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第1章 48話 「マウンテンイーター」


突如起こった地響きは

まるで、山の内側を何かが移動しているかの様に地面を揺らす


……なるほど、そういうことか

合点がいった


この粘液は恐らくあの魔物の体液だろう

一体、山賊風情がどうやって入手したのか

旅の商人から買ったのか、もしくはあの魔物の幼生でも攫ったのか


……後者だな

最近、山が良く揺れると村の者に聞いた

奴が子を奪われ怒り狂っているのだろう


麓の村の老人共が山の主と奉る魔物。

成体になれば体長15mにも及ぶ醜い怪物だ

何が山の主だ、単なる魔物だろう


揺れが一層大きくなっている、もう足下近くまで来ている様だ


サッと背後に大きく跳ぶ


元いた山肌が大きく宙に舞った

続いて白く一見すれば蚕の様だが

比較にならない程巨大な蟲が姿を現す


「マウンテンイーター」

山の土を喰い進み、代わりに肥沃な土を出す

巨大山ミミズ

通常、人を襲う魔物では無いが、

でかいだけあってそこそこの知能も持つ

子を奪われれば怒り狂うのも無理は無いな


俺の身体は子の体液でべっとりだ

誤解を解くのは難しそうだな、

フッと鼻で笑う


……予想外に面白い事になったではないか

山賊もたまには役に立つか


山賊共の討伐よりはマウンテンイーターの討伐の方が幾らか興がそそる

奴は危険度C-

C-の評価は臆病な性格を考慮しての事だろう

怒り狂ってる現在はC相当といった所だ


ピギャアァァァァァァ!!!


奴は耳をつんざく鳴き声を放ちこちらに頭を突撃させて来た


戦闘開始だ!さぁ、化け物!俺がダンスを踊らせてやる!

フィナーレまでへばるなよ!


剣を抜き、高速の突撃を紙一重で躱す


柔い肌がガラ空きだ

初撃と返し、更に返す

刹那の間に3連の斬撃を叩き込む

白い肌から黄色い粘液が噴き出した


だが、流石に分厚い

何回斬り込めば倒れてくれるやら


奴は俺を遥かに通り過ぎ、木を何本か吹き飛ばしてからようやくこちらに向き直った


その間に既に二十は斬りつけている


再び奴の頭が突撃してくる

フン、学習しない奴だ


サイドステップで躱す、いや躱したと思った


しかし、驚いた事に奴は俺に当たる直前で突撃の速度を急激に落とした


生意気な!フェイントか!?


今回は大きくサイドステップで避けた為、着地まで時間が掛かる

奴は俺の着地点へと器用に頭を向けると再び速度を上げた


これはマズイ!、が対処法はある

人間を舐めるなよ化け物


剣の腹を相手に向ける


奴が俺にぶつかる瞬間

剣を振り当たった場所を支点にして身体を回転させていなす

受け流しの応用だ


しかし、相手は人間の何倍もの巨体

衝撃を受け流し切れずはね飛ばされ巨木に背中を打ちつける


ツッ!

……学習しないと評価したのは取り消してやるよ


奴は俺を跳ね飛ばした後、地中に姿を眩ました


地中から奇襲するつもりか、

たかがデカイミミズの癖に色々してきやがる


動き辛い木のそばを離れ、地表に神経を集中させる


地響きが大きくなる


ココだ!

隙を無くすため横に転がり回避する


地表から鋭い頭が勢い良く元いた場所を貫く


鋭い?


……コレは頭ではなく …尾か!?

だとすれば!


背後から地表が吹き飛ぶ音が鳴った

予想通り頭が出現する


頭と尾がまるで別々の生き物の様に俺を狙う


尾はその硬質化した鋭い形状を利用して

天から降る槍の様に突き刺して来る

頭は頭で先程の様な頭の悪い突撃を止め、俺の退路を断つ様にうねりながら噛み付いて来た


なんとか間一髪で躱していたが、これは流石に分が悪い

素では厳しいか

直ぐに自らの足に風法術を掛ける

”ウイング”速度上昇の法術だ


ウイングを掛けてからかは一転攻勢に回る

苛烈な攻撃な為、油断は出来ないがそれでも避けながら何発か斬撃をブチ込めている


後は奴と俺の根比べだ



その攻防を10分は続けただろうか、流石は主と呼ばれるだけはある

奴は全く攻撃の速度も精度も落ちていない

もう目に見えて傷だらけの癖になんて奴だ


根比べは俺の負けらしい、法術も無限に使える訳では無い

更に、こちらは疲れが見え始め躱せず剣で受け流す場面も多くなって来た

……奥の手を使うか


そう考えている最中、尻尾の突き刺しが身体の芯を捉えて降ってくる

足が重い!受け流すしかない、

剣を構え天からの白い槍を右方へいなす

頭の攻撃は先程弾いたばかりだ、まだ再攻撃には時間が掛かる

受け流して対応する余裕はある

……はずだった


しかし、予期しなかった方向から背中を重い衝撃が襲った

その重量感は警戒していた筈の頭の突撃と思われた


馬鹿な!出来る訳が無い!

咄嗟に頭があった筈の場所を目の端で捕らえる

奇妙な事に確かに奴の頭はそこにあった


な、なぜ……


視界が揺れ勢い良く身体が弾き飛ばされる


10分前の衝撃とは比べ物にならない速度で大木に打ちつけられた

木の表面が衝突の衝撃で大きく爆ぜる


痛みに耐え、思考を巡らす

何故だ?何故奴の頭がもう一つ……


そこまで考えた所で一つの可能性に行き着く


どうしてその可能性を考慮しなかったのか

奴は子供を攫われて怒り狂っていた


奴には子供が居たんだ


当然子を成すには雌雄が必要

この山に潜むマウンテンイーターは元から2匹いたのだ


視界が霞む

……意識が朦朧としている

揺れる視界の中、俺へ尾が近づく気配を感じた

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