お爺ちゃん賢者と谷底の竜の決着です。
題名に激しく既視感(笑)
咆哮が契機となり、また緑碧色の光線が直線状に襲ってくる。
真空放電だったか。
直線状に迫る陰極線をその光線に重ねて思い出しながら、それを迎え撃つ。
「九尾!」
『了解。【闇氷読】』
光線が歪めた空間を凍結させるように、咲いた白銀の薔薇が光線を包囲、蹂躙していく。
鮮やかな緑は白銀に上書きされ、全てを凍結させていく。
やがてそれは光線までをも凍り付かせ、次第に竜体へと迫っていく。
『このまま……押し込むぞ!』
仙気で2.5倍をかけた攻撃力に有利属性の3倍。
占めて7.5倍の攻撃力は、あっと言う間に既に弱体化した緑を喰い尽くしていく。
竜の方も不利を悟ったのか、一度光線を切り術者の儂を狙おうと迂回しながら前進してくる。
鈍重そうな体に似合わぬスピードだ。
先ほど大技を出したばかりの九尾は追いつけないだろう。
だが、儂とて弱小ではない。
「かつて九尾を圧倒した崩世の土の力……今こそ見せてくれよう」
パンッと乾いた音を立てて両掌を合わせる。
仙気が十分に身体を巡ったのを確認し、一度瞳を閉じる。
数秒経ってから再び眼を開けると、それは凄惨な赤褐色と巴柄の紋様を浮かべていた。
間髪入れずに、その両掌を地面に叩きつける。
『摂提格、単閼、執徐、大荒落、敦牂、協洽、涒灘、作噩、閹茂、大淵献、困敦、赤奮若。全ての歳月がここに集う』
……薄く、しかし着実に紋様が現れる。
深紅の線がやがて結合し、六角の紋様が完成し光が弾ける。
強い光は黙々と肥大化し、やがて谷そのモノすらも飲み込んでしまう。
竜は既に動きが麻痺したかのように動きを止めた。
もはや蠢くものは煌々と光を放つ魔法陣以外にあらず、まるで時が止まったかのようだ。
『【天赦】』
やがて光を失った魔法陣はあるものを遺して消滅した。
血に染まり切ったかのようなそれは、赤黒く胎動していて今にも何かが解放されそうだ。
すぐにそのものを掴み、懐かしい感触に思わず顔が相好を崩す。
だが、まだ気は抜けない。
動きを取り戻した歓喜を味わうかのように、以前の倍もの速さで竜が迫ってきている。
すぐさま左眼を覆い、瞼を掌で広げるようにして魔力を集中させる。
眼の巴柄が回転を始め、雪の結晶のような模様へと変化していく。
『【蟒蛇】』
噛み砕かれる寸前で術が発動する。
頭部は粉砕されたが、この術の前には無力と言わざるを得ない。
千切られた頭部が、細胞の肥大化により再生していく。
やがて完全再生した儂の体が唖然とした様子の竜を見下ろした。
『さあ、死んでもらおう』
エコーとノイズが反響しあうようにして谷の底に響く。
数秒後には、手に持った刀が竜の首を切り裂いていた。
試験期間でしばらく投稿できずすいません。
また、目次題名上記のファンタジー類より最近始めた連載もご確認いただけると幸いです。
今後もよろしくお願いします。