プロローグー3
連投3日目です。いや~、やれば出来るものですね。このままプロローグが終わるまで連投し続けられれば良いな♪と思います
眼前に眩い光が溢れたその瞬間。
選ばれた少年、安脇 勇人の人生はその色合いを変えたーーーーー。
財閥や名家の子息子女から一般家庭の子供まで幅広い階級の子供が通う私立校、私立岳ヶ峰学園。安脇 勇人は幼稚園の頃からこのマンモス学園に通っていた。
幼い頃から勉学にも運動にも高い才能を示し、整った顔立ちと血統が保証された家に生まれていた勇人は、自然と場の中心になる様な雰囲気もあって常に周囲には人が絶えなかった。
どんな争いでも彼が出れば瞬く間に解決し、難題が起きても彼の一声で全てが解決する。男性はその姿に嫉妬よりも先に憧憬を覚え、女性は誰もが彼の隣に立つ事を夢見ていた。
楽しい仲間、可愛い恋人、寄り添いあえる家族を持ち、下級生、同級生は愚か上級生や教師陣にまで頼られる彼は、傍目から見れば理想の青春を送っていた。だが、彼自身はそうは思っていなかった。
年齢関係なく誰にでも頼られる完璧超人。何気ない人助けから始まったその呼び名に、幼い頃の勇人は喜んでいる事ができた。褒められる事。認められる事が嬉しくて、更に人助けをしていった。
重い荷物を背負う老婆の重荷を肩代わりし、迷子の親を探し、宝物をなくして泣く少女に代わり宝物を見つけた。イジメに苦しむ同級生に抗う術を教え、詐欺に引っかかり荒れる家の為に証拠を集め警察に提出し、連れ合いの浮気に悩む人妻に夫を振り向かせた。学校行事では率先してクラスを牽引し、事件が起これば仲間の手を借りて如何なる難事件も解決に導く。
そんな事を繰り返していって、気が付いた時にはもう取り返しのつかない場所まで来ていた。
触れ合う誰もが彼に憧れ崇め、会話を交わす内にいつの間にか勝手なレッテルを貼り付けられては自身の関係ない場所で誰かの“安脇 勇人”が大きくなっていく。誤解と叫んでも1人の言葉はより多くの人の否定に潰されて、本当の安脇勇人は大多数の意見の前に虚しく消える。足掻いて、抗って、否定して、何度もそれを繰り返していく内に勇人自身も本当の自分を見失い始め、高等部に進学した頃には、安脇 勇人は大多数が無責任な想像で作り上げた“安脇 勇人”になっていた。
そして、誰かの理想のままに動く人形の日々を送り始めた頃。彼は大世界マグノリアの神々に、『勇者』に選ばれた。
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眩い光に包まれたかと思った瞬間、勇人の周りの世界が急速に色を失っていく。腕を組んでいる幼なじみの笑顔が、校門の前で清楚に微笑む生徒会長の艶姿が、シャツの裾を摘まみ不満気に頬を膨らませる義妹の瞳が、奇妙に遠くなっていく。
頭頂部とつま先の両端から引っ張られる様な感覚が頂点に達したその時、安脇勇人は人生初の異世界転移を果たした。
気が付くと、勇人は見覚えの無い人々に囲まれた古城の広間にいた。囲む人々は勇人を見て隣に立つ誰かと囁きを交わし、猜疑に支配されていた雰囲気は一転して驚愕と賞賛の色を帯びる。そんな浮ついた雰囲気の中、困惑する勇人へ1人の女性が歩み寄る。
「この日をーーー貴方が来るこの日を、もどかしい思いで待ち続けていました……。ようこそ、大世界マグノリアへお出で下さいました。ーーー私の…勇者さま……」
瑠璃色の輝きを宿す瞳を潤ませて、少女は歓迎の言の葉を紡いだ。
如何だったでしょう?次話も今のところは勇者回の予定です。夢から始まった今作、どうか皆様も読んで先達さま方の万分の一でも楽しんで頂ければ幸いです。