第1章 13話 「侵入者」
ルガー枢機卿は
女帝から充てがわれた司教から情報を受け取ると苛ついた表情で率いた隊に戻った
こんな田舎にこの私を寄越すとは
教皇は何をお考えなのか
しかもどんな強大な相手かと思えば
たかだか6,500程度の国とは
ヴェスティエラ枢機卿は政治の才はあっても
戦の才は全く無いと見える
「ハンス!仕掛けるぞ!直ぐに準備しろ!」
「……は!
……その、どちらにでしょうか?」
「決まってるであろう!
エルムサルトの野猿共の腕の程を
この私が直々に確かめるのよ!」
「な!?
し、しかし!
エルムサルトとは今停戦中では!?」
ハンス大司教は顔を青くしながらも馬に跨った
「今回の戦闘は俺の独断だ
アデンとは関係無い!故に問題等無い!」
「……左様で」
ハンスはそれ以上何も言えず
ルガーの馬の後を追った
ーアデン〜エルムサルト間関所ー
ここは停戦中とはいえ万が一に備え
大臣が作った関所である
丁度、アデンとエルムサルトの中間に位置し
この関所を越えるとエルムサルト領内となる
番兵は3人で関所の警護に付いていたが
何も最近は通らない為
1人を立たせて
簡易的な寝所で2人は寝ていた
………ん?
アデン側から馬が来る
二頭の馬だ
もしかしたら使者かも知れない
立っていた番兵は寝ていた二人に向かい声をかけると馬の到着を待った
馬は程なくして目の前に現れ
二人の影が馬から降りた
「何だここは?
誰に断わってこんなモノを建てている」
「は? あんた何者だ?
……知ってると思うが
今エルムサルトとアデンの同盟は無い
ここを通りたいのなら、名前と用事をそこの紙に書いて明日またこの時刻に来てくれ」
「……野猿如きが私に名を名乗れと?」
瞬間
番兵の首が飛んだ
ルガーは剣を軽く振り、血を払うと
慣れた動作で腰の鞘に収めた
「……ルガー卿、よろしかったのですか?」
「フン、何も問題は無い」
言うが早いか
鍵がかかった扉を火法術で吹き飛ばした
……この人は枢機卿にしては血の気が多過ぎる
ハンスはやれやれといった感じでルガーの後を追い、エルムサルト領に馬を走らせた
ー第2練修場ー
現在1班がカールの指導の元
法術訓練に勤しんでいる
ドンッッ!!
轟音が響き
石で出来た練修場の壁に亀裂が入る
月柳の風法術が起こした跡だった
月柳はカールから法術を一度教わった後
見る見る内に法術を使いこなし
初日にしてカカシを破壊し
30m先にある壁に法術を当てた
一週間経った今では
壁に亀裂が入るまでに威力が上がっている
月柳は額の汗を拭うと隣を横目で見た
春馬が法術を使っている
春馬の手が赤く光ると掌に光が移る
その後一見ただ光が消えた様に見えるのだが
間を置かず、カカシがあった位置で
小規模な火柱が立ち昇った
……カール先生は
風は系統関係上、火に不利と言っていた
もし春馬と勝負する事になれば
俺が負けるかも知れないと月柳は思った
……?
そういえば、先生の姿が見えない
いつも居ないと思ったら隅で読書していたり、割と自由な方だったが、遂に完全に指導を放棄したらしい
……俺は俺に今、出来ることをやればいい
月柳はカールの事を意識から外し
再び法術の強化に努めることにした
確かにカールは練修場を抜け出していた
しかしそれは指導を放棄したからでは無い
関所方面から教会信者独特の気配がこちらに向かっていたからだ
侵入者の元へと、妖魔専用の能力
通称”影の道”を使い
修練場を抜け出し一直線に向かいながら考える
予想外に早く仕掛けて来たものだ
反応は2つ
……関所の番兵を殺して進んだと見える
強気な事で
しかし相手は掟破りの凶行を行う輩
人間同士の戦に関与している
掟破りの妖魔の私が相手をしても文句は言えないでしょう
数分にして
侵入者の先50m程度まで到達すると
草の大地の下から
カールは姿を地上に現した




