第1章 5話 「法術」
自分達は等間隔に並び
カールさんを前にして利き手を前に出していた
カールさんの指示通りの体勢だ
「イメージしましょう
木村君、野間君は手の先で燃える赤い炎を
溝尾君は手から溢れここ一帯を飲み込む大海を
長峰さんは手から放たれ逆巻き全てを吹き飛ばす大竜巻を……」
俺は何と無く目を閉じて
言われた様にイメージして見る事にした
何も起こる気配は無い
………暫くその体勢のままイメージしていると
背後に気配を感じて振り返ろうとしたが
「そのままで」
と制止された
俺の肩にカールさんが手を置いたかと思った瞬間
心臓から急激に血が利き手に流れた感覚がした
目を開き
何が起こっているのか確認すると
手の輪郭が仄かに緑色に発光している
しかしそれにしても体勢を保つのがキツイ
手の先に体力が全部持っていかれてしまったみたいだ
足や手が勝手に震える
脳が揺れて世界が回る
倒れそうだ
むしろ倒れたい
「イメージを崩さずに」
背後からそう声をかけられ
片目をつぶりながら歯を食いしばり
なんとか手の先に意識を集中する
「今、放ちなさい」
一気に手から竜巻を放出するイメージを行う
すると手から緑の発光が消え
掌の先に集まったかと思うと
もの凄い勢いの竜巻が現れた!
……違う コレは竜巻ではない
そよ風がサッと腕を撫でただけだった
「……ッハァッ! ハァッ!!」
その場に背後から倒れた
……なんだコレ
マラソン大会完走直後でもここまでは疲れないだろう
気持ちが悪い
暫く何も考えられなさそうだ
肩で息をして少しすると
体の変化に気づいた
右腕が暖かい
何か血管を流れた感覚が残っている
これが魔力的なモノの通り道なんだろうか?
……今はどうでもいい
少し休もう
疲れすぎている
ボーッとしながら床に顔を当て
横を眺めた
木村が片膝をついて食いしばっているのが見える
やはり相当疲れてる様で
今にも倒れそうだ
その先に野間がいる
後ろに両手を突き
何とか倒れまいとしている
……吐いた後があった
溝尾は…………!?
まだ法術を使ってないのか
それとも使えなかったのか
まるで何事も無かったかの様に
不思議そうにこちらの様子を眺めていた
「……少し休憩致しましょうか
勿論その後また再開しますがね」
カールさんの声が聞こえた所で意識が途切れた