お爺ちゃん賢者はとりあえず撃ってみることにしました。
今日は体調不良…?
意外と短い時間で海岸線まで到達した。
体力はまだ残っているので、今すぐにでも実験を始めようと思う。
****
「【魔力装填】」
まずは撃つための魔力を最終射出点の大魔石に少量送り込む。
同時に、ブラックチタン製の直径約12cm強もある大きな弾丸を銃身に詰め込む。
70cm後半もある銃身は、重いかと思いきや、既に賢者時代の百分の一は取り戻している筋力のおかげで全く重く感じない。
「【照準】」
引き金に指の腹を這わせて、照準を合わせる。
今回は無限に広がるような海原の地平線にスコープで照準を合わせた。
と、同時に搭載した人工知能による的中確率円環が広がり、まるで痙攣するかのように収縮する。
その収縮は明らかに不規則で、なかなかベストの状態は引き出せない。
一番サークルが大きくなったところで、引き金を勢いよく引く。
「【発射】!」
『銃口初速89200m/s、推定有効射程2500Km。発射します』
凄い数字が出たような気がするが、気のせいのはずだ。
その大きな銃口から、直径12cm強もある凶暴な弾丸がジェット機も裸足で逃げ出すような速度で射出された。
発射してからはいろんなことが起こった。
まず先に。
海面が真っ二つに割れた。
弾道に沿って、まるでお手本のように綺麗に空間の裂け目が見えた。
次に。
水が蒸発する音。
ジャイロ回転によって生み出された強烈な回転が周囲の気圧を驚異的に高める。
気圧が高くなると、温度も必然的に上がる。
その大いなる熱は、地平線までの大きな湾の水をじゅうッという音で全てを蒸発させた。
最後に。
着弾したであろうことを示す猛烈な粉塵。
恐らく地平線のはるか向こうから飛んできたと思われる砂、瓦礫は、攻撃者のもとへも届いていた。
****
「凄い威力じゃなこれは……」
地球の銃とは全く違うわい。
こんな威力聴いた覚えがないのじゃ。
「なにせ地平線の向こうの破砕礫が飛んでくるくらいじゃからのう……」
自分の防御でも、いまいち耐えきれる自信がないクレイだった。
****
……そしてそのころ。
ジャイロ回転をする大口径の大弾の直撃を受けた地平線の向こうの小島では、一体の魔物がその腹を弾に貫通され、驚いたような顔で息絶えていた。
周りには、呆然とした様子の人間が数人いた。
偶然か、必然か。
賢者が放った死の宣告は、無情な運命によって一人の魔物――【魔王】を貫き、瞬殺していた。
今後もよろしくお願いします。