プロローグー4
難産でした…ともあれ、どうにか無事に4日連続投稿できました。それではRed Rumをお楽しみ下さい
「初めに、我らの呼び声に応えて頂いたことに、国の代表として大いに感謝する」
少女が歓迎の言葉を告げてから10分後。謁見の間に連れて行かれた勇人に、飾り気のない玉座に座す王は開口一番勇人に向けて深く頭を下げた。その予想もしない反応に思わず勇人は凍り付きかけたが、どうにか謙遜らしき言葉を紡ぎ上げる。その言葉にどこか力が抜けたように肩を下ろした王に、勇人は会話のペースをとるために自己紹介と事情説明を要求した。
「あぁーーー。確かに我らの事情ばかり申し立てては勇者殿には我らが何を言っているかも分かる筈も無い……。では、改めて説明致すがーーーその前に、勇者殿のお名前をお教え願えないだろうか?」
「ーーー安脇勇人です。僕に出来る事であれば、力にならせて下さい」
その言葉になぜか目を潤ませた王は、手短かに名前と主だった臣下、そして勇人を連れてきた少女(なんと第一王女)を紹介すると、訥々と勇人を召喚した理由を説明し始めた。
「ーーーそれで勇人殿を召喚させて頂いた理由についてだが……今このマグノリアには、魔王という災厄の種が根付いている。存在の確証が取れた時期こそ未だ最近だが、各国の歴史を振り返ると奴らが暗躍していたであろう事件が度々起きている。
ここエルディン王国で例を挙げれのならば、隣国の王太子が婚約者ごと民間人に撃ち殺されたシリオン事件。ブラスト半島での領土争いが引き金となり始まった第一次マグノリア大戦。国の外れの魔法実験機関で開発されていた新型精錬炉の暴走爆発事件。間接的に関与した事件も入れれば18の事件や事故に魔王の関与が疑われている。
古の文献の記述が本当なら魔王には神々の加護を受けた者のみが攻撃を通す事が出来ないそうでな……。
真に勝手な事を言っている自覚はある。直接関係の無い勇人殿に、我らの我が儘を押し付けている事が情けなくて堪らない………。だがどうか、どうかーーーーーこの世界を救ってほしいーーーっ!」
最後の方は唇を噛み締めながら紡がれた王の懇願に、勇人は立ち竦む。
勇人は元の世界で多くの人を身分や立場の区別なく救ってきた自負がある。
だが、それはあくまで平和な故国だったからこそ出来た救い。
戦争や陰謀、暗殺と、血生臭い策が身近なこの世界では到底通用しない戦い方だ。
だから、勇人が選択するべき言葉は断り。自分には無理だと。戦いとは無縁な世界の住人には出来ないと説明する他ない。無い、筈なのに。なぜか、肝心の言葉が出てこない。
ふと、目の前で、未だ頭を下げ続けるアラド王の頭頂部を見る。恐らく年齢は四十路の中盤を越した辺り。自分の父親より若い筈の年齢なのに、その髪は所々に白いものが見える。玉座を握る手は肉が削げ、籠もる力の強さを示す様に血管が浮き出ている。
自分の手をみる。文献によると、魔王に通じるのは神の加護を得た者の力のみ。そして認識は薄いが、勇者として召喚された自分には神の加護がついている。
自分がやる必要は無いのかもしれない。平和な国から来た自分では大した事は出来ないかもしれない。だが………それがどうした?
自分は、彼らに求められて、魔王に通じる神の加護を受けて召喚された。彼らに助けてほしいと、この世界を救ってほしいと頭を下げられた。
彼らは助けを求めていて、自分は彼らに応える事が出来る。そして、自分は彼らの力に成りたいと。王族としてではない、ただの人間として頭を下げて懇願する彼らの助けに成りたいと思った。
ならばーーーーー
「ーーー最初に申し上げますと、僕は剣も魔法もない、戦いから縁遠い世界から来ました。なので、戦えと言われても戦力には成れないと思います」
「……」
「勇気が人一倍あるわけでも、誰よりも知恵が働く人間でもありません」
「………」
「正直、ついさっき会ったばかりのあなた達に、僕に神様の加護があると言われても、あまり実感が湧きません」
「…………」
「でも僕は、あなた達と言葉を交わしました」
「…………?」
「世界の為に戦う勇気なんて持てません。ーーーだから、僕はあなた達の為に戦います」
「っ!?」
「僕はあなた達に呼ばれて、あなた達に助けてほしいと頼まれました。だから僕は、世界の為の勇者でなく、この国の、あなた達の勇者になります」
「…………勇人、殿……」
「ーーーお願いします?僕に、あなた達を救わせて下さい」
非力な身を弁えず、全力を以て彼らを救おう。
対する返答は、なかった。ただ皆、アラド王も、セリアナ姫も、佇む臣下達も、その身の内からとめどなく込み上げる涙を必死に堪えていた。
彼らには、自分たちが許されない事をした自覚があった。
異なる世界に住まう若者からその生活を奪って、自分たちの世界の安寧の為に生還出来るかも分からない脅威に立ち向かわせる。そんな非道を課した自分たちを、目の前の少年は救おうと言った。世界の為でなく、自分たちの為に戦おうと言ってくれた。
ならば自分たちもこの少年の言葉に応えよう。この罪深き自分たちの身命を尽くして、彼の言葉に報いよう。
最早、彼らの抱く意志は一つに固まった。
この少年を、必ず彼の世界に無事に返す。
かつて最も気高く尊いと讃えられた国は、少年の言葉に応え今再び復活の狼煙を掲げた。
如何だったでしょう?
今話に出てきたエルディン王国は王族含め国民全員が聖人レベルに気高い(誇り高いのではなく生き方が尊いという意味)稀有な国です。そんな生き方をしていた性で過去の大戦でとばっちりを食らい国土と誇りを奪われた過去があります(今作った設定)。
その辺りの人物設定含む細かい設定はどこか適当なタイミングで投稿させて頂きます。では、次話をお楽しみに~