プロローグー1
こんにちは、月猫です。夢で思いついたので衝動的に書いてしまいました。あくまで自己満足的なものですが楽しんでいただければ幸いです。
ある所に男がいた。十人並みの容姿を持ち、人並みに友人を作り、ままならない世界に愚痴を吐きながら、それでも何の変哲もない日々を懸命に生きる。そんな何処にでも居るような、いたって平凡な男だった。
男は平凡であるが故に、自身の内に抱える異常性に苦悩していた。解放することは愚行に他ならず、必死に押し殺そうとすれば精神の何処かが軋み鳴く。どちらを選ぼうとも男にもたらされる結果は大差はない。だがーーーーー
ーーーーーーもし男が良識を、せめて他人の半分程度しか持っていなければ。きっと男の異常性は容易く外界に零れ出て、男をその衝動のままに動かす本能の奴隷に変えていただろう。それは決して男の望む事では無かっただろう。だが、少なくとも男をこうも苦しめる事は無かった筈だ。だが男は人並みの。否、寧ろ人並み以上の良識と自制心を持ち合わせてしまっていた。
かくして男は自身の内に蠢く異常性から必死に目を逸らしながら、表面上は必死に“普通”の“常識的”な人間を演じていた。
ーーーだからだろうか?突然現れた鬼面の騎士を前にした彼の心中は、ただひたすらに穏やかだった。
これでようやく終われる。自身と周囲とが乖離し続けるこの苦界に、ようやく別れを告げる事ができる。その一心で、男は不動のまま己に訪れる救済を待ち続けた。
眼前で逃げる様子もなく安らかな表情を浮かべる男に、鬼面の騎士は思わず立ち竦む。これまで騎士は、戦場であろうと主の見ている前であろうと“主の敵”と見なした者は場所も身分も年齢も問わず斬り捨ててきた。その数はもはや数える労力が惜しくなる程に膨大で、その度の過ぎた忠誠心と容赦の無さから騎士は主の側近にまで取り立てられた。
だがその騎士をして、目の前の男のように死を前に安らいだ表情を浮かべた“敵”はこれまで見たことが無かった。
男の身体はそれなりに鍛えられてこそすれ到底戦う者の身体ではなく、かと言って何か逆転の秘策でもある様にも見えず、只々安らかな表情で立ち尽くすのみで何を考えているのかも分からない。
これまで遭遇した事の無い相手に騎士は困り果てる。悩む。悩む。悩む。そしてそう長い時間も経たない内に悩み疲れた騎士は、ふと同じ主に仕える同僚の愚痴を思い出しーーー男に向けてその黒剣を振るった。
如何だったでしょうか?プロローグはあと3,4話程で終わらせる予定ですが、あらすじをそのまんまなぞっていくのであまりどんでん返しはありません。それではまた次回に