第5話 日常⑤
話しが変わったおかげでなんとか殺気がなくなったかな?
真の兄竜が来て練習会もより実践的な実技指導となっていた。
「今日は、軽擦法の再確認をしていきます。では、真。軽察法とは?」
「簡単に言えば、基本の技の一つでさすること。施術を行う時に、必ず最初と最後には入れた方が良いとされるものです。」
「はい。では、なぜ最初と最後に入れた方が良いのか覚えているか?」
「え~と…。そうやって教科書に書いてあったから?」
「真~。座学は良いのになんで実技が絡むとそんなにアバウトな理解になるんだよ。桜ならわかるだろ?教えてあげてくれ。」
「はい。基本的には、運動する前にも行う準備運動やクールダウンと一緒だね。急に身体を動かせば無駄なケガを起しやすくなってしまうからです。」
「それだと、少し不十分だね。一応補足させてもらうけど、後にも軽擦法はクールダウンの意味もあるけど、他にも痛みの緩和に効果的なんだよ。」
「「「へ~」」」
「こらっ!愛梨!お前は、鍼灸師だろうが。前揉捏と後揉捏で説明してもらってるはずだろう。」
「あれ?そうでしたっけ?習ったような習ってないような~?」
「ん?習ってない?んなわけあるか~!よし、愛梨が習ってないって言うなら先生に確認して来よう。」
「ごめんなさい。たぶん私が忘れてるだけです。」
「たぶん?よし、確認に行こう。」
「あ~。私が忘れてるだけですから、先生には確認しにいかないで~。」
「ならよし!最初から素直に忘れてしまったって認めれば良いのに…」
「すみません。」
色々、専門用語が出てきてしまったので少しだけ解説です。軽擦法とは、真も言っていたように【さする】ことを言います。なぜ擦ると言わないのか…これは、後々出てきますが強擦法という手技があります。これが、強く擦るのではなく軽擦法と揉捏法というものを合わせたような手技なのですが、少しずつ解説していきます。なので、今回は軽擦法=軽く擦することで、強擦法=強く擦るではないとだけ覚えておきましょう。
「兄貴。そのくらいにしてあげろよ~。愛梨も反省しているみたいだし…」
「そしたら、とりあえず俺が見本でやるから桜受けてくれるか?」
「はい。わかりました。竜先輩よろしくお願いします。」
竜は丁寧に桜の背中をさすっていく。さらに右腕の方まで擦ってやめた。
「ほい。これで、桜左右の腕を動かしてみてくれ。」
「あれ?少し擦ってもらっただけなのに、右腕だけ動かしやすい。」
「さっき、軽擦法の説明が不十分って言ったけど、その理由はこの効果のことが抜けていたのもあるんだよ。軽擦法は、簡単な手技として初めに習うし簡単な処置と思われがちだけど、一番奥深さを持っている手技でもあってただ擦っただけで症状が緩和してしまうものも結構あるんだよ。」
「兄貴のこの手技は、今の先生から習ったんだっけ?ホント何回見てもスゴイと思うよ。」
「たまたま、運良く先生の弟子になれただけだから、出会いには感謝しないとね。」
(擦るだけなのに身体が軽くなったように桜が感じているが、肩こりや身体の硬い人を擦っただけで治してしまう人が存在する。私もその手技を見た時には、とても魔法使いかと思う位に吃驚しました。)
1話が長くなってしまったのでさらに連投します。