お爺ちゃん賢者の命がけです。
遅れましたー( ´∀` )
翼を広げ、収縮させるを繰り返しながら谷を下降していく。
「……数が尋常じゃないな」
「……だな」
翼を広げ滑空、滑空速度を落として上昇してきた竜を斬る。
周囲には三体が浮遊していたため、そのまま魔暴嵐を横に起こして回転しまとめて斬り落とす。
『座標X50008、Y3569、Z0の害意物体を確認。X座標-0.5、Y座標-1に発動します。』
『【十字架の絶護】』
そうこうしている間にも側面からは様々な罠が起動し攻撃を仕掛けてくる。
砂の壁が瞬時に出来上がるが、一次防衛線が直後に破られ二次防衛線がようやく攻撃の威力を解消する。
砂の壁では対処しきれないため、隙間を掻い潜って攻撃が来るたびにディフェクトで核を貫通し撃ち落とす。
「……っと危ない」
頬を魔力弾が掠める。
凄まじい音がして後ろの第三次防衛線が壊れる。
罠とは思えないほどの凄まじい弾幕だ。
……当然、それだけの膨大な量をミスなしに人間がこなせるはずがない。
人間を超越したはずの賢者であっても元は人間だ。
とうとう、その限界がやって来る。
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突如としてその限界はやって来た。
高密度の魔力弾が第三次防衛線を破ったとき、凄まじい音を立てて第二次防衛線までもが破壊されてしまったのだ。
魔力弾を直近で躱したことで少し動揺した精神が防衛線を張り直すのを怠ったためだ。
直後、これまでの鬱憤を晴らすかのように砂の壁を次々に貫通して魔力弾とブレスが嵐の奔流のように迫りくる。
「……ッ立ち直せるか?」
「無理じゃな。どうにかして脱出するしかない」
もはや攻撃の奔流はすべての防衛線を余すところなく飲み込んでいた。
加法混色のせいか、やけに白く感じる光の奔流を前に抵抗は出来ない。
その状況を脱出する方法は、無いことは無かった。
「……なんとか助かりそうだ。超質魔円環を強制的に起こして時空を歪めて脱出する!」
とある方法が脳裏に浮かび、すぐに叫ぶ。
言うと同時に魔暴嵐を三つ同時展開して回転させながら接触させた。
膨大な威力の奔流が点を通して溢れ出し、周囲の魔圧と気圧を大きく歪めていく。
やがて両方の圧が存在許容量を超越し、膨大な質量を持った重力が解放される。
『【崩星赤方偏移】』
時空すら歪める万有引力がその威力を無限にも増し全ての攻撃を飲み込んでいく。
光すら飲み込む圧倒的な重力空間とともに自分たちの体までが蝕まれていく。
飲み込まれた極光や数多の物質が途方もない重力により赤色化し始めた。
「後でまた会おう」
「……無茶なことをする」
散り散りになった自分たちの体を見つめながら呟いた。
後はどうなるか分からない。なるべく幸運な方向に行かせてほしい。
超質重力により変色した赤色の軌跡を見つめながらそう願った。
今後もよろしくお願いします。