お爺ちゃん賢者の外出です。
今日はこれでラストです。
リリムが住み着いてからはや一週間。
キリル(国王)からは「たぶん暫く戦争無いから休んでいいよ」と休暇を出されたため暇を持て余している。
といっても王宮の中の我が家にいるとリリムがうるさいので、シルを付き合わせて王都をぶらついていた。
「ねえねえクレイ!あれ美味しそう!」
「はいはい。……すいません。それ一つくださいっと」
「「まいどありぃ!!」」
儂の発明で稼いだ莫大な金を湯水のごとく使いながらこんな感じで商店街を歩き回っている。
儂の眼は完全に保護者のそれとなっていて、周りの人からはかなり同情的な目線で見られた。
別に金には困ってないから湯水のごとく使われても問題は無いんじゃがのう。
別に儂は特殊性癖の変態ではないが、こうしてシルの笑顔を見ると落ち着くというかなんというか。
おおかた、孫娘を見守ってる感覚じゃろうか。
こうして買い物をすることは苦ではないし、むしろ楽しかったりする。
「……ねえ!ねえってば!」
「……おぉどうした?」
……考え事をしていてはシルには付いていけない。
冷や汗が頬を流れる。
「あれはなんていうの?」
「あれはだな……」
シルが指をさしたのは冒険者ギルド。
なぜか前世の世界と全く同じマークを採用している冒険者ギルドの本部は、どこか退廃的で哀愁が漂っていた。
本来なら王都にある冒険者ギルドはもっと華やかで、生き生きとしているはずだ。
そんなギルドがこの様子とは……?
気になった儂は、シルに断りを入れてそのギルドに入っていった。
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扉を開けてから一瞬で、その場にいた者たちの視線が集まる。
懐かしい、強者の集団の雰囲気だ。
値踏みをするような視線が幾つも絡まる中、儂はすたすたと歩いて受付嬢のもとへと向かう。
「あ、あなたは……!?」
顔を隠しもせずに入ってきたのが不味かったか。
受付嬢は儂の正体にだいたい気づいているらしい。
「失礼します。あなたが王宮に新規で入ったと言われる【竜殺し】のクレイ様ですか?」
堂々と聞いてくるあたり、流石王都の冒険者ギルド受付嬢ともいうべきか。
まあ、ここまで退廃しておればやる気も起こらんじゃろうがの。
「いかにも」
……一気に場が騒然となった。
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「あいつが噂の【竜殺し】か……」
「見たところ華奢な感じはするけどな」
「いやしかし竜を素手で投げ飛ばしたと言われてるぞ?」
「あの小さい体のどこにそんな力が?」
騒然となったギルドでは、そんな会話が繰り広げられていた。
まあ、小さいと言ったのは無理もあるまい。
儂は子供体型、まだ十代の体を使ってるわけじゃからな。
ちなみにリリムが本気でやったら今度は儂が投げ飛ばされるし、その噂は信じない方が良いと思うぞ。
「すいません。このように最近のクレイ様の人気は大変なものでして……」
受付嬢がすまなさそうに謝ってくる。
「いや、それは別にいいんじゃが……このギルドの退廃的な様子は一体どうしたのじゃ?」
「……………」
儂の核心を突く質問に、あれだけ騒いでいたギルドは水を打ったように静まり返った。
いつもありがとうございます。
短編を投稿したので、出きればそれもよろしくお願いします。