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第1章 40話 「ボロい木の槍?」

29日

戦争開始まで残り66:00:00



……昨日、早く寝すぎたかな


今日、目が覚めたのは6:00頃だった



寝ぼけた頭で部屋を見渡すが

やはりまだ皆んな寝ている


もう一度寝ようかとも思ったが

顔を洗っていたら目がパチリと覚めてしまった


少しどうしようかと考えた後

朝練も悪く無いと結論に至り

パンサーを掴んで修練場に向かう事にした




ー第2修練場ー


さてと、と腕を回して修練場に入ろうとしたが

人の気配を感じて足が止まる


中を覗くと


「クソ虫ども!もうへばったのか!!

そんな腰の入ってないヒョロヒョロ斬りでは

虫すら殺せんわ!!」


軍曹とクラスメイトが稽古をしていた


クラスの面子は玉城、安田、畑中、佐倉、安芸だ

随分早朝から剣の素振りをしているみたいで

皆んな汗だくになっている


邪魔しちゃ悪いかなとも考えたが

折角軍曹が指導しているんだ

自分も稽古をつけて貰おうと、修練場に入る事にした


「おはようございます!」


皆が俺の方を向いた

木村あたりを起こして連れてくるべきだったか

やっぱりちょっと恥ずかしい


「おお!ヒヨッコか!! 噂は聞いているぞ!!

夜な夜なここで槍を振り回しているらしいな!

殊勝な心掛けだがいつも独りでは寂しかろう!」


クラスメイトがクスクスと笑う


クソッ!

やはり木村を連れてくるべきだった!!

これじゃまるでボッチみたいじゃないか!


「そら!貴様もこいつで素振りせい!

貴様は槍が好きな様だが、たまには剣の訓練も良かろう!」


軍曹はそう言うと木刀を投げてよこす


……剣かぁ、あまり得意じゃないんだけどな

しかし他ならぬ軍曹が言ってるんだ

挑戦してみようかな


俺は佐倉と安芸と入れ違いに入り

木刀で素振りをする事になった

素振りといえどやはり女子に剣の鍛錬はキツイらしく2人とも修練場の隅に座り、他の面子の素振りを眺めている



1回2回……と素振りを重ねる


剣と槍は扱いが全然違うが

基本の振る戻すや踏み込みは同じだ

槍と同じく斬る速度、戻す速度を等速で行い

利き足と逆の足を踏み込んで全身で斬る


しかし、剣筋がややブレてしまう

やはり剣を振るう筋肉が付いていないせいだろう


軍曹は俺の様子を暫く見ていたが

「うむ!ヒヨッコはまず基礎の振りを反復だ

そのまま続けろ!」と残して玉城の所へ移動した


やっぱり肩がキツイ

50回も振るとパンパンになってくる


息を切らしながら振っていると

「目線が下がっておるぞヒヨッコ!

貴様は童でも斬るつもりか!」

と遠くから飛んできた


今度は誰も笑っていない


姿勢を維持して振ってみる

しかし、それをすると剣筋が今までより大きく

ブレる ……難しい


剣筋がブレる理由は何となくわかっている

力が入り過ぎているのだ

槍が精彩を欠ける時も同じ

槍は目標の位置へ腰を回して穂先を持っていく

その時に力が入ると不自然な軌道になってしまう


とはいえ

槍の扱いも一朝一夕で身に着けた技術では無い

短時間で剣を淀みなく振るうのは難しいだろう


剣をスムーズに振れる様意識し

3時間程振り続けた所で休憩の声が響いた


修練場の隅で息を整えていると

安田が近寄って来る


「久しぶりだな長峰」


「あぁ、うん久しぶり」


安田は玉城と一緒に居る事が多い

木村とも仲が良くて3人位で固まってる事の多い奴だ俺とはそこまで接点が無い

というか正直、あまり関わりたく無い

……何故なら


「おまえさ、槍使ってるんだってな

剣の方が良くね? 槍とか斬られて終わりじゃん」


これだ、安田も玉城も皆んな一緒が大好きなのだ

十人十色を許容出来ない性格なのだろう

流行り物ばかり追いかけて流行りが廃れれば

また新しい流行り物を追いかける

俺にはどうもそれが楽しそうに映らない


「いや、俺はもう槍が慣れてるからさ

でも、剣は剣で使い易そうだね」


「え、何それ

使い易くは無いよ別に

長峰使った事ないんだろ? 凄い奥が深いんだぜ

俺達4班はブレアさんに剣技を教えて貰ったんだけどあの人はマジヤバイよ

なんて言うか神業っていうの?

