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第1章 47話 「スカーフェイス」

31日

戦争開始まで残り11:00:00



1,500人ものエルムサルト左翼軍が決戦の地へと行軍する


兵達の士気は軒並み高く

数で劣る戦にも関わらずエルムサルトの勝利を信じて疑わない


……では、その根拠は何処にあるのか


この軍の指揮官であり

かつて「スカーフェイス」の異名で恐れられた

兵法指南ブレア

この人物こそが根拠の一つであった


稀代の剣士ブレア

彼の才覚が陽の目を浴びたのは

軍に志願した僅か14の時からである


それまで一度も剣を握った事の無かったブレアが

先輩兵士達との練習試合でただの一撃ももらう事無く完勝

更に剣術、槍術、体術、法術

全ての部門において、その天性の才覚の片鱗を見せつけた


彼を指導した当時の上官は期待を寄せ

彼もまたそれに応える様に粋を吸収していく

自然と軍の中の彼の地位も上がっていくと

いつからかエルムサルトの幹部にまで上り詰めていた


齢30になった今でも、彼の斬れ味は落ちる事無く研ぎ澄まされている


……だが、そんな彼も常に正しい選択をしてきた訳では無い

若い時分は己の腕に酔い

無謀な作戦を立てては死地に自ら赴いたりもした

しかし、それでも彼が任務をこなし帰って来れたのは、やはりそれだけの才があったのだろう


彼の強さは他の兵士達から見れば羨望そのもの

その為、いつからか彼を尊敬し師と崇める部下が彼の周りを取り巻き始める


若い頃、彼はそんな部下達を鬱陶しく思っており

心の底で無能で弱小と嘲り侮蔑さえしていた


ブレアがスカーフェイスと呼ばれ始める3ヶ月前

22歳の秋、彼は山賊討伐の任を負っていた




また山猿共の討伐か……

ブレアはいくら討伐しても湧いて出る様な山賊達にうんざりしていた


楽な仕事だ、同時に討伐しがいも無い


山賊共を今まで何人斬ってきただろうか?

その中で俺が息を飲む様な技や術を見せた奴は?


答えはゼロだ


弱い奴が群れ

抵抗出来ない女子供を狙い凶行を働く

考えるだけで反吐が出る


恐らく、生まれた時から性格がねじ曲がっているのだろう

もはや人間とは思えない


「隊長!」


部下の声が自分を呼ぶ


本当は俺には部下など必要無い

小隊長なんて柄でも無い

ハッキリ言えば部下は須らく足手纏いにしかならないのだから

しかし、この国のルールではどの役職に出世するにしろ部下を持たなければならない制度になっている


だから仕方無く、まだ自由度の高い小隊長になる事にしたのだ


「何だ」


鬱陶しそうに部下へ言葉だけ返す


「ハッ!山賊のアジトと思われる場所を発見しました!」


さて、仕事の時間か


「案内しろ」


それだけ言って山中に仮設したキャンプの椅子から立ち上がった


「隊長!私もお供させて頂け……」

「必要無い、何度も言わせるな」


副長コルクス

こいつは本当にめんどくさい奴だ

普通の部下の兵士は邪険に扱って暫くすると異動を願い出すものなのだが

こいつだけはいつまで経っても俺に引っ付いて来やがる


そのおかげで部下で唯一こいつの名前と顔だけは覚えている

無論、悪い意味でだ


案内のみを行う部下の後を追っていく


何だか随分と険しい道の先にアジトがある様だ

先程から獣道を進んでいる


それから結構な距離を部下が導くままに進んだが徐々に違和感を感じ始めた


「おい貴様、止まれ」


ピタリと部下が制止する


「何処まで歩かせるつもりだ

もう軽く5kmは歩いたぞ、しかもこんな道をだ」


部下は振り向かない


「本当にこの先に賊のアジトがあるんだろうな?

迷いましたでは済まさんぞ」


クククク、ハハハハハ!

部下の兵士が突然背を向けたまま笑い出した


「隊長さんよぉ、あんた俺達の仲間を何人殺したか覚えているかい?」


……なるほど、そういう事か


「俺達もやられっぱなしじゃ腹の虫が治らね

ぇのよ、こいつはあんたへの俺達からの礼よ

たっぷり楽しんでくれ」


そう目の前の兵士を偽装した者が言い終わった瞬間、そいつの背がボンッと弾けた


自爆法術か!?と、とっさにガードしたが

そうでは無かった


上半身を吹き飛ばして下半身のみとなった傷口を覗くと、焦げ目が見えた

恐らく鎧の中に火薬でも仕込んでいたのだろう


何の目的が……と考え

自分の身体に血飛沫とは別に何か黄色い粘液がべっとりと付着しているのに気が付いた


普通にコレを掛けようとしたら確かに俺は回避したかも知れない

自分の命を犠牲にしてまでもコレを俺に付着する必要があった

そう考えていいだろう


粘液を手にとって匂いを嗅いでみる

刺激臭はしない。毒という訳でも無いらしい


という事は仲間への刻印の類か?

しかし、たかが刻印に命を犠牲にするだろうか


そこまで考えた所で大きな地響きが襲った

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