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第1章 25話 「帰還」

ーエルムサルト城 正門前ー


2班 刻限

24日目 16:00


未だ2班の4人は姿を見せていない


ガルグリフは落ち着かない様子で

正門前を行ったり来たりしていた


「あのクソ虫共!

ワシの話を聞いていたのか!!

本日が刻限なのだぞ!?」


まぁまぁとカールがガルグリフを宥めていた


ふむ、しかし確かに変ですね

使い魔からエルムサルト街に長峰君が入ったと3時間程前に報告があったのですが

さて?


……少し様子を見に行った方がよろしいでしょうか?

いや、しかし流石にそこまでは



カールがそこまで思考を巡らせた頃

門番から報告が届いた


2班、長峰及び野間、目視にて姿を確認

門を開きます


ようやく来ましたか

しかし2人だけ?

木村君と溝尾君は…


「門番!!

2人だけなのか!? 木村と溝尾の奴は見えんのか!?」


は!団長

確認できるのは、長峰、野間だけでございます


なんと!

何があったというのか!?

ワシは奴らには森で生き残る術を教えてから帰って来たのだ!

まさかパブーンにやられたのか!?

それともマッドドッグの群か!?


これは……

しかし反応は4つ

フフ、どういうつもりなんでしょうか?



門まで到達すると

門番から長峰、野間の両名の到達を確認

明日、大臣から指示が下る

それまで部屋で待機せよと発せられた


「長峰!野間!

まずはクソ虫が良く戻ったと行っておこう!

……早速だが木村と溝尾はどうしたのだ?」


「心配しなくともここに居ますよ!軍曹!」

「僕は門の前で出ようと言ったんですけど」


長峰と野間の背中に掛けられた布が舞い

木村と溝尾の頭が姿を現した


!?

門番は慌てて確認すると

2班全員の到達を確認!

へ、部屋で待機せよ!と言い直した


いい度胸になりましたねぇ?皆さん?

カールが笑う


き、きさまらぁ〜〜!!

鬼軍曹が怒る


4人の頭にゲンコツが落ちた


「ってて、怪我人なんだから手加減して下さいよ〜」

と野間の後ろで木村が苦笑いした


「じゃかぁしぃわ!!クソ虫めが!!

………ん?怪我じゃと」


良く見ると木村と溝尾には

多数の裂傷、擦り傷、また化膿している部位が見えた


なるほど、確かに怪我を負っている

……この爪痕に特徴的な歯型

………パブーンに手を出したか

しかし、それにしてもやたらと傷が多い

特に足は噛まれた後や肉を削られた痕跡が

多々残っている


確かにコレで歩くのは難しい様に見える


だがあの森からここまで

まさか人一人おぶってくるとはな



「だからぁ、すいませんけどぉ

リーゼさんの治療を受けたいなぁと思いましてぇ

治癒場へ向かってもいいでしょうか!?」

下心見え見えで木村は言った


「む!? まぁ仕方ない……」


「その必要は無いみたいですよ?

木村君、溝尾君」

カール先生がパチンと指を鳴らした



何か違和感に気付き

木村と溝尾が自分達の体を見回す


……足が軽い?

「………え? 嘘でしょ?

傷治っちゃったの!? えーーーっ!?」


「治ったんなら、さっさと降りろや!

色ボケ!!」

野間が正論を言ってる


「大体、てめー殴られねーって言ってたじゃねーか!

殴られたんだけどオレ!

治癒費払えよ、この野郎!!」


「まぁまぁ、まぁまぁ、

落ち着けってのまっち


………ほらまぁ何事も挑戦?ていうの?

取り敢えず……メンゴメンゴ!」


「ぶっ殺す!」







大浴場で約一月分の汚れを落とし

軍曹の部屋で報告を終えると

元いた質素な部屋に俺達はいた


久しぶりに戻って来た気がするね、この部屋



一カ月も経ってないのに

一年振りに帰って来たかの様な感覚がする



森でのパブーンの群と

巨大なパンサーからの伝言


軍曹の部屋を訪ね

それら軍曹に一連の話を伝えると

流石の軍曹も言葉を詰まらせた


「………そう、か

…………………ハーッハッハッハ!」


いつもより笑い声に元気が無い


「あやつめ!

ワシが守っていたつもりであったが

逆にワシが守られていたとはな!

……フン、ワシもまだまだ森を知らんのう」


後ろを振り返り俺達から顔を隠すと

軍曹はそう言った


「しかし、クソ虫共!

良くぞそこまで成長した!!

あのパブーン共に囲まれて全員生きて帰るとはな!

貴様らは!最早この国の兵士だ!

まだまだ成り立てのひよっこだがな!

追って沙汰を待てい!」


俺達は軍曹の背中に深々と礼をすると

軍曹の部屋を出ていった




兵士……

俺達はそんなに強くなったのだろうか?