全然剣が見えないし、剣の出所も分かんないし」


変幻自在……

そんな言葉が頭を過ぎる

眉間にキズのイケメン、ブレアさんが強い事は分かる最終試練のあの一件。

確かに神業だった


でも、それとこれとはまた別の話で

ブレアさんの剣が凄いからじゃあ俺も剣を使う!

とはならないだろう


「なぁ?聞いてんの?」


「あ、あぁ、ごめん何だっけ?」


しまった、普通に聞いていなかった


「だからさ、あの槍おまえのだろ?」


安田が立て掛けておいたパンサーを指差す


「そうだけど?」


「あんなボロっちい木の槍より

鉄の剣の方が絶対カッコイイし、強いよ

だから長峰も剣使えって」



……ボロっちい?

パンサーより鉄の剣がカッコイイ? 強い?


何にも分かっちゃいない!

こいつは何にも分かっちゃいない!!


「……パンサーは多分そこら辺の剣より

よっぽど強いよ」


え? みたいな顔をした後に安田が爆笑する

冗談を言ったつもりは更々無いんだが


「あの槍パンサーっつーの?

ギャハハハ、おまえマジかよ、名前ダサくね?」


「べ、別にいいだろ!」


もしかしたら俺はセンスが無いのかも知れないけど

……そんな事俺の勝手じゃないのか?


「あー、お前結構イタイ奴だったんだな?

知らなかったわ

でもあんなボロっちい槍にパンサーは無いって」


……成る程、成る程

俺は木村に謝らなくちゃならない

一生懸命考えた名前を馬鹿にされるのはかなり

腹が立つ事が分かった


まぁ、名前は百歩譲っていいとしよう

馬鹿にされるのはムカつくが、俺が考えた名前だ

ある意味仕方がないのかも知れない

でも……


「別にボロっちく無いだろ

それだけ使い込んでるって証なんだよ」


「いや、全然意味分かんねーし

あのパンサー? ってどう見てもボロいじゃん

あんなの1時間あれば俺でも作れるよ」


……作れる筈が無いだろ


流石にここまで言われると段々苛ついてくる

俺と勝負したいのだろうか?

きっと勝負したいんだろう

俺だって馬鹿にされたままじゃ堪らない!


「……安田、おまえの言うあのボロ槍と

おまえの言うカッコイイ剣

どっちが強いか試してみるか?」


「……え? 何キレてんの?

なんかヤバくね?お前」


「あんだけ言っといて自信無いの?

まぁ、しょうがないか

1班と俺達2班は「戦士」だもんな?

4班が勝てる訳無いもんな」


安田は眉間に皺を寄せてウザそうな表情を作ると畑中達の元へと歩いて行った



安田に何か聞いたのだろう

玉城と佐倉からマジで?と聞こえてくる


……ここは居心地が悪い

俺もちょっと大人気なかったけれど

訓練に割り込んだのは失敗だったな


俺は立ち上がりパンサーを手にして修練場を後にしようとしたが……


「カッコイイー!パンサーの戦士君!」

と佐倉に煽られた



……こんな場所さっさと抜け出そう

足を早めて逃げる様に出口へ向かう


が、玉城が出口を塞ぐ様に立ちはだかる

「おい、戦士とか何とかナメた事言ったんだって? 俺が相手してやるよ」


玉城は木刀を掴んでいる

「長峰とかこいつで十分だろ」


「玉城イイゾー!やっちゃえやっちゃえ」

佐倉がまた煽ってくる


ここまでされて逃げるのもどうなんだ?

