4話 勇者勇人の土下座
書けました!でも全然筆が進まない!
結局武器を弾き飛ばされて負けに終わったフリオとの模擬戦の後、いつもの通り、勇人は怪我を治療すべく医務室に足を運んでいた。
「今回は打撲が6ヶ所に擦り傷切り傷諸々の損傷、全て合わせて36ですか。さて、勇人様の治癒を行うのは今月に入って何十度目でしょうね?」
「90と8回です姫様。全く勇者という偉大な称号を背負っていながらこの体足らく。不覚にも、ミスカ泣きそうです」
「ーーーいつも治療して頂いて感謝しています後手間掛けさせてごめんなさい」
「あらあら、何故勇人様が謝るのですか?勇人様は勇者の名に相応しくなるために私達が治癒を施す側から怪我して来るのでしょう?いまさら私達の苦労をすぐさま徒労に替える程度の事を気にする必要はありませんよ」
「姫様の言う通りです勇人様。私達は勇人様の為に徒労を積み重ねているのですから、どうかこれからも心置きなく私達の苦労をどぶにお捨て下さいな」
「いやもう本当にゴメンナサイ......」
絵に描いた様な作り笑いで婉曲に責め立ててくる
セリアナとミスカの主従コンビに、勇人は言い訳も出来ず地に五体を投げ出していた。
ここ2ヶ月半の間、毎日王軍の精鋭の指導の下に戦う訓練を受けていた勇人だが、訓練とは言え戦っていれば当然、大なり小なり傷は負わざるを得ない。そして始まりは小さな傷でも数を重ねれば肉体の動きは阻害されざるを得ない。
その治療の為にエルディン王国随一の治癒魔法、医療技術の持ち主であるエルディン王国第一王女、セリアナ・ルカ・エルディンとその専属侍女、ミスカ・エミリス。そして彼女らを頂点に抱く治癒師団は日夜実益と訓練を兼ねた治癒、治療を行っていたのだがーーーーー
「反省を表明するのは自由ですが、勇人様も男の子の端くれであるなら一度口に出したのならば是非とも実行して頂きたいものです。私たちの治癒は確かに傷を治し癒やす行いですが、何度も重ねると効果が落ちてしまいます。それに表面上は治っても、身体が負った傷の痛みや治療で消費された体力は戻せないんですよ?」
「わたくしの治療も同じです。いえあの子たちには良い実習材料ですが、それにしたってこうも怪我ばかりされては食傷気味ですよ。貴重な部下が辞めてしまったらどう責任を取るおつもりですか?」
「......ミスカ、もう少し言葉を選びましょう。その言い方は勇人様に失礼です...」
「本当にすみません...」
一連の会話から察せる通り、勇人は本当なら施術後しばらくは大人しくしているべき治癒を受けて、施術完了早々に訓練に参加したり城下に出没する悪食鼠を退治してまた怪我を治癒されると言うサイクルをこの2ヶ月半ずっと続けていたのだ。
そんな無茶な真似を毎日毎日、体力の衰える様子も無く続けていられた事は勇者の称号に恥じないだろう。だがそんな無茶な真似に付き合わされる方からすれば堪ったものでなく、注意しても次の日にはまた同じ行動を繰り返す勇人へ心配とその心配を無碍にされる怒りが相俟った結果が現在のこれである。
(勇人様はバカです。私たちの為に戦うと言って下さった事は嬉しいですが、その為にあなたが傷ついては本末転倒なのですよ!)
(言葉は勇ましいですし実際に実現させようと行動する。その意志自体は尊いのですがーーー。自分を大切にしない人間がこうも腹立たしいとは知りませんでしたね)
セリアナとミスカの内心を知る筈を無く、勇人はただひたすらに地に頭を擦り付ける。
姫と侍女を前に頭を伏せる勇者。なんとも言い難いが、まぁ平和な風景であると言えよう。
しかし彼らは、この時はまだ知る事もなかった。
この平和な風景が、間もなく崩れ去る事を。
その予兆が、間近に迫っている事を。
何でもない日常回です。しかし勇人君が主人公っぽいのは何故だろう?主人公は未だ作中では名前すら出てないのに...(答:作者が行き当たりばったりに書いているから