第1章 26話 「最後の試練」
王は暫く頭を下げていたが
大臣が最終試練については私めが説明致しましょうと声を掛けると頭を上げ
「済まないな、アウグスト」
と大臣に声を掛けた
「ふむ、……やれやれじゃな
王に先を越されてしまうとは……」
そう呟くと俺達の前に立った
「先程、王が申された通り!
この戦の後!
エルムサルトに未来が残っておれば
そなたらに何なりと報酬を出そうぞ!
もし望むのならワシの首でも差し出そう!」
口元を緩めてチラリと俺達を見渡す
「失礼ながら、そなた等の力を引き出す為
皆の者には二ヶ月に渡り厳しい訓練を受けてもらった
そして、各部門長の評価を吟味した結果
そなた等9人を我が国の戦士候補として選ぶ事となった!」
戦士候補?
軍曹から兵士とは認められたが
国的には俺達は未だ「現人」という訳か…
だが、と大臣は付け加える
「我が国のしきたりにより
戦士となるには最終試練を通過する必要がある
最終試練をそなた等に課す目的は
一つは力量の最終確認、
そしてもう一つは、そなた等の心の強さ
つまり「覚悟」を試させてもらう」
その後、大臣から試練の詳しい説明がされ
試練予定日を伝えられると
俺達9人は会議場を後にした
最終試練の内容は囚人との決闘だった
囚人はアデンの捕虜で
来月の1日、開戦と同時に処刑が決まっている人間達だ
捕虜へ出した条件は決闘で俺達に勝利すれば
無条件解放を約束しており
死にものぐるいで殺しにかかってくる事が予想された
決闘場は第1修練場が選ばれた
お互い決闘準備として
武器、装備共に第1修練場にある武具は全て利用が可能
囚人は持ち込む事はできないが
俺達は武具の持ち込みも自由だ
勝利条件は
相手の死、もしくは相手の敗北宣言
囚人は数日後に処刑が決まっている
敗北宣言は期待できない
相手は武装した敵兵
なるほど戦前の命がけの模擬戦という事だ
一応、辞退も出来るらしい
勿論、辞退すれば俺達は戦士と認められず
恐らくだが戦の参加は出来なくなるだろう
囚人は処刑を待つのみとなる訳だ
戦をしたい訳じゃない
人殺しをしたい訳では無い
期待を裏切る事が嫌なのだ
この国をあの森を敵に蹂躙される事が
堪らなく嫌なのだ
最終試練。辞退する気はない
最終試練は27日
つまり明後日の予定だ
俺達は部屋に戻ると
それぞれ考えを巡らせていた様で
木村は街に出てくると外へ出た
野間は何も言わず部屋を出た
皆、夜になる頃には流石に帰って来た
あまり会話を交わす事も無くベッドについた
……中々眠れない
今回の試練の相手は獣でも魔物でもない
正真正銘の人間だ
俺は人間を殺せるのか?
それに向こうは武装して向かってくるのだ
そもそも勝てるのだろうか
相手は武器に何を選ぶ?
……やはりロングソードだろうか
1対1の決闘では槍より剣の方が対応が利く
暫く頭の中で、鎧を着て剣を持った相手を
イメージし戦ってみたが中々厳しい戦いになりそうだ
ベラ製とはいえ木槍パンサーも
ロングソードの斬撃を受ければ真っ二つだ
俺も剣を使うべきだろうか?
……うん、試してみるだけ試してみよう
パンサーとの違いも見てみたい、
一応パンサーも持っていくか
俺はベッドを抜け出し第2修練場へ駆けた




