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第1章 56話 「雷光一閃」

31日

戦争開始まで残り1:15:00




ゥン  ブゥン  ブゥン  ブゥン





ブゥン  ブゥン  ブゥン  ブゥン




……………? こっちは死んだって言うのに

五月蝿いな、何の音だ?


何かの駆動音の様な物が聞こえる


俺が面倒くさそうに身体に視線を移すと

緑色の光が俺の身体を走っているのが見えた


……何だ?コレ?


!?

ガバッと上体を起こす


身体じゃない!

ローブから緑色の光が出ている!?


ブゥン ブゥン ブゥン


駆動音と共に胸から緑光がローブに流れる

緑光はローブに複雑な幾何学模様を描くと端まで走って消えた


……胸?

慌てて自分の胸を見る

しかし漏れ出ている緑光が眩しくて確認出来ない

次に手を出して恐る恐る胸を触ってみた



……トクン トクン トクン トクン


手はローブ越しに肌に当たり

鼓動の振動が手に伝わってくる


死んで無い……

生きてる、俺はまだ生きてるんだ


俺は心臓の音が嬉しくて愛おしくて

そのまま暫く手を胸に当てていた




そして、手を胸から離して立ち上がる

……司教を倒さなければ


そうだ、光の槍は解決した

胸にもう光る印も見えない

しかし、司教はまだ無事だ

あいつを倒さなければ木村と野間が危ない


光の槍から逃れる為随分司教から離れてしまった

早く戻らないと


パンサーを掴んで再び夜の森を走る

緑光と駆動音を身に纏い



走りながら長峰は思考を巡らせる

このローブの幾何学模様は見た覚えがある

ギルドで女性が身に付けていた服

そう、アレと良く似ている


俺のステータスを調べる時

あの服は法術を行使する為の補助の様な役割があったと予想できる

このローブも同じなのではないだろうか?


今も尚、淡く光る緑光がまさかただのイルミネーションということは考え難い

何らかの役割がある筈だ


推測になってしまうが

俺が予想しているローブの効果は2つ

「ローブに当たった法術の魔力還元」

そして「還元した魔力で着用者の魔力増幅」


恐らく大間違いって事は無いだろう

一つ目の予想は、敵の法術を受けて幾何学模様の回路が起動した事から見ても正解だと思う


そして、もし二つ目の予想が正しければ

……今なら俺にも法術が使えるかも知れない


ヤナと同レベルの風法術までは望まない

せめて半分か最悪4分の1

それがあればあの司教にも俺の突きが届く


この速度で走れば司教の場所まで3分かからない

出来ればあいつが移動する前に捕捉したい

開戦まで時間も余り無い筈



全速力で森を駆ける長峰の目に、徐々に獣道が姿を見せ始めた

速度を落として茂みに隠れる


息を殺して様子を伺うと司教の姿を捉えた


よし、見つけた

移動はしなかったみたいだな

ん?剣を構えている?


司教は何かと対峙している様だ

司教の目線を追う

目線の先に居たのは木村だった


木村……加勢に来てくれたのか


……しかし、何だか様子がおかしい


木村は空気に向かって剣を振っていた


幻覚か?

対する司教はジリジリと木村に距離を詰めている


……このままだと木村が危ない

法術は相手の虚を突いて使おうと思っていたのだが……迷ってる暇は無いな


パンサーを持ち替え、茂みの中で右手を司教に向ける


もし、そよ風が出たら最悪だ

頼むぞ、少し位マシな風を出してくれよ


右手に魔力を集中させた


同時にローブの光が流れを変化させ

右手に向かって集まってくる


これは……凄い!


ローブの袖から巨大な魔力の輪が出現し

右手の直ぐ横で回転している

右手が淡い緑光を帯びて魔力輪との隙間にバチバチと電気が発生している


司教がこちらに顔を向けた

気づかれた!なら仕方ない!


