お爺ちゃん賢者の戦闘準備です。
しばらく荒れ果てた谷を下っていくと、ちょうど地面が見えた。
急降下から滑空へと速度を変え、無事に着地する。
隣ではいつものおっさんがいるが、どのようにして飛行しているのかはまだ分からない。
「……いい加減おっさんはやめてくれ」
「儂より外見年齢は上の癖に」
「精神年齢はお前のが上だろうが」
……見た目からしてこの世界の40歳ぐらいだろうか。
外見は恐らく齢を取らないように設計されているのか、身体の魔力の老化が40で完全に止まっている。
実際は100歳ぐらいが妥当なところだろうか。
「……それはそうと、ボスの反応が近そうだな」
「どう攻める?」
「まずは絨毯爆撃が妥当だろう」
降り立ったところから僅かに進むと洞窟のような祠が見えた。
中から青い光が差し込み、反応が大きくなったことから鑑みるにここにボスがいるのだろう。
反応から見るに、相当体積の大きいボスだ。
出鱈目に攻撃してもだいたいは当たるだろう。
「……というわけで最大出力だな」
「了解じゃ」
儂は機動武装をしっかりと展開し『眠いので嫌です』……拒否されて銃を構える。
構えると言っても両方の銃を細かな磁力線で操るだけなので手はふさがらない。
開いている両手を久しぶりに使う【九尾】のエネルギー充填+【原生簒奪】+【原核歔欷】に割く。
既に【纏仙舞奉】は展開済みで隈取のような化粧は相変わらず展開され、仙気の使用が可能になる。
仙気を使用できるというだけで全てのエネルギーが2.5倍に調整できるからのう。
これほど便利なものはないわい。
……そうしてまったり戦闘準備をしていたおっさんと儂。
危険はこんなときもやって来る。
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ダダァァァァァァァァァァン!!
「……ックいきなりかよ!?」
「ご丁寧なことじゃ」
危機は油断したときにやって来る。
それを自分たちに教示しに来たかのように突如岩を破ってきた巨体。
すぐに視界を眩い緑で埋め尽くされる。
「【九尾】!破壊しろ!」
『相変わらず人使いが荒いの』
一呼吸遅れて白銀が緑を埋め尽くす。
木属性に対して水の派生である氷属性は有利だ。
同等かと思われたエネルギーだが、弱点属性に対しては攻撃力が3倍へと跳ね上がる氷属性が緑を押し返し、眼前の巨体へと傷をつける。
すぐさま周囲は薄氷のフィールドと化し、薄まった空気が視界をクリアにする。
姿を現した巨体は、緑が鎖のように体に纏わりついたもの。
眼は濁り、鱗は若干剥がれ落ちた巨竜だった。
『Gyeeeeeeee…』
悲しげな叫びが谷全体にエコーとなって響き渡った。
新作投稿しました。
タイトル上部リンク【ファンタジー類】から跳べるのでどうぞ。
題名は「ゲーム化しAIに支配された荒廃した世界~僅か1000人しかいないチュートリアル突破者の俺は~」
というものです。
今後もよろしくお願いします。




