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第1章 43話 「アル・ナラ」

30日

戦争開始まで残り34:00:00



「やっぱり慌ただしいなぁ」


「明日開戦だからね、まぁ当然じゃない?」


俺と木村と野間は一通り打ち合わせを終えてから再び街へ向かっていた

因みに溝尾も誘ったのだが、予定があるらしく断られてしまった


街は目まぐるしく人が往来しており活気がある

ただし、往来している人々は皆どこか戦々恐々としているのだが


戦火がエルムサルト城下町まで及ばないという保証は何処にも無い

住民も各々戦と向き合う用意をしているのだろう


俺達の目的はギルドだ

ただ、今回は物品の買取が目的では無い


以前、食堂でヤナと話した際にギルドの話が出た事があり、その中にこの前に利用した買取

そして「請負人登録」の話があったのだ


詳しい事は分からないが

何でも請負人登録すると自分の身体能力や法術力、その他諸々が数値化されランク付けされるらしい

言ってみれば自己ステータスの解析と言った所だろう


”敵を知り、己を知れば百戦危うからず”


俺達は己を知る為にギルドに向かっていた




ーエルムサルト城下町 「ギルド」ー



門をくぐると傭兵が出払っているらしく

宅の空きが目についた

いや、傭兵では無く請負人と言うべきか


恐らく依頼が山の様に来ているのだろう

その証拠にカウンターには長蛇の列ができている


「オレ並びたくねーんだけど…」

と相変わらずの野間が愚痴をこぼす



俺達は暫く並ぶハメになったが20分程度でカウンターに辿り着いた


初対面のお兄さんが馬車馬の様に動き回り

その内、俺と目線が合った

どうやらこの人が対応してくれるらしい


「いらっしゃい!どんな御用?」


「えっと、俺達3人を請負人登録させて欲しいんですが……」


そう俺が言った途端、何故かお兄さんは目を輝かせる


「本当!?いやー、助かるよー

今日は依頼が凄くて請負人の手が足りなかった所だったんだ」


「ささっ、登録の手続きは中でやるから

一番右にある通路を通って2番目の扉の中に入ってくれ」


……少し困ったな

今日は依頼を請け負うつもりは無いんだけど

……まぁそれは後で言おうか


言われた通り通路を通って扉を開けるが


中を見てピタリと足が止まってしまった

部屋の中は暗く照明は無かったが、床に六芒星の魔方陣が描かれており、その魔方陣から光が漏れ出している


「……あー、魔方陣かー

あんまりいいイメージ無いなぁ」


俺の肩から顔だけ出して木村が言った


「1人ずつ中へ入って下さい」


暗くて良く見えないが部屋の中に人がいた様で、お姉さんの声が聞こえる


俺達は少しお互いに顔を見合わせたが

先頭だった事もあって最初に俺が入る事になった


また何処かに飛ばされるんじゃ無いだろうなと、恐る恐る中へ入り

更に魔方陣の中心に立つ様に促される


歩きながらお姉さんを見てみると何か妙な服を着ている事に気がついた

服はローブの様に全身を包む衣装なのだが

魔方陣と同調する様に発光している


どうやってステータスを調べるのかヤナには聞いていない

恐らく身体検査といった感じでは無く法術によるナニカだろうとは思っていたが……


何だかこの魔方陣も女性の衣装も、法術にしては随分大掛かりだ

法術では無いのだろうか?

……それとも難易度の高い法術は魔方陣を作る必要があるのだろうか?


