お爺ちゃん賢者は王宮で目覚め恐ろしい速度で書類を片付けました。
キリル可哀想……
「んん……おはようクレイ」
「確かに良い部屋じゃったな、シル」
ベットから起き上がったシルはまだ寝惚けているのか、眼の焦点が合ってない。
儂はだいぶ前から完全に眼が覚めているが、やはり背中に鈍い痛みがある。
昨日はなんと三人同じ部屋に放り込まれて、部屋にはベッドが一つしかなかった。
これはまずい、と思った儂は先にソファで寝込んで二人にベッドを譲ることにしたのだ。
同じベッドはいろいろと不味いのでな。
やはりベッドで寝た方が良かったかなぁ……と思いつつ背中の痛みを聖属性魔法で和らげる。
因みにスキュラはただでさえ狭いソファの上の儂の隣で寝ている。
昨日寝たときはベッドにいたはずじゃが……
よほど寝相が悪いのか、故意なのか―――
故意だったらぶっ殺す。
そんな物騒なことを考えていると、スキュラも目を覚ます。
「んー……おはよう土魔法狂」
「寝起きで軽くディスるな」
寝起きでそれは無いと思う。因みに、ソファ事件はわざとらしい。
****
朝一番で王室に向かうと、そこには忙しそうに書類にペンを走らせるキリルの姿があった。
眼は血走っており、鼻息は荒い。
どうみても危険人物にしか見えないキリルは酒らしきものをぐっと飲んでから、入ってきた儂らに向き直る。
「昨日はよく眠れたか?」
ここまで極限の状態に追い込まれてまで他人の心配をできるのはこやつの長所であると思う。
ただ、他者のために自分をないがしろにしすぎるのが欠点でもあるな。
「他人の心配をする前にまずはお前が寝ろ。話はそれからだ」
儂は、有り余る力を使ってキリルの巨体をベッドまで運ぶ。
もはや抵抗する力まで無いらしく、ベッドに運ばれるまでずっと大人しかった。
ベッドに運んだあとは、スキュラが簡単な催眠誘導魔法を使いキリルを眠りへと誘う。
「やめろ……まだ書類が……」
「儂がやっておく。これでも前世は賢者。お前より年上じゃからのう」
「ああ、そうか……すまんな。頼むぞ……」
その言葉を最期に、キリルは眠りへと落ちていった。
……。
「さて、書類でも片付けるか」
「手伝うよ土魔法狂」
その呼び名いい加減にやめて欲しいのだが。
ただ、魔王としての資質は即戦力で間違いないので手伝ってもらう。
「シルは……先に部屋に戻って着替えておいてくれ。女性用の式典着替えは着るのに時間がかかるらしいからのう」
「私も女性なのだけれど?」
「お前は魔法で一瞬だろ」
そんなやり取りがあって、シルは部屋に戻っていった。
……何故か、今朝のソファ事件と言い今のやり取りと言い、シルが途轍もなく機嫌が悪い。
今度、美味しい食べ物でも作ってやるか。
奴の機嫌を損ねると、本気で対物大弾銃で狙ってきそうなんじゃ。
うっかり死んじゃった、みたいなことにならないためにシルの機嫌はとっておこう。
そんなことを考えつつ、書類を毎分250枚のペースで片づけていくのだった。
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