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第1章 49話 「雌雄」

この意識状態では法術の行使は不可能

身体も背への衝撃からまだ回復していない

回避不能

剣すら先程の衝撃で手放したらしい

攻撃すら不能


……ハッ、死ぬのかこの俺様が


……まぁいい、化け物に喰われるて死ぬなどと、俺に相応しいではないか


油断したか……


尾が高速で迫るのを見て、目を閉じた



空気を切り裂く音と共に、眉間に鋭い痛みを感じた

しかし……致命傷には……浅い?


目を開けると、コルクスが奴の尾に身体を斜めに裂かれていた


そして、こいつは一言も発さず崩れ落ちた




俺の心臓がドクンと大きく深く

血を末端へと送るのを感じる


”トルク、デュアル!”

右手を上げて風法術を行使する


奴等が居るであろう場所へ勘で放つ


トルクは素早く発射されると木々の合間を擦り抜け、間を置かず奴の悲鳴が上がった

そこか、


”ウイング”

こちらも間髪置かず脚に風法術を施す


崩れたコルクスから素早く剣を奪い


走る、馳しる、疾る

早く!速く!疾く!


木々を抜けるとトルクの刃で切り刻まれたであろう「奴」が一匹そこに居た

最初に居た奴だ、身体中に切り傷が残っている


”エンチャントメント!ストーム!!”

俺は剣に手をかざし奥の手を切った


突如、剣が爆風が巻き起こしその鉄の身体に嵐を纏う


視界が再び揺らぐ、魔力が空を告げたのだ

こいつはやたらと魔力を食う割に効果持続時間は30秒も無い

恐らく30秒では一匹倒すので限界だ

これが切れればもう一匹に確実に殺されるだろう


……だが、それでいい

仇を取ってやる。


彼はその時確かに仇を取ってやると思ったのだが直ぐに思考から消えた為、その思考について起因を考えなかった


ウイングの効果を利用して一気に奴との間合いを詰める

頭上5、6m上にある奴の醜悪な口以外何も存在しない顔がこちらを向く

同時に鋭い尾が横薙ぎに俺へ向かってきた


俺は嵐を纏った剣を足下へと叩きつける

上昇気流が発生し瞬く間に俺の体を遥か20m程上空へ運んだ


奴の頭が眼下に見える

奴はまだ俺の位置を把握出来ていない様だ


今度は剣を上に振るう

剣から下降気流が発生し俺の落下速度を上げた


剣を下へ向け直し両手で持って奴の頭へと垂直に構えた、そして


……捉えた


爆風と共に剣は奴の頭を貫き

勢いを落とさずに地表へと到達した


奴の頭が剣と地面に固定され、深々と貫かれたままもがく

凄まじい力で剣から逃れようとしていたが、俺はこの剣を決して離さなかった

貴様はこの剣に殺されるべきなのだ


この状態を維持して何秒たったのだろうか

剣からは嵐が暴れ狂い、化け物の頭を抉り続けている

頭を抉り続けられて死なない生物などいない!いない筈だ!


しかし、化け物は依然として頭を凄まじい力で振るっている


何故!?何故死なない!

化け物め!いい加減にしろ!!

もう十分だ!十分……


化け物の振り続けていた頭が、俺の身体に触れ剣から手が離れて後ろに仰け反る


しまっ……!


ピギャアァァァァァァ!!!!!


化け物は剣に貫かれたまま、口を一際大きく開けて声を張り上げると

グッタリと地面に頭を打ちつけて動かなくなった



……やっと、やっと死んだ!

やっと死にやがった!!


膝が崩れ落ち、地面に手を突き四つん這いの体勢になってから地面にうつ伏せた


もう欠片さえも力も魔力も残っていない






ズル……ズル…… ズル……ズル……


奴の巨体が近づいてくる音が聞こえる


もう一体の化け物だろう


ハッ!殺すなり食うなり好きにしろ

もう、もう俺は動けない……


本日2回目の死の覚悟をした


視点の定まらない目でもう一体の化け物を見る




そいつは俺に見向きもせず、器用に口を使い死んだ化け物から剣を抜いていた


そのまま剣を口から放り投げると、死んだ化け物を咥えてから少しの間、俺に顔を向けた


その顔に表情は無い、しかし……


そいつはその後、俺に攻撃する素振りも無く

開けた大穴へ仲間を咥えたまま姿を消した




……何故、何故俺を殺さない?

俺は貴様の仲間を殺したのだぞ!?


……何故……



……すまなかった


伴侶を殺してしまって ……すまなかったな




ブレアの兵士としての道はこの時から大きく変わった


部下達の指導に苦心し、連携を試みる上司に変貌した彼を部下達はどう思っただろうか


部下に戦い方を指導するとはとても奥の深い物だ

まずその人間の適性と性格を知らなければ始まらない

ギルドのアルナラストーンを使えば適性は簡単に分かるのだが、性格はそうはいかない

会話を交わし、色々なシーンでその人間がどういった行動を取るのか

事細かに見て聞いて、その人間に神経を集中させなければならないのだ


彼はそれを長い時間を掛け、試行錯誤した上に理解した

まだまだ指導の道は半ばすら折り返していない

難しいものだ

最近酔った時に出る様になった彼の口癖が

彼の真摯な姿勢を表していた

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