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第1章 31話 「川村明菜」

第1修練場 最終試練

第3戦目


川村 明菜

クラスではヤンキーグループと連んでいた

顔立ちは整っており、十分美人と言って差し支えないだろう

性格は開放的で明るく、女子達の憧れの存在になっていた……らしい

ただ、御自慢の綺麗な長髪の間から覗く目は

何処か冷たい印象を見る者に与えた

学校の成績は上の下



川村は観客席脇の階段を降りてる最中

春馬とすれ違った

「おつかれライチ!」と拳を出すと

春馬も拳を合わせた


「頑張ってね」と春馬から声を掛けられて

川村は春馬にニヒッと笑顔を見せた



川村は階段を下りながら先程の二戦を思い出す

……あんな風に私は戦えない


折り返しを過ぎた所で

月柳と春馬に対しブレア先生が評価を下した林道での1シーンが頭をよぎった



ーエルムサルト 東の林道ー


「あの2人は「特別」だ

俺が今まで教えて来た数々の生徒の中でも

「素質」という事で言えば

1、2位は月柳と春馬だろう

将来的には俺さえ抜かす兵に成長するかも知れない」


私と新川そして田沼は頷いた


私だってそれは充分過ぎる程知っている

リーゼ先生の元での治癒法術の訓練

カール先生の元での法術訓練

そして今のブレア先生の元での実戦


その1月半、私達は常に2人を真横で見て来たのだ


2人は明らかに「特別」だった

特異にして別格、

才能の為せる吸収速度でブレア先生の剣技を理解し

素質の為せる力で法術を苛烈に行使していた

しかし、と

ブレア先生は続ける


「お前達だってかなり筋がいい

……いいか?個として見れば月柳にも春馬にもまだまだ上がいる

経験を加味して全体で見ればあいつらだってせいぜい月柳が中の中、春馬は中の下って所だろう


ただお前達はチームだ

特に川村、お前が適正を持っている水法術

……カールの奴から聞いてるとは思うが

水法術は護りの法術だ

お前が援護してやればあいつらもチーム全体としてもかなり安定する

お前はチーム全体を見る目を養い

的確に弱点を護れる様に判断力を磨く事に意識を向けろ


もし、お前が全体を見渡す目を手に入れ、

的確な判断力を手に入れる事が出来たなら

個としてのお前の力も上っているはずだ」


そう言われてから私はカール先生の元で訓練していた水の弾丸を封印して

水の防壁を展開する様に努めた


自然とチーム内で立ち位置が決まった


月柳と春馬が前衛となり近接距離で敵を狙い

また中衛に流れる攻撃を止める

新川と田沼は中衛

敵の攻撃が届くか届かないかの位置を維持して法術で前衛を援護

私は後衛で基本は前衛2人に水の防壁を常に展開しながら 中衛の2人に危険が迫れば状況に応じて防壁を発生させる


林道の奥は恐ろしい場所だった

強い魔物達がわんさか湧いて出て来る

危険度E+とかD-ランクと言っていたっけ

そんな化け物は当たり前だった

D-までならまだ月柳と春馬のお陰で

ギリギリ何とかなった



しかし……あの大きなミイラ

ジャアイアントマミーというらしい


あいつはヤバすぎた

後で聞いたら危険度D+ランク

あいつは身体中の何十と巻きついている布を器用に操作し

攻防一体の武具として扱った


あっという間に春馬が木に打ち付けられ倒れ

中衛の新川と田沼が私の遥か後ろに吹っ飛ばされた

ブレア先生は離れていてここにいない



残されたのは月柳と私だけだった


私は逃げ出したかった

辛うじて月柳に水の防壁を維持し続けたが

布が水の防壁に当たると魔力がごっそり持ってかれる

もう限界だった


今あの布が私に飛んで来たら

私の身体等楽々貫通される事だろう


春馬にも新川にも田沼にも

水の防壁をかけていたからこそ

まだ吹っ飛ばされるだけですんだのだ

私には自分にかける分の魔力なんてもう残っていない



月柳が何とかミイラの意識を引きつけて神業の様な回避を続けていたが

もう私は月柳に展開しているだけでも意識が飛びそうだった


その内、ミイラの布の一つが私に向くとピタリと静止した


まるで蛇が獲物を見つけたかの様に


布が私に向かい飛んでくる


私は衝撃と痛みに備えそっと目を閉じた






衝撃も痛みも私を襲って来なかった



大きな音が響いて

恐る恐る目を開けると

……あのミイラの化け物の巨体が倒れている


代わりに月柳と

いつ目を覚ましたのか春馬が片膝をついて

肩で息をしていた




その時からだろう

私は少し変わった気がした


川村はいつの間にか第1修練場

西の扉の前まで来ていた



私が所属する1班は無敵だ

あの化け物さえも撃破した


アレから新川がもう戦えないと離脱こそあったが


私はその1班のメンバーの1人であり

あのブレア先生の教え子なのだ


この扉の先にはチームのメンバーはいない

月柳も春馬も田沼も観客席だ


しかし、今更人間1人程度怖くも何ともない


扉が開く


最終試練の時が来た


左手に長弓を携え、背に矢筒を背負い

そして川村は軽やかに扉を抜けた

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