と思い始め、玉城を見る目に力を込める


右手を軽く突いて木刀を落としてやれば

流石のこいつらも納得するだろ……

と俺が突撃態勢を取った時


「なーに!やっとるか!!クソ虫ども!!」


軍曹が勢い良く修練場に戻ってきた



安田が軍曹に説明したが

「バカか!このクソ虫が!!」と

大きなゲンコツを喰らっていた


……そんなものでは俺の気は収まらない


「軍曹、そこの安田と玉城に槍の強さを見せてやりたいんですが、試合をさせてくれませんか」

本音を軍曹にぶつけてみる


軍曹は眉をしかめて暫く考えた後

ふむ、暫く待っておれと言って再び修練場を後にした



俺と玉城と安田がお互い睨み合っていると

軍曹は手に木製の棒を持って修練場に現れた


軍曹は木製の棒を俺に投げると

「仕方のないクソ虫どもだ!

それと木刀で模擬戦を行うなら許可してやる」

と放つ


棒は先が丸くなっておりパンサーよりも重く短い

殺傷能力を極限にまで下げた槍だ


「軍曹、これでは……」と言うと

「ならば!許可はせんぞ!」と返されてしまう


「先生エゲツなー

あんな棒で玉城に勝てる訳無いじゃん」

佐倉が嗤う


「……分かりました、こんな棒でもあいつら位なら丁度いいハンデかも知れません」

玉城と安田が何か喚いた様だがもう関係ない

俺は模擬戦を受け入れる事にした




一定距離を置いて俺と玉城が向かい合う


勝利条件は

頭部もしくは心臓部への斬撃もしくは刺突

または武器の放棄 ……簡単だ



軍曹の「始めっ!」の掛け声で動いた


こいつ程度に複雑な戦法は必要無い

サイドステップで躱して背中脇腹へ一撃

態勢を崩した所に利き手に二撃目

それで木刀を落として終了だ


俺は走って身体を木刀の間合いまで近付く


「貰った!」と玉城が木刀を振るが

遅い。 右手に躱して背後を取る


……しかし


背後を取ったと思ったが

玉城の剣先が俺の正面に向けられてそこにあった


……何故だ?

躱した後、ステップで大きく背後を取ったのに


玉城は刺突を放ち俺の心臓部を狙う

俺は直ぐにバックステップで躱し距離を取った


……何か秘密があるな

態勢を崩さない秘密

剣先を相手に合わし続ける秘密が


安田や佐倉が野次を飛ばすが耳には入らない


フー、と息を吐き、玉城を見据えた



……何をやっている俺

相手を観察する事が戦いの第一歩だろう


玉城の手、足、重心を見る

そこで違和感に気付く


玉城が不用心に走って突っ込んで来た


躱しながら即突きを放てば肩辺りに当たるだろう

肩に当たれば武器を落とす可能性が高い

それをすればまず勝てるが


俺は玉城の振り下ろしをサイドステップで躱し

再び距離を取る


しかし、どうせならあいつの秘密を暴いて攻略して勝ちたい、カウンターの一撃では後でゴチャゴチャ言われるのが目に見えている


それではダメだ。

完膚なきまでに完勝しなければ俺の心は晴れない


……さっき感じた違和感は


…………そうか、成る程


玉城は攻撃を加えた後、両足を器用に運び

俺を補促しているのだ

今も躱した直後には俺に剣先が向いていた


……面白い型だ

恐らくブレアさんに教わったんだろう

しかし秘密が暴ければあの型も崩せる

あの型を崩すには……


相手の足運びを上回るスピードのサイドステップの連続移動……かな


また玉城が突撃してきている

……試してみるか


玉城は愚直に再び振り下ろした

サイドステップで躱す

やはり剣先がこちらに向いている

玉城は刺突を放つ

更にサイドステップで躱す

今度は背中が見えた、が

玉城も危険を感じたのか薙ぎ払って俺を追う


しかし更にサイドステップで回り込む

玉城はそこで完全に俺を見失った


玉城の背中に勢い良く刺突を放つ


「ウッ!……」

鈍い音と共に玉城の声が漏れ

玉城は前のめりに屈んだ態勢になった


玉城は慌てて剣を両手に持ち真後ろに向けて

振ったものの


……遅過ぎる

その手元に向けて正確に刺突を放つ


再び玉城は声を漏らし地面に倒れ

もう木刀は宙を舞い玉城の手を離れていた



「勝負ありっ!そこまでっ!」

軍曹の声が響いた

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