お爺ちゃん賢者の初めての詠唱でした。
いつもありがとうございます。
『天を治め血を紡ぐ大神の如く其の清らかな魂と与えられた強靭な肉体を使い生み出されたるが儘にその大いなる力と共に我に従うことを示せ』
『【十字架の機動】』
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何か儂の思ったのと違う。
そう気づいたのは、機動武装の装着が完全に終わった後だった。
最初は体にぴったりくっ付く宇宙服みたいなのを想像していたのだが、どうも違うようだ。
各パーツが儂と30cmぐらいの距離ぐらいで離れて浮遊して取り囲んでいる。
自分の姿を見ているとなかなか奇妙な気分になってくる。
「確か機動武装には【鉄壁】を組み込んだよな?そこんところはどうなんだ?」
儂は機動武装に問いかける。
ノイズのかかった機械音が帰ってくるのかと思ったが、普通の中性的な人間の声だった。
『ええ、chとして【鉄壁】の絶対防御の権能を継承しております。性能を確認しますか?』
儂でもスキュラの全力攻撃を素で受けたら相当なダメージを負うからの。
これで防御を完璧にしたいのじゃ。
『それでは庭に出てください。それと、出来れば水か鏡を用意してください』
「あー、庭に鏡あるんだけどそれで大丈夫かの?」
『はい。大丈夫です』
何のためにやるのかはよく分からないが、とりあえず庭に出てみよう。
メイドさん達によって丁寧に手入れされた芝はとても歩き心地がいい。
もとに住んでいた貴族の成金趣味はどうかと思うが、この庭の芝だけは評価してやろう。
そんなことを考えながら歩いていると、庭の鏡の前までやって来た。
「で、何をするんじゃ?」
『こうします。【十字架の蛇蝎】』
機動武装の腕の部位が、一斉に儂の前へと集まり力を籠めるような形態をとる。
その腕の中に段々と紅い光線が渦巻きながら溜まっていく。
周囲から魔力というエネルギーを吸い出し、土星の様に綺麗な円環と球形を象る。
周囲には、毎度おなじみ魔暴嵐が吹き荒れ始めた。
「ってぇぇえ!家を壊す気かお前は?」
これだけのエネルギーを叩きつければ家も蒸発だけでは収まるまい。
場合によっては王宮すら蒸発するかも……?
辞めさせるべく静止の言葉をかける。
『心配には及びません。これは光の様に跳ね返るレーザー攻撃なのでご主人様に発射後はそのまま飛んできます』
「もっと大変じゃないか……」
距離があるならともかく、この至近距離じゃどうしても反応は遅れる……
『大丈夫です。絶対防御がありますから』
そういって機動武装はレーザー攻撃を放出した。
いつもありがとうございます。