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第1章 7話 「亀裂」

ー食堂ー



食堂にいたクラスメイトは少なかった

もう大半が食事を終えて部屋に戻ったのだろう


俺と木村はカウンターに向かい

すいませんと声をかけた


結果、出て来たのは木村ご所望のステーキだった


いやそれよりも…


「おや!? 長峰君、目を覚ましましたか

良かったですねぇ」


フライパン片手に厨房から声を掛けられた


「カールさん!?

え?カールさんが料理作ってるんですか?」


「チッチッチ!

カール先生と呼んで下さい

あなたが寝てる間にそう決まったんです」


木村を見るとそうだっけと首を傾げている


「ここの料理長は料理がド下手でねぇ

正直とても食えた物では無いので

私が来てから手が空いた時は作る様にしてるんです」


カール先生の後ろでビクッとコック帽を被ったおっさんが肩を震わせた


カール先生は肌の色を除けば眼鏡のせいか理知的で温和なイメージだったのだが

見た目通りというか種族通りと言うかやはり恐ろしい人?だったみたいだ




ステーキ、パン、スープ、サラダが盆に乗せられ

木村と向かい合う様に座った


何の肉か気になったが、空腹のあまりお互い無言で口に運ぶ


「う、うまっ

何の肉!?コレ ヤバイ!!」


確かに美味しい

食感は豚肉よりもっと柔らかく口に入れると直ぐにとろけた


欲を言えばパンよりライスが欲しかったが

それは贅沢というものだろう



無我夢中で食べていると、背後に視線を感じる

同時に木村がパンを口から吹き出した

目線は俺の背後で止まっている


恐る恐る振り向くと厨房からカール先生が上半身を乗り出して笑顔でこちらを伺っていた


「な、ななな何です、か?」


「美味しいですか?」


「えっ?」


「美味しいですか?」


「は、はいぃ!」


それは良かったと言って

カール先生は上半身を厨房に引っ込めた



……もし「YES」と答えなかったらどうなっていた?


ぶるりと身震いをして残さず2人とも食べた


途中、木村のスープから黒いトカゲがそのまま丸々一匹出てきて

木村は涙目になって停止していたが

黒トカゲとお残しを天秤に掛けた結果

残す勇気は無かった様で

感情を殺して咀嚼していた


ざまぁみろ

さっきのバチが当たったんだ


その後俺達は食器を片付け部屋に戻った




部屋に帰ると、入り口から野間の声が聞こえる

「ああ”?」


中を覗くと

黒原と野間が立って向き合っている

あまり良い雰囲気では無い様だ


こういう時木村は頼もしい


ズカズカと部屋に入り

「えっ?何2人ともどうしたの?」と声を掛ける


黒原が向きを木村に向けた

「木村、おまえこのままあいつらの言いなりになんのかよ」


「えっ?」と言いかけたが

野間が先に答える

「黒原!てめぇ話は終わってねぇぞ!

もう一辺同じ事言ってみろや!!」


「何度でも言ってやるよ!

ビビって誘拐犯に尻尾振りやがって

情けねー!って言ったんだよ!!」

その言葉が言い終わるか終わらないかで

野間が黒原に殴りかかった


しかし野間の大振りは当たらない

それどころか黒原は野間の腕を慣れた手つきで取ると

素早く野間の懐に潜り込み

背面を野間に向けその勢いそのままに腰を入れ

思いっきり”投げた”


「ぐっ」野間は背中を強かに床に強打し

動けなくなっていたが

構わずに黒原は野間の袖と襟を掴み締め

野間の動きを封じる


体育の授業で前に見た技だ

柔道の背負い投げに袈裟固め

黒原は柔道部だったか?

いやそんな記憶はない

何処か学校では無い場所で覚えたのだろう


慌てて木村が止めに入る

「おい!何やってんだよ!

こんなトコで喧嘩かよ!

2人共本当何やってんだよ!!」


黒原に袈裟固めを決められた野間は

「離せ!!クソ野郎!!

てめぇぜってぇぶっ殺すからな!!

くろはらぁぁあ!!」

と殺意を露わにしている



5分は経っただろうか…


黒原は暫く無言で寝技を掛けていたが

木村に説得され、技を解く事にしたらしい


しかし


技を緩めた瞬間

野間が黒原を跳ね飛ばし

野間の足が黒原の顔面を捕らえ蹴り飛ばした

黒原は後ろに思いっきり仰け反る


更に野間が追撃とばかりに

「死ねオラァ!!」と吠え

右拳で黒原の顔面を狙った


その時とっさの事で

深く考えた行動では無かった

それどころか俺は呆れて

この2人にあまり関わりたく無かったハズだった



ただ現実は野間の腕を俺が掴んでた



野間がゆっくりと顔を向け目を細めた

耳に大きく付いている拡張器が目に付く

「あ?」


「……ごめん」

俺は一体何をやってるんだ?

直ぐに野間から手を離した


「ッチ!………」


水を差されたせいだろうか

野間は黒原をもう殴る事は無かった


部屋の扉の近くに立っていた俺は

野間に「どけ!」と押され

その場所を野間が通り過ぎ部屋を出て行った



暫く皆その場を動けなかったが

黒原はフンと鼻を鳴らすと

「おまえらもあいつと同じで

ここの誘拐犯共にペコペコしてんだろ

逃げる気なんて全く無いって顔してやがる

……冗談じゃないぞ」


そう吐き捨てると黒原も同様に部屋の外へ飛び出していった



………はぁ


何だか疲れた


木村「初日からこれかよ

どうなるんだよ俺ら」


「どうなるんだろうね……」


「………はぁやだやだ

もう寝るわ俺!」


「あ、あの!」


ん?部屋の隅から声がした


良く見ると溝尾が居たようだ


「その僕、2人が怖くて……ごめんなさい」


俺と木村はお互い目を合わせた

俺らが怖い?


あ、いや違う

野間と黒原の事か

木村も理解した様だ


「なんで?謝らなくたっていいじゃん別に」


「ぼ、僕も……止めようと思った……んだけど」


「うん?」


「………怖かったから」


「あーー、そんな気にする事ないぜ

俺はほら、……なんてゆうか

あんま後先考えないからさ

わかんねーけど、溝尾が普通なんじゃないの?」


「そうそう、木村はお人好しだからね」



「……なんか、馬鹿にされてる気がする」


「でも……長峰君だって……すごいと思う」


「あぁ、アレは俺も驚いた

長峰って人の喧嘩とか我関せずのタイプじゃなかったっけ」


「……なんか馬鹿にされてる気がするけど

……まぁ、確かにね、 なんでだろう?

条件反射…… だったのかな……」


「…とにかく 止めてくれてありがとうございます」


俺と木村は首を振ると

自分のベッドに座った



……5人1組

連携力を高めるって言ってたっけ?

大丈夫かな俺達


横になり

黒原の事を思い出す


黒原もそのうち気づく

ここがどういう世界で

どういう場所なのか



きっともう元の世界には戻れない

そんな気がする



クラスメイト達の事を気づかい方法は不明と言ったんだろうと思った



家の父さんや母さんの顔が浮かんだ

喧嘩してばっかりの親だった


次に妹の美香の顔

小さい頃はにいちゃん、にいちゃんて

良く俺に付いて来てたな



最後に生まれてからずっと一緒に居た

猫のマコ


冬は布団に入って来てくれたんだったっけ

それに

親が夫婦喧嘩してて俺が辛い時、何故かいつも側に居てくれてた



マコ…



もう会えないのかな





声を殺し、少しだけ泣いた

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