表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/63

第1章 18話 「前人未到」

結局ゴブリンはあれ以来現れず


空に赤みがかかって来た頃に

周囲の風景が少し変化した


草原に樹木がチラホラ見え始めたのだ


それから目に入る樹木の数が徐々に増え

今はとうとう馬車が林道を走っている


林道に入ってどれ位走った頃だろう

街外れから走り続けて来た馬車が止まった


「起きろ!クソ虫共!

楽しいピクニックの始まりだ!」

軍曹の声が幌の中に響く


幌から降りると

目の前は完全な森だった


名前の分からない巨大な広葉樹が視界を覆い

まだ黄昏時だった筈なのにとても暗く

温度は肌寒い

樹々の隙間から覗く闇を見ていると

吸い込まれそうな錯覚さえ覚える


突然、キーキーキーキーと森の何処かで

生き物の鳴き声が聞こえてきた


前人未到の大森林

この森を見て頭にそんな言葉が浮かんだ



「こっちだ!ボサボサするな!

夜になれば全く見えなくなるぞ!」

鬼軍曹が手早く馬車からブルースを外して

さっさと前方に歩き出している

遅れまいと後を追うと

直ぐに開けた所が現れた


「薪を集めろ!火を起こす!」

軍曹は随分慣れている様子で指示をテキパキ出している

何度か来た事があるみたいだ


確かにこんな場所では火は絶対必要だ

寝込みを肉食動物に襲われたらひとたまりも無い


俺達が薪を集め終えると

次に当たり前の様に火起こしを命じられた


火起こしか、

何度か無人島が舞台の映画で見た事はあるが

その主人公達はみんな火起こしに苦労している描写がある

すんなり点ける事は出来ないだろうな


そんな事を考えていた途中

野間がスッと薪の前に出て薪に手をかざした


……野間は何をするつもりなんだろう?


その答えは直ぐに野間の手から放たれた

何本もの火針が発生して薪にぶつかる


そうか!法術を忘れていた

確かに法術なら直ぐに火を起こせる


火針は薪にぶつかって飛び跳ねた後

薪をパチパチと音を鳴らせたが一筋の煙を

残して消えてしまった

野間の火針では火力が足らないみたいだ


チッ!

野間は舌打ちをした後で、木村に向かって顎で促す


「なるほど、なるほど」

木村が頷いて腕捲りをしながら薪の前に進む

妙に嬉しそうだ


「まぁ、野間の火も中々だったけど

この薪は俺のヘルファイアじゃないと無理だろうな」

いいから早くしろと野間が木村の尻を蹴った


「ヘルファイア!」


木村がお決まりの文句を声高に叫ぶと

右手から火球が飛び出した

火球のサイズはそんなに大きくなく

丁度、ソフトボール大位のサイズで薪の中に

潜り込んだ


バチッ! バチッと薪が音を鳴らしている

……今にも火が点きそうだ


固唾を飲んで薪を見守っていると

後ろで見ていた鬼軍曹が前に出てきて

薪に息を吹きかける


ボウッと火の手が上がった

同時に木村と溝尾からも歓声が上がる


ああ、暖かい!

焚き火から熱を奪う様に手をかざすと

心が安らいでいく

多分、俺の遥か遠い先祖もこうして暖をとっていたのだろう


火が点いたお陰で周囲の闇がより際立った

もう完全に陽は沈み、静寂な闇が俺達を支配する


こんな場所で何をするのだろうか?


鬼軍曹から薄い布地を投げられた

「今日はもう寝ろ!

明日になれば山程やる事がある

体力をできるだけ回復させておけ」


この布地は敷き布団だろうか?

それとも掛け布団なのだろうか?

そんな疑問が湧いたが、

取り敢えず落ちていた薪を枕代わりにして

布地を身体に掛けてみる


キーキーキーキー

何処からか、またあの不気味な鳴き声が聞こえた


こんな所で眠れるのか?

どんな魔物や動物や虫がいるか分かったもんじゃない


暫く横になりながらも辺りを警戒していたが

焚き火の暖かさを受けていると

次第に瞼が落ちていった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