつける。
叩きつけた拳から放たれる衝撃波はパァァンっと鞭が空気を叩くかの様な大きな音とともに廊下を粉々に砕き割る。
【地形図なんて明には要りませんよ、ただ下に降りるだけなら廊下を壊して下に行くだけでいいんですから。
だからその符、使える様にしておいて下さいね】
理には適っているけど、宇多結構大胆な事考えるよなぁ……。
さて3階には来れた、次は少し離れた場所に移動して……この辺りでいいだろうか。
降りて来た場所から入り組んだ城内を50メートル程移動し、離れた場所でもう一度廊下に向けて拳を振りかぶる。
その頃宇多達地形図チーム
「えっ……どうして、そんなに早く」
地形図を作成しながら、探索呪術で城内の状況を確認している宇多の手が止まる。
「どうした宇多姫」
「なんでそんなに正確な場所まで……」
すると急に宇多はパンパンと強く自分の両頬をはたく。
「どうしたの宇多さん」
「すみません、うだうだしていた自分に喝を入れてました。
では今の現状を説明します、今2階で明が相手チームの誰かと接触しました」
「宇多相手は何人だ」
「1人です」
「分かったじゃあ、黒子が加勢してくる。
この中だったら1番足が速いのは黒子だ」
「……分かりました、それでは地形図を途中で良いのでここに広げて下さい」
宇多は未完成な地形図を確認し、ポイントを指で指しいく。
「良かった、明が廊下に穴を開けた場所までは出来ていますね。
黒子さん今私が指した場所が明が開けた下に行く為の穴があります。
そして2階のこの辺りで今戦っています」
「了解した! じゃ行ってくる」
強く廊下を踏み込み勢い良く飛び出した……瞬間に停止しこちらを振り向き遊馬に向かい
「宗方ー! イリヤに何かあったら承知しないからな!」
「へいへい、わーかったから早よ行けー」
黒子はそれを伝え、進行方向に向きを戻し、勢い良く飛び出して行く。
そして時間は数分巻き戻る。
パァァン! 3階に響く空気を叩くかの様な音、伏見は3階の廊下を砕き2階へと降りて行く。
「よし、後少し……」
すると背後からこちらに近く足跡……。
「ハハッすっげーうるせー」
そこには糸目で顔に染み付いたかの様な悪意を感じさせる笑顔、僕はこの男に1度会っている。
「久しぶりだね、明君? で良いんだよね……、ハハッそんなに睨まないでよ〜あっそうかまだ僕の事知らないんだもんね、僕は柏 蒼よろし……」
低い体勢のままステップを利かせ柏の腹部めがけブローを叩き込む。
柏が話しをしていて油断していた所にいきなり攻撃をする事は卑怯だと言われるだろうか……いや、これは戦いだどんな時でも常に気を張っていなければならない。
「ハハッ、いきなり攻撃するなんて危ないなー、まだ僕の話し終わってなかったよねぇ?」
伏見の攻撃は、間合い、スピード、角度は全て完璧の状態であった、油断していた相手なら致命傷を与えることのできる一撃であったのだが……その拳は柏にはかすりもしていなかった……。
「あそこから避けれるはずが……」
「無い? そうだよなぁ〜でも僕の眼には君がよーく見えているんだよね〜フッハハ、さてじゃあ僕も反撃してみようか」
柏はそう言うと両足に力を込め膝を落としスタンディングスタートの体勢をとる。
ドォンと地面を蹴る大きな音が鳴った瞬間だった、気づかなかった……いや速すぎて反応が出来なかったのだ、伏見が気づいた頃にはもう柏の右脚は伏見の左脇腹を蹴り飛ばしていた。
壁に叩きつけらる。
「——カッ……はぁ」
「あらあら、声も出せない感じ? ハハッ明君弱いね〜、じゃあトドメに今度はその顔面に打ち込んであげるね」
柏が脚を振りかぶった時、銀色に輝く刃が背後から柏に降りかかる。
「おっとあぶね〜」
「なっ今のを避けるか、なんと感が良いのだ」
僕の目の前に現われたのは小刀を両手に持ち、長い黒髪をなびかせ戦う黒子さんの姿であった。
「情けない姿だなぁ伏見、仕方ないから黒子が今から助太刀してやる」




