13話 密談の果て、運命の序曲
たいっへん、遅れましてどうも申し訳ありません!月猫ネムリです。
ネタも発想も主人公登場に上手く繋げられるものが浮かばなくて…………。
閑話休題、またもや新キャラ登場します13話、面白く読んで頂ければ嬉しいです。
「困りましたねぇ~」
フォーリナ城塞の一角で、『見者』ネビリスは思わずといった体で聞こえよがしに溜め息を吐いた。
「ーーーーー」
「困りましたねぇ~~」
「ーーーーーーー」
「困りましたねぇ~~~」
その如何にも面倒事の匂いを色濃く漂わせる言葉に、ネビリスの目の前に座る男は初めこそ無視を突き通していたが、こちらの無視もお構いなしに続く溜め息に、こちらが応えねば何時までも続くだろうと遂に無視を諦めた。
「ーーーーー如何しましたか?ネビリス様」
皮肉のつもりでわざわざ敬称を強調する男。だが当然歯牙にも掛けられず、
「あぁ、お聞きになって頂けるのですか?カーナシオン将軍」
アーリオ・エルス人王国の誇る最大戦力の一人、『樹将』カーナシオン・グレイトバルドはあっさりと老女の愚痴に巻き込まれるのだった。
ーーーーーーーーーー
「ーーーーーそれで?結局この人王国を牽引するネビリス様が、たかが異界の若造如きに何をそうお困りなのですか?」
ネビリスの愚痴を聞き終わったカーナシオンの最初の発言がこれである。仮にも愚痴を言っている相手。それも自分が所属している国家の実質頂点に言う台詞ではないが、ネビリスはさらりと受け流す。
「えぇ、先程も言った通り、どうすれば彼らを魔王に立ち向かわせる事が出来るのか、について困っているのです」
「まぁ…。全員が単騎としてならば兎も角、軍団として運用するには癖と得意分野の偏りが強過ぎますからな……」
精一杯の意趣返しを受け流された事は不愉快なものの、ネビリスの悩みの総括にカーナシオンは1人の軍人として見解を添える。
「ーーー此方の目からはエルディンの勇者は如何せん加護も性格も戦闘向けではなく、ライドスの勇者は自身の功を喧伝する気配が強く、イズモの勇者は放埒で周囲との摩擦が懸念される。まぁそれでもエルディンのとライドスのはまだマシな部類だし、イズモのは姫御子がいればどうにか制御は出来る、と見えました。だがーーーーー我が国の勇者はどうにもダメです。あれだけは連携に不向きが過ぎる」
人王国が誇る最大戦力の人物評にしばらく考え込むネビリス。そして顔を上げたネビリスは、柔和な老女の顔を1人の為政者の顔に変えてカーナシオンに問い掛けた。
「そうですか……。ではカーナシオン将軍。人王国三権人として問います。貴方ならば、如何して彼の勇者たちを魔王との戦いに立ち向かわせますか?」
『為政者』の問に、カーナシオンもまた、1人の『軍人』としての最適解で応えた。
「古来より、人が輝きを発するのは命が賭される場所と相場が決まっています。只の人でさえも戦場でその真価を発揮するならば、勇者がその例に外れる事は有りますまい」
そこで一旦言葉を切る。予定されるネビリスの言葉を待つ。
「つまりは、連携せざるを得ない場所に。そうせねば生き残れない場所に放り込む、と?しかしその様な場所が何処にあるのですか?」
どこに勇者を放り込むか予想が付いたのかうっすらと笑みを浮かべる老女に、軍人は端的な解を示した。
「我らが敵。その懐であれば、勇者も足掻かざるを得ないでしょう……」
かくして本人らの意志の外で勇者の運命は決定された。約束された戦は、もう、目の前に………………
今回登場した新キャラについては、また一段落したら新しく設定を上げておきます。
明日こそはもっと早めに上げておきたいです。