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第1章 11話 「チキンのトマト煮」

資料室で座学を受け始めてから3日経った


今日も頭が重い

やはり座学の致命的な欠点は体が動かせない事だろう


魔導長は割と重要な事を言ってる気がするんだけど眠気がどうしようもない



大きな欠伸をつきながら

木村と野間と食堂に向かった


食事は数少ない憩いの場だ


カール先生の料理には隠し味に危ない薬でも入っているのだろう

もうカール先生無しでは食べられない身体になってしまっている



「……うーわ、今日ハズレだ」


「あいつかよ、……サイアク

今日マジで腹へってんのに」


厨房に今日はカール先生の姿が無かった


代わりに野間命名「エース」がフライパンを

景気良く振るっている


カール先生だっていつも昼に厨房に居てくれる訳では無い、たまにこういう日があるのだ


「やぁ、今日の日替わり定食は

チキンのトマト煮だよ!」


食堂の何処かからため息が聞こえた




料理をもらって宅につくと

俺達はお互い目線を合わせる


野間が木村の目を見て顎を動かす


木村は視線を料理に落とした後

チキンを暫く睨んでいたが意を決した様に

ナイフとフォークを手にとった


チキンを一口大にカットし、恐る恐る口に運ぶ


俺は祈った

(頼む!美味しく食べようなんて贅沢は言わない!

せめてバッドステータスが付かないレベルであってくれ!)


木村は咀嚼を始めると目線を徐々に自分の膝へと落としていき、とうとう完全に俯くと

左手に握ったフォークも同じく皿に落とした


残念ながら判定はアウト

木村のジャッジはアウトだ


「木村! てめーふざけんなよ!!

俺まで食えなくなるだろーが!!

美味そうに食え!」


理不尽な野間の言動に対しても

木村は悲しそうに野間を見ただけだった


「……やめた! 俺食わねーから」


あまりの難敵を前に

野間はタオル、もといフォークを投げた


「でも食べないと午後辛いよ?

……ほら、消化さえ出来れば

エネルギーに変わるから」



「……じゃおまえ食ってみろよ

おまえが美味そうに食ったら、俺も……」


………


「……まぁ考えてみるわ」


……何故俺が野間の腹の心配をしなきゃならないのか

ふとそんな思考が過ったが

状況は俺も同じだ


食わなきゃ後で死ぬ


食えば今死ぬ


どちらを選ぶか……だ


俺はキッとチキンを睨むと

フォークを手に握りしめた



どうせ死ぬなら前のめりに……!!



ナイフでチキン?を一口サイズに切る



死ぬっ!!


口に放り込んだ


うおおぉぉお!??!


何だこの生ゴミみたいな匂いは!


熟しすぎたトマトみたいな嫌な甘みが口一杯に広がる


肉汁たっぷりだが気持ち悪さしか感じない



俺は誰のせいでこんな拷問を……!?


目の前の野間が

ん?どうなんだ?

みたいな顔をしている


”前のめりに死ぬとは言ったが”


口角を上げて笑顔を作った


”俺だけ死ぬとは言っていない”


右手を握り親指を立てた


”野間、おまえも道連れだ”


「ナンダ、オモッタヨリゼンゼンイケルジャン

ノマ、グッドラック!」





そのやり取りの30秒後、野間はトイレへダッシュしていた


野間バルハラッドで2回目のゲロ




俺と木村は宅に突っ伏して解毒に専念した


不味く作りようの無いパンを胃にぶち込んで毒素の希釈を早めにしておいて良かった


何とか快方に向かってるらしい



そんな中、背後から不意に懐かしい声がした


「ちょっと悪いんだけど混んでてさ

ココ空けてくんない?」


後ろを振り返るとヤナがいた


本名、月柳 修一

ヤナと言うのはアダ名で

小学生時代はそう呼んでいたのだ


一緒に月柳の事をヤナと呼んでた友達は

殆ど違う中学校に行ってしまったので

今も呼んでるのは俺と谷中だけだった


ヤナは俺と分からず声を掛けてしまった様で


「あ、勇ちゃん……」

と戸惑っていた


木村が「え?」みたいな顔をしている



……中学に入ってから特に接点が無かったから木村に話す機会も無かったんだが


そう

小学生の頃、俺はいつもヤナと一緒に遊んでいた


いつの日だったか

小さな事で喧嘩してから遊ばなくなってしまったけど


そのまま、中学に入ってクラスも別れ

俺は代わりに木村と知り合った


ヤナは不登校気味だったので喋る機会も無かった様に思う



「悪い、今どくね 木村行こうぜ。」


「いいよ!どかなくて!

隣にいちゃダメなのか!?」


……まぁいいか



「……別にいいけど」


それを聞くと

ヤナは俺の隣に腰かけた


「……勇ちゃん、最初カール先生の訓練だったんだって?」


「ん? ああ、まぁね」


「カール先生、なんか勇ちゃんの事ばっかり気にしてたよ

勇ちゃんの話ばっか聞かれてさ

俺は今全然知らねっつーのに」


とヤナは気まずそうな顔をした


事実だから別にいいのに


「さぁ?、俺カール先生の訓練では

別に何も出来なかったけど」


「あ、そうなんだ

勇ちゃんの事だから凄い魔法でも覚えたのかと思ったけど」


「何言ってんだ?そんな訳ないだろ」


本気でそう思った


ヤナは小さい頃から天才だった

頭脳明晰、スポーツ万能

おまけに超がつくイケメンだ


俺なんか何一つ敵わない



あ、何故か俺が小学生の時の口調に戻っている

不思議な感覚だ



そんな時

ヨロヨロと弱々しく野間が現れた


「ながみねー てめぇー

パチこきやがって……うっ」


何歳か老けた様だ

何か大きなストレスを受けたらしい

大丈夫でしょうか?


「なんだ野間 フラフラじゃねーか

肉食え肉!

おまえいっつも少食だからそんなんなるんだよ」


そう言えば

ヤナが学校に来た時は畑中とか野間とかと一緒にいる事が多かったな

と思い出した



「あん?月柳?

なんでおまえがこいつらと…」


「ほら!半分やるよ

しょうがねーから」


ドンッ!


言い終わるのが早いか

チキンのトマト煮を半分に切って野間の皿に乗せた

乗せられた

乗せてあげた


……そう言えばヤナはまだ手をつけていなかったな



「こ、こ、こんなクソマジー料理

食えるかぁ!」


皿ごとチキンをぶん投げた

可哀想に、トラウマになっているではないか


しかしヤナは事情を知らない


「お、お前!

人が折角やったのに!

……何すんだ野間ゴラァァア!!」


「うるせー!!

ナルシスト!!

てめーにも食わせてやろーか!

あ”あ”ん!!?」


まぁこうなるよね


俺と木村は取っ組み合ってる2人を残し

資料室へ向かった

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