茂みから立ち上がり司教に向かって走る

勿論右手は向けたまま


司教が剣を構えて迎撃態勢を取る


俺は走って司教との距離10mまで詰めながら右手の魔力を解放する様にイメージした


「あんたの魔力、お返しさせてもらう!」


右手の魔力輪は掌に吸い込まれ

風……は発生しなかった

代わりに爆音を轟かせ稲妻が出現する

稲妻は空気を切り裂いて司教に襲いかかった


その稲妻は刹那の間で司教へ到達したが

稲妻は司教に当たらず剣にぶつかって電撃を撒き散らす

1秒か2秒、夜の森に光を与えながら稲妻は剣と鍔迫り合いをした後、緑光の霧になって散った


稲妻が出るとは想像していなかった

残念ながら今ので魔力を出し切ったらしく

緑光は収まってしまったが

このローブの幾何学模様はただの魔力増幅器では無いらしい

正直かなり驚いた


しかし、あの稲妻を受けて尚、司教は生きていた

剣が避雷針の役割を果たしたのだろう

敵は革のガントレットを装備していた、それが絶縁体になって通電を防いだと考えられる

運がいいな


司教は稲妻を受けグニャリと歪曲した剣を投げ捨てると苦々しい表情をこちらに向けた

今敵に武器は無い、この好機は逃さない

もう目の前に司教の姿があった


走りながらパンサーで突く

しかし司教は右手に素早く躱して回避した

躱した体勢を利用して俺の顔面に右ストレートが放たれる

パンサーを引きながら俺も右に転がりストレートを躱した

素早く立ち上がりバックステップで槍のレンジに自分を置く

もう驚かない、この敵ならこれ位はやってのけるだろう

ならばアレの出番だ


ぶっつけ本番になってしまうが繋げるしかない

パンサーを右に広げて払いながら距離を詰める

司教は背後に跳び払いの軌道から身体を遠ざける


ここだ!

足を踏みしめ腰を捻転させ突きに移行する

未完成の払いから突きへの混成接続技


パンサーが勢い良くしなり穂先を残像させながら司教に向かって飛び込む

穂先は司教の右肩を深々と貫いた


右肩!

胸を狙ったつもりがやはり制御出来てない

動揺と不完全な技の代償にパンサーを引く手が少し遅れ

穂先が司教の右肩を離れた所でピタリと止まる

柄を左手で掴まれていた


しまっ……

「聞け、槍兵」

パンサーを司教の手から引き抜こうとして声を掛けられた

声を聴いてつい手が止まってしまう


敵の策だ、聴いてはいけない!

パンサーを引く力を再度込めようとする

「案ずるな、罠ではない

……戦いは私の負けだ」


司教はそう言うとパッと手をパンサーから離した



俺は静止したまま訝しげに司教の顔を覗く


青色のウェーブがかかった髪が中央で分かれ

聡明そうな目が見える


「私の名はエルク、アデンの司教エルクだ

……命乞いをするつもりは無い

貴様の ……いや其方の名を教えて欲しい」



少しの間、森を通る夜風だけが

俺と司教……エルクの間に流れた



「……長峰、長峰勇気」


俺が名乗ると

エルクの表情が少し綻んだ気がした


「変わった響きだな ……ナガミネ」


一拍置いてエルクが続ける


「名を教えてくれて感謝する

さぁ、止めを刺すが…」

そこまで言いかけてエルクの声が途切れ

俺の顔に水滴がかかった


……エルクの胸から剣が伸びている

かかったのは水滴ではなく血だ



剣が直ぐに抜かれ、エルクはその場に崩れ落ちて動かなくなった


「大丈夫か!?長峰!」

背後に姿を現した木村が俺に声をかけた



「……あ、ああ、俺は大丈夫

……野間を助けに行こう」


俺が返すと木村は小さく頷いた



俺と木村は動かないエルクを背にその場を後にした


木村の後を追って駆けている途中

首を動かして振り向くとエルクの体が遠くに見える


(覚えておくよ ……エルク)

俺はそう小声で呟いて前を向いた

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