12話 勇者の合同演習
すみません、媒体の動作不良で途中まで書いてたデータが吹っ飛んで1から書き直してました。
ほぼヤケクソで書きましたが、お待たせした分文章量は多いです
それは、圧倒的な光景だった。
キュアアアアッ!?
耳障りな断末魔を森間に響かせて、翁の顔を乗せた怪鳥が墜落する。
「う~っしこいつで10羽目ぇっ!まだまだ殺すぜぇ?って事でとっとと墜ちろや、『黒天井』!」
カラカラと小気味良さ気な笑い声をあげながら、田部陽太が秤の女神ユルティアの加護『重両天秤』で纏めて十数羽の怪鳥を押し潰す。その姿に思わず不知火浅黄は感嘆の吐息を漏らしてしまう。が、
「うわ~。凄いねあれ」
「……確かに、小翁歪鳥をあぁも簡単に叩き伏せる様は見応えがありますね。けどアサギ。それを言い出せばアナタだって相当なものだと思いますよ?」
「えぇっ!?ちょっ、ヒメコ様ってば冗談キツいですよぉ~」
呆れた様なヒメコの言葉に心外だと訴えながら、浅黄は丁度眼前に躍り出た金光りする溝鼠を繊指で切り捨てる。
「ほら、普通は鉄鼠を手刀で斬るなんて無理よ?そもそも量産品なら刃が通らない程硬いんだもの」
「ぅえぇ~んっ」
「泣かないの。敵はまだまだ来てるわよ?」
「ぅえぇ~んっ、ヒメコ様の鬼ぃ~っ!」
押し寄せる魔物を苦もなく処理しながらイズモ日ノ国の主従は漫才を交わす。と、
ズッーーーーーーーーーッドンッッッッッ!
天地をつんざく様な異音が響いた後、それを追う様に地が大きく震えた。経験が足りない随行の兵力は、哀れに感じる程に慌てふためく。そんな彼らの動揺を尻目に、各国の勇者とその随行人たちは発生源に目を向け、原因を悟ると同時に一様に額を抑えて天を仰いだ。
((((((ああ、またか……))))))
この合同演習が開始されてから何回も共有する事になった感想を、またも浮かべながら…………
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カサカサと音を立てて、黒に染め上げられた森の隙間を魔物の群れが疾る。
鋼の如き硬度の前歯と皮革を持つ鉄鼠、鋭い切れ味の角が特徴の双剣鹿、食欲に支配された狂熊、貪食熊に、体躯に匹敵する毒針を備えた双針毒蜂、様々な状態異常を引き起こす鱗粉を持つ異常蝶々。どれも単体であれ群体であれ、通常ならば複数人で相手取る事が推奨されている魔物であるが、今この時だけは彼らは本能に刻まれた人間への絶対的敵意に逆らって、自己の生存の為に逃走していた。
「はぁ~っ、雑魚共が無駄な努力しやがってお疲れさん。それじゃーーーーー死ね」
彼らの遥か背後に佇んでいた長仁が吐き捨てる。瞬間、森に赤雷が疾った。
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結果から述べると、勇者たちの連携を主目的としたこの合同演習は、過去の例に漏れず失敗に終わった。
「勇者殿…。前々から申し上げていますが、これは連携を向上させる為の演習なのですよ?」
拠点にしている要塞に戻って間もなく、原因である長仁を呼び出していつもの様に窘めるネビリス。だが、当然長仁には堪えた様子がない。
投げ掛けられる言葉に適当な返答を返し、説教が終わると同時に長仁は自身に割り当てられた部屋に引っ込んだ。
「ふぅーーー。長仁殿も加護の使い方は熟れているのですから、連携を取らせれば更なる戦果が期待出来るのですが……。まぁそれはともかく、皆様は今回の合同演習でどの様な感想を抱かれましたか?」
奔放過ぎる自国の勇者の扱いに苦慮しながら、溜め息を吐いたネビリスは、一転気を取り直してまだ列席していた他の勇者たちに話を振った。
「んじゃあ先ずは俺の感想から言わせてもらうと、思ったよりは悪くねぇな。勇者だけでも近中遠の各距離に対応した人員に回復要員。継戦能力こそ欠けてはいるが、その辺りはこれからでもどうだってなる範囲だ。アサギが前衛で斬りまくって、江崎が雷で援護して討ち漏らしをカバーして俺が纏めて殲滅。んで安脇が頃合いを見て回復、って流れが作れりゃ最高じゃねぇの?」
「あ、それあたしも賛成~」
「確かにハマれば強そうですけど……。僕の加護はそこまで使い易くは無い、です…」
田部陽太の意見を皮切りに勇者たちの意見を吟味するネビリスは、結局この日は休息を選択。翌日より各自の弱点を補う為の鍛錬を行う事を周知させ、この日の演習は終わった。
その後も合同演習は個々人の弱点を補うものが中心となり、二週間に及ぶ演習は結局勇者たちの連携を高める事は出来なかった………………
如何だったでしょうか?
今後の参考の為にもぜひ感想で良かった所、悪かった所を指摘して頂ければ嬉しいです。