森でパブーン達に囲まれて

俺達は何も出来なかった

森を我が物顔で歩き、アレが森を舐めたツケだったのだろう


俺の力なんてせいぜい普通のパブーン一匹を

ギリギリ狩れるか狩れないか

所詮、その程度でしか無い

武装した人間に果たしてどこまで通用するのか?


森ではツタでハンモックを作り寝ていたせいで部屋のベッドでは中々寝つけなかった


それでも暫くすると意識は落ちていったが




翌日25日

俺達に魔導長から会議場に集まる様

指示が飛んだ


会議場に俺達2班4人が入った時


大臣、リーゼさん、カール先生、ブレアさん

エルムサルト各部門のトップが横に並び

俺達に向かって立っていた


しまった!もしかして遅れたか!?

と焦ったが


会議場の椅子にはまだ

月柳達1班5人のみしか来ていない様子だった


俺達はそそくさと椅子に座ると、

何だか厳格な雰囲気に飲まれながら

他の班の到着を待つ事にした


しかし

俺達の後、他の班が入って来る気配は無く

代わりに大臣達が立っている場所より

更に一段高い壇上に人影が現れた


金色の髪に加え、胸まで伸びた金色の髭

風貌から推察するに40代位だろうか


見慣れない人だったがこの人が「誰か」は

直ぐに察しがついた

当然だが大臣はこの国のナンバー2だ

大臣よりも上に現れる人間なんて

どう考えても1人しかいない

つまり「王」だ


人影は壇上の中央まで来ると

大臣に視線を送った

すると、大臣が静寂を破っておもむろに声を上げる


「これより!我等が王の口から

最終試練の内容がそなたら9名の現人に告げられる、心して静聴せよ!」

大臣は普段より一際厳格な声でそう放った


……最終試練?

……俺達1班と2班にのみ試練を受けさせるという事だろうか?


王は俺達を一瞥すると

静かに、しかし意思の強さを内包した声で

ゆっくりと話し始めた


「現人の皆様方、お初にお目にかかります。

我が名は

クラウ=マリス=ライン=エルサルティア23世

エルムサルトの王を努めております。」


「エルムサルトを離れていたとは言え

御挨拶が遅れ申し訳ございませぬ。

そして何より、我が国の都合で皆様をお喚び立てした身勝手な振る舞い、国を代表し、

ここに非礼をお詫び致します。」

そう言うと王は俺達に頭を下げた


大臣は聞いていなかったのだろう

「王様!?なりませぬ!

王が頭を下げるなど!」

と凄く慌てた様子だったが

王は頭を下げたまま動かなかった


俺達も急な王様の謝罪に驚いていたが

暫くして王は頭を上げた



「話は聞いている物とは思われますが、

このエルムサルトは今、隣国であり

古くから盟を結んでいたアデン大教国からの戦線布告を受け、存続の危機に立たされております。


アデン大教国は大国

以前のまま、戦が起これば

エルムサルトは歴史から姿を消す事なっていたでしょう。


私は王としてそれだけは許容致しかねます


私にはエルムサルトの民、地、そして遥か昔より続く祖先達の誇りを護る責務があります。


その為に我等には新しく対抗し得る力を得る必要があったのです。

我等の祖国エルムサルトの存続の為

我々はありとあらゆる手段を用いる覚悟で

今日まで動いて参りました。


我等が祖先が遺した文献の一節に

現人はいずれこの国の危機に現れ

この国を滅びから救うであろう

とあります。

皆様を御喚び立てしたのもその為で御座います。


もし戦が終わり

このエルムサルトが残っていたならば

可能な限り現人様達の要求を飲みましょう。


どうか何卒、この非力な王とエルムサルトに力をお貸し下さいますよう、御頼み申し上げます。」

そう言うとまた王様は頭を下げた


俺は絶句していた

こんなたかだか9人の中学生を

一国の王が救世主と喚び

自分の国を賭けたのだ


王の言葉は嘘や偽りが混じってる様には

思えなかった


流石に、こんなパブーン1匹程度の力しかない俺が そんな大それた者とは思えない


しかし、しかしだ


どうあれ、俺だって最早この国と無関係とは言えない


この国の修練場ではカール先生に法術を教わった

資料室ではこの国の大臣に歴史や様々な情報を教わった

森では軍曹に生き残る術を教わった

帰ってくれば軍曹に兵士と認められた


今、この国の王にまたこの国を頼まれた



血が沸き立つ感覚がする

元の世界では誰かの為

また何かの為に戦った記憶は無かった


こんな感覚も味わった事が無い


父さん、母さん、美希

そしてマコの顔を忘れてはいない

今でもいつか会えるのでは無いかと儚い希望を持ってもいる


だが同時に、

俺は既にエルムサルトの兵士なのだ


この国を護る為、俺に出来る事があるのなら

……俺は力を尽くそう

その時心の奥で誓いを立てた

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