第1章 34話 「第5戦」
田沼はあの後直ぐ
ブレアさんに千切れた右腕と共に抱えられて
門の中に姿を消した
リーゼさんも同時に姿を消したため
恐らく治癒に向かったのだろう
カール先生は
「田沼君が攻撃を受けた場所は致命傷をギリギリ避けていた
リーゼさんが治癒を施すなら一命は取り留めると思います」
と言っていた
今はカール先生の言葉を信じるしか無い
そして、大臣がヤナと春馬と川村に対して
決闘のルールを破った事に言及した
何でも試練が全部終わった後に
処罰を厳粛に協議し決定するらしい
ヤナ達もそれは覚悟の上だろう
俺にはヤナ達の行動が間違っているとは
到底思えない
扉の前に立つ
右手にはパンサーを握る
装備は木綿の服とズボン
何も問題なんてない
扉から内側へ血の跡が残ってる
田沼の血だ…
田沼の戦いの前までは囚人の命を奪うまでしなくても良いのではと考えていた
何処かで囚人に同情していた所もあった
だが、今はもう違う
もう試練とは考えていない
これは紛れもなく命を賭けた決闘で
囚人達と俺達の殺し合い
俺が対するのはあの囚人では無く
また別の囚人だ
……もしかしたら今度の相手はあの囚人と
真逆かも知れない
敵ながらに尊敬出来る人間なのかも知れない
ヤナ達だって囚人を殺した
……お互い様なのかも知れない
俺の怒りは八つ当たりなのかも知れない
そう、そう頭では説明もつく
………しかし
……頭では割り切れない感情も存在する
何より今は俺自身
怒りの衝動に身を任せてしまいたい
これは決闘
そして今度は俺の番
ならばルールに則り戦ってやる
ルールに則り戦い
ルールに則り殺してやる
扉が開いた
相手が見える
得物はロングソード
装備はプレートメイルと金属製の丸小盾
身長180cm以上って所か
別に何だって構いやしない
一定距離まで進む
ドラが響いたのが聴こえた
一直線に相手に向かい突進する
相手は俺に盾を突き出し待ち構える
カウンターを決めるつもりか
初撃を防げてから考えて見るんだな
加速する
森で鍛えた足腰だ、まだまだ全速じゃない
盾が大きくなって来た
そろそろ、間合いだ
急激にサイドステップで左手に回り込む
何を驚いている?そんな暇があるのか?
初撃!
相手の左二の腕に正確にパンサーが噛み付く
囚人が悲鳴を上げ左腕を下ろした
更にサイドステップで背後を取る
死角を簡単に取らせたな、勝つ気が無いのか
弐撃目!
膵臓を正確に穿つ、敗北宣言するなら今しろ
治癒しない限り、最早命は1時間も持たないが
痛みで背後を振り返り囚人が剣を出した
遅い、もう俺はそこにいない
参撃目!
狙い通り喉を掠めた、これで声を奪った
剣と盾を離し両手で喉の傷を塞いでいる
そうだ、死ぬまでその体勢でいろ
肆撃目!
左目を奪う、口を開けたが悲鳴は上がらない
当然だ、もう降参すらさせない
伍撃目!
右耳を落とす、何だその目は?
まだまだ楽にしてやるつもりは無い
陸撃目!
囚人が不用意に右手を出した
ならば頂こうと、手首から先を飛ばした
漆撃目!
強めに左大腿を突き、骨を砕く
囚人は横になったが、まだ死ぬ時間じゃない
捌撃目!
もう一度強めに、右足首から先を飛ばす
玖撃目!
肺を貫く、田沼の時と同じ場所だ
拾撃目!
拾壱撃目
拾弐撃
拾参撃
拾肆
拾……
……
…
うん?今何撃目だったっけ?
弐拾伍か弐拾陸か……
まぁいいか、もう飽きた
殺してやるよ
パンサーが首を飛ばした
「し、勝者 長峰」
修練場は静寂に包まれて
いつまで経っても鬨の声は上がらなかった
修正報告
今までの文章全体に、より読み易い様微調整を掛けました
文末、接続詞等の変化により、ニュアンスがやや変わった箇所はありますが、内容の変更はありません
失礼致しました