俺が魔方陣の中心に立つと

女性は宝石を取り出し、握り、詠唱し始めた


……やはり法術とは違う気がする


そんな疑問を持ちながらお姉さんを見ていると

耳に魔方陣から発生した音が入って来た


ブゥン…… ブゥン…… ブゥン……


まるで機械の駆動音だ


次いで、足下の魔方陣が不規則に発光している事に気付く

複雑な法則で発光部分が素早く動いている

俺を調べているのだろう


その詠唱と発光は1、2分程度続いたが


起動(キャスト)!アル・ナラ!」

と突然お姉さんが唱えたかと思ったら、魔方陣の発光が、一気にお姉さんの手に持つ宝石に集約する様に移動する

いや魔方陣の発光だけじゃない女性の服の発光も宝石に集約した様だ


今は魔方陣も服も光を放っていない


「請負人登録が終わりました

こちらのアルナラストーンをお持ちになって

受け付けカウンターまで戻って下さい」

そう言われ立方体の宝石を渡された


何だか不思議な体験だった

プラネタリウムを見た後の様な感じだ

俺はお姉さんに軽く会釈をしてから扉を開けて部屋を後にする



部屋から出ると木村と野間が退屈そうに壁にもたれかかっていた

「おう、終わったのか ……何だソレ?」


「アルナラストーンって言うらしい

受け付けに持ってくんだってさ」


「ふーん、アルナ……?」


「まぁいいわ …んじゃ次俺行くわ」

2番目に野間が魔方陣の部屋に入った



木村が物珍しそうにアルナラストーンを覗いていたが、今日は受け付けが混んでる

待っているのも何だし、先に登録する事にしようと1人受け付けへ向かった



再び20分近く並ぶ事になってしまった

こんな事ならもっと早目に登録すべきだった

列の後ろでは野間と木村がウンザリした顔を見せている



20分経って受け付けカウンターまで再度来ると相変わらず忙しそうにしていたお兄さんから早口で説明を受けた


「このアルナラストーンは光にかざすと自分の情報が影となって映るんだ

自分の情報やランクはそれで確認してくれ

こちらは取り敢えずランクだけ調べさせて貰う

請負人のランクによって請け負える依頼に制限が付くからね」


難しい依頼や危険な依頼を低いランクの人が請け負うとギルドの信用的な問題で困るからだろう

それは何と無くわかる気がする


アルナラストーンをお兄さんに渡すと

手慣れた動きで光を当て、直ぐにE+と彫られた小さなプレートと一緒に返された


「君のランクはE+

E+までの依頼なら受けられる

もし依頼を受ける場合はそちらのカウンターで手続きしてくれ

そして、依頼完了の手続きもそこのカウンターで行う

依頼完了の手続きをしないと報酬が渡せないからな」


お兄さんは誰も並んでいないカウンターを指差した


「現在、ギルドが受諾している依頼の詳細はあっちの掲示板に貼られているよ

報酬や期限、危険度目安も書いてあるから参考にしてくれ」


今度はお兄さんが店の左手を指差した


……なるほど、張り紙が所狭しと貼られている

張り紙の前には何人か人がいる

多分、あの人達は請負人なんだろう


「それで勿論だが

君が依頼を失敗したり依頼人から苦情が来た場合

その内容をギルド側が吟味して場合によっては請負制限、ランク降格

最悪は登録取り消しの可能性もある」


「ギルドは基本的に

自信のある依頼だけ請け負う事を推奨している

ソレは頭に入れといて欲しい」


黙って頷く


「そして、最後に、

そのアルナラストーンだけど自己情報を1年に一度必ず更新する必要がある

例えば、30年前にDランクだった老人が現在でもDランクとは限らないからね」


「もし1年を超えて更新していない場合は

新たに依頼を受ける前に更新する必要がある

更新は初回のみ無料で自己情報を確認出来るが、2回目以降からは金貨1枚頂いている

言っておくが、アルナラはかなり魔力を使うんだ金貨1枚で恩恵を受けられるのは、ギルドの優しさだと思ってくれよ?」


「尚、そのプレートを紛失すると2金貨

アルナラストーンを紛失した場合は10金貨

再付与に頂いてる

結構高額だろ? 無くさない様に注意してくれ」


「以上!何か質問はあるかい?」

とお兄さんは早口で締めた


後ろに並んでいる人の舌打ちが聞こえる


「大丈夫です。ありがとうございます。」

とお兄さんに礼を言ってから、そそくさとギルドから逃げ出した



「ふぅー」

外に出て一息付く

アレだけ人が居ると流石に落ち着いて自己情報を確認する事も出来ない



……しかしE+ランクか


何と無く予想していた通りの位置とはいえ

やはりちょっと低く感じる

ヤナのランクを聞いていたから余計にというのもあるだろう


……いやある意味良かったんだ


自分を過大評価したまま戦に出なかっただけ意味がある


軽く頭を振ってから、アルナラストーンを既に赤く染まった太陽にかざしてみる

夕陽はアルナラストーンを通して斜めに地面に文字の影を落とした。